スープ専門店「スープストックトーキョー」の全店舗(Soup Stock Tokyo、大丸神戸店を除く)にて、4月25日から離乳食の無料提供が始まりました。この発表をTwitterの「トレンド」などで知った人も多いのではないでしょうか。
Twitterで話題になった理由は、「子どもが嫌い」とする複数のアカウントがスープストックトーキョーの公式Twitterのツイートを引用し、「もう行かない」などとツイートしたことが発端です。賛否両論が巻き起こるうちに、「スープストックが炎上」と題した記事がメディアやまとめサイトに掲載されました。動画メディアでも特集が組まれ、「スープストックは女ひとりで入りやすいのが魅力」「離乳食を食べさせるとテーブルもめちゃくちゃ汚れる」といった批判的なツイートを取り上げています。
独身女性と子どもを持つ女性の争いという解釈が生まれ、それに対する意見も多くツイートされたため、さらに投稿が増えました。かつてネットで流行した「吉野家コピペ」をアレンジした「スープストックは女の吉野家」としたツイートも拡散し、騒動とは別の盛り上がりも起きました。
しかし、スープストックは本当に炎上したのでしょうか。
実際にスープストックの施策に関するツイートを見ていくと、「すばらしい取り組み」と歓迎する投稿が多く、批判的な意見に対して「なぜ批判するのか」「応援したい」といった反対意見も多く見られます。
つまり、施策への反対意見ばかりが大量にツイートされたわけではなく、反対意見への批判や施策に肯定的な意見も多くツイートされたことで「トレンド」に掲載されたのです。
こうした状態を「非実在型炎上」と呼びます。実際には「炎上(批判的なコメントが殺到すること)」は起きていないのですが、「炎上している」とツイートされたり、ネットの記事や動画で「炎上」と報じられたりすることで、まるで炎上が起きているような状況になってしまうのです。
そしてスープストックは4月26日に、「離乳食提供開始の反響を受けまして」とのリリースを発表。「世の中の体温をあげる」という企業理念のもと、「食のバリアフリーの取り組みを推進している」と同社の取り組みを紹介しました。企業としての毅然とした態度に「応援したい」「尊敬する」などのツイートが寄せられています。
非実在型炎上かどうかを判断するには
非実在型炎上は今回のスープストックだけでなく、過去にも起きています。食品会社の東洋水産が販売するインスタント麺「マルちゃん正麺」です。2020年11月11日に同社の公式TwitterアカウントがPRマンガの第1話をTwitterに掲載したところ、その内容に意見が集まりました。
このマンガでは、留守番中のパパが息子に「マルちゃん正麺」を作って食べる話が中心なのですが、最後のコマで帰宅したママが食器を洗っていることが物議をかもしたのです。「なぜ昼に使った食器をママが帰宅後に洗うのか」などの批判ツイートがあり、それに対して「問題はない。なぜ炎上するのか」といったツイートも多数。こちらもトレンド入りしました。
マルちゃん正麺の公式Twitterアカウントはいったん「今後の掲載を精査する」とツイートしたものの、その後は掲載を再開しました。再開のツイートには、「再開楽しみです」「マルちゃん正麺買いました」と応援ツイートが寄せられています。
こうした非実在型炎上の多くは、炎上していないのに「炎上」と題してネットメディアやまとめサイトが記事に取り上げることで起きています。本当に炎上しているのかどうか疑わしいと思ったら、自分でTwitterの意見を検索してみると判断できるかもしれません。SNSでは、アルゴリズムによって表示回数やいいね数などが多いツイートが優先して表示されるものですが、必ずしも多くの同意を得ているわけではないと考えたほうがいいでしょう。
また、炎上に加担する人たちは少数派だと言われます。周囲の人に意見を聞いてみて、ネットと空気感がまるで違うようなら、それはネットの一部の意見と判断してもいいでしょう。トレンドに出てくる投稿をうのみにせず、ひとまず様子を見てから判断するようにすると、情報に踊らされずにすみます。
企業が非実在型炎上に巻き込まれてしまった場合も、本当に批判が集中しているのかを冷静に判断したいもの。上記のスープストックトーキョーや東洋水産のように、企業としてのポリシーや認識を曲げないことで多くの人たちから支持が集まることもあります。