2023年がスタートしました。2022年はイーロン・マスク氏がTwitterを買収するなど、SNS業界にとっては波乱の年となりました。さて、2023年のSNSはどうなるでしょうか。注目ポイントを3つ挙げたいと思います。
2023年2月に終了するzenlyの後継は?
Z世代を中心に愛用されていた位置情報共有アプリ「zenly」は、2023年2月3日にサービス提供を終了すると発表しています。
zenlyは、承認したフレンドと位置情報を共有するアプリです。誰がどこに何時間いるといった情報がリアルタイムで地図上に表示され、移動速度やバッテリー残量もわかることから、「待ち合わせのやり取りが不要になる」として、タイパ主義(タイムパフォーマンス主義)の若者に支持されています。流行が始まった2019年ごろはプライバシーの面から違和感を唱える大人世代が多かったのですが、子どもを見守るために親が使うなど、しだいにユーザー層が広がりました。
一方で、位置情報共有アプリで自宅を知られた女子高生が男に刺される事件が起きるなど、位置情報を共有するリスクが認知されるように。zenlyのサービス終了に安心する声も聞かれるようになっています。
zenlyがサービスを終了したら、果たしてZ世代は別のサービスへ移行してでも位置情報を共有するのか――。私はずっと考えているのですが、答えは出ていません。10代に聞いてみると、別の位置情報共有アプリのアカウントをInstagramのストーリーズで公開して友人にフォローを呼びかけるなどしているようですが、新たなサービスが話題になるとフォローし合うのはいつものことなので、あまり指標にならないと考えています。
もし別の位置情報共有アプリに乗り換えるとしたら、何を使うのでしょうか。zenlyは、サービス終了後「Snap Map」を使うようにアナウンスしています。Snap Mapは、zenlyを提供するSnapが手掛けるコミュニケーションアプリ「Snapchat」が持つ機能のひとつ。zenlyと同じように現在地をリアルタイムで共有できます。Snapchatは、国内ではカメラアプリとしての認知度が高く、アカウントは持っているものの使っていない若者も多いため、移行するとなればスムーズかもしれません。
後継として名乗りをあげているアプリはほかにもあります。起業家の学生が開発する「NauNau(ナウナウ)」、アメリカの企業が開発した「友どこ」も、zenly同様に位置情報を共有できます。見守りに関しては、家族の見守りアプリとして2008年から提供されている「Life360」も候補となるでしょう。また、Google MapやiOSの「探す」でも位置情報を共有できるので、再び注目されるかもしれません。
zenlyの終了は、マネタイズがうまく行かなかったからという説が有力です。zenlyの人気で位置情報共有にニーズが生まれていることはわかりましたが、後継となるアプリが収益構造を作って事業を継続できるのかがカギとなりそうです。
SNSが取り組むメタバースの時代は来るか
2022年10月には、FacebookとInstagramを運営するMetaがVRゴーグル「Meta Quest Pro」を発売しました。Metaは、FacebookではVR(仮想現実)に、InstagramではAR(拡張現実)に力を入れていくと発表しています。
VRに関しては、仮想空間のワークスペース「Meta Horizon Workrooms」や交流スペース「Meta Horizon Home」も提供し、メタバース空間での交流を実現しています。ARに関しては、Instagramのカメラ機能「ARカメラエフェクト」をアウトカメラにも活用し、商品の配置シミュレーションに役立てる事例も発表しています。
Snapchatも、以前から人気のARカメラ機能「Snapchatレンズ」を充実させ、現在は250万以上のレンズがあります。ARで試着可能なショッピングレンズも構築でき、マーケティングに活用されています。さらに、SnapはARデバイス「Spectacles」の開発にも取り組んでいます。2023年、SNSとメタバースはどのように成長していくのでしょうか。
イーロン・マスク氏が理想とするTwitterは実現するのか
2022年10月、Twitterはアメリカの起業家イーロン・マスク氏によって買収されました。マスク氏は2022年3月から、Twitterの運営体制に対して苦言をツイートしていたものです。
2022年10月27日には買収の理由を以下のようにツイートしています。自由に意見を述べられる言論の場にしたかったのでしょう。
「The reason I acquired Twitter is because it is important to the future of civilization to have a common digital town square, where a wide range of beliefs can be debated in a healthy manner, without resorting to violence.(私がTwitterを取得した理由は、文明の未来にとって、暴力に訴えることなく、幅広い信念が健全な方法で議論できる共通のデジタルタウンスクエアを持つことが重要だからです)」
イーロン・マスク氏の買収後、Twitterでは社員の大量解雇が行われました。キュレーションチームがいなくなったことで、「おすすめ」や「ニュース」にWeb記事は表示されなくなり、「モーメント」も廃止。最近では、ツイートが表示された数「View Counts」を見られるようになり、フォロワーを買っている人が推測できるようになるなど、機能面でも急速に様変わりしています。
マスク氏は、売上高の9割を占めていたとされる広告収入ではなく、「Twitter Blue」というサブスクリプションサービスで収益を上げようとしています。Twitter Blueを購入すると、アカウントに青いチェックマークを付けたり、ツイートを編集できたりといった機能を提供します。
つまり、以前から認証を受けていた人とTwitter Blueの登録者が、青色のチェックマークを付けられることになりました。さらに、Twitter Blue for Businessは金色、政府機関向けにグレーのチェックマークが登場し、全部で3色になっています。
Twitter Blue for Businessとは、Twitterが法人として公認したアカウントに対してテストしているサービスで、対象のアカウントはプロフィール画像が四角形に表示されています。また、ラベルも数種類提供しており、アカウントが何者であるかを明らかにしたい意向が読み取れます。
マスク氏のTwitter改革は始まったばかり。今後のTwitterがどうなるのか、マスク氏以外にはわからない状況になっています。広告を出稿していた企業もしばらく出稿を控えることが推測され(すでにその傾向が現れています)、収益面での不安もぬぐえません。海外ではヘイトスピーチが増えているとの調査結果もあり、10代の利用者も多い日本での影響が心配です。Twitterの今後にも注目していきたいと思います。