誰しも「自分がどんな人間なのか」、わからない部分を抱えて生きています。自分のことをもっと知りたい……。そんな心理をついた遊びのひとつが「診断テスト」です。

診断テストは、ずっと以前から雑誌などにも掲載されていましたね。フローチャート形式でイエス・ノーを答えていくと、「あなたは○○な人間です」などの答えが出たり、質問に回答して「A」が○個以上の人は~などと診断されたり。答えに納得するときもあれば、意外な結果が出るときもあり、ついつい試したくなりますね。

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    「○○○診断」、ついやってしまいませんか?

診断テストは、今やネットでも楽しめます。SNSで回ってきた診断テストをやってみたことはありませんか? 「診断メーカー」という人気のサービスは、色々な診断を試してみるだけでなく、診断を自分で作ることもできるサービスです。SNSで試してみたいと思うような診断テストが回ってきたら、診断メーカーかもしれません。

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    診断テストの結果をSNSにシェアすると、瞬く間に利用者が増えていきます

大流行した「ラブメーター」

この「ちょっと試してみたい」心理を恋愛に結び付けたジョークサイトが、2019年の5月ごろ、中高生を中心に大流行しました。サイトの名前は「ラブメーター」。Webサイトを開くと、「LoveMeter - 本当の愛情電卓」と記されており、自分の名前と相手の名前を入力すると、相性診断ができるように見えます。

しかし、実際はこのページをシェアした人に、自分が入力した名前、つまり好きな人の名前を知られてしまう仕掛けになっています。

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    本気で好きな人の名前を入れてしまうと大変なことに

仕組みはこうです。「これやってみて」とURLを送るAさんは、あらかじめこのサイトに名前を登録し、割り振られた固有のURLをBさんに対してシェアします。Bさんはそこに自分の名前と好きな人の名前を入力し、「計算する」をタップします。

するとAさんは、Bさんが入力した項目を確認できるのです。それはシェアしたURLに表示され、入力した人が増えていくと、一覧表に追加されていきます。もしBさんが数人の相手と試したら、すべてAさんにバレてしまうのです。

Bさんの画面には、「あなたの名前とあなたの好きな人の名前が○○に共有されました」というメッセージとともに、大笑いするうさぎの画像が表示されます。この時点でBさんは「Aに騙された!」と気づくわけです。

好きな人が知り合いにバレてしまうなんて、一大事です。Twitterには「#ラブメーター被害者の会」というハッシュタグも誕生し、「明日学校行けない」「自分の好きな人が本人にばれた」などのつぶやきが多数投稿されています。気の毒としか言い様がありません。

診断テストへ入力する情報には細心の注意を

ラブメーターも含めて、こうした診断テストは広告収入を目的に作られることがほとんどです。今回もこのサイトの運営者は収入を得たことでしょう。ラブメーターは名前のみで個人が特定される情報を入力する必要はないため、心の傷以外の実害はありませんが、誕生日やメールアドレスを入れさせる怪しい診断テストもあるので注意が必要です。

深刻な問題に発展したケースも。

個人情報漏洩のニュースが続くFacebookですが、最初の問題は2018年3月に明らかになった「診断テストによる漏洩」です。データ分析会社がアプリ連携の仕組みを使って、5,000万人分のデータを取得したのです。現在は同様の手口で情報が漏れることはないように対策した、とFacebookは発表しています。

ついやってみたくなる診断テストですが、情報を入力するときは「本当にこの情報を渡してもいいのか」、ひとつひとつ考えてみてください。

誕生日とメールアドレスを入力すると、誕生日をヒントにパスワードを推測され、あなたのメールアドレスを乗っ取られてしまう可能性もあります。文字で入力しなくても、SNSとアプリ連携することで登録情報を渡してしまうこともあります。また、診断テストだけでなく、占いやアンケートを装うパターンも注意です。

個人情報の管理は大人でも難しいもの。お子さんがいる方は、診断テストにはワナがあるかもしれないことを、それとなく教えてあげてくださいね。

著者プロフィール
鈴木朋子

鈴木朋子

ITライター・スマホ安全アドバイザー。SNSやスマホなど、身近なITに関する記事を執筆。10代のスマホカルチャーに詳しく、女子高生とプリクラにも出かける。趣味はへんてこかわいいiPhoneケース集め。著書は「親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)など20冊を超える。