新学年がスタートし、ゴールデンウィークが明け、子どもたちにはそろそろ疲れや不満が溜まる季節です。誰かに愚痴りたい、でも悪口言って嫌われたくない……、そんなときに心の寄りどころとなるのが、SNSです。

特にTwitterは、心の内を吐露しやすいSNSです。「裏アカウント」や「愚痴アカウント」と呼ばれるアカウントを新たに作成し、リアルの知り合いがいないスペースを作るのです。とはいえ、まったく友人がいないのも共感や慰めがなく寂しいもの。そこで、本当に仲が良い友人たちだけフォローし合ったりもしますが、あまり度を過ぎると友だちだったはずの友人が去っていくこともあるそうです。

  • 鈴木朋子のお父さんが知らない女子SNSの世界

ある女子高生は、裏アカで仲良し5人組とつながっていましたが、あるひとりの家族や学校への不満があまりにも多く、汚い言葉を聞いていることにみんなが耐えられなくなり、距離を置くことにしたそうです。友だちだからこそ力になりたいと思っていても、すべてを受け止めきれないこともありますよね。

そんな弱っている若者に近づき、殺人を犯した事件もありました。「座間9遺体事件」です。容疑者はTwitterで「死にたい」と発している女性たちに話しかけ、メッセージなどを送って悩み相談などを行っていました。そして自殺を手伝うなどと持ちかけ、実際に手を下してしまったのです。その後、Twitterはサービスルールを変更し、「自殺や自傷行為の助長や扇動を禁じます」とはっきり明記しています。

性被害の出会い1位はTwitter、2位は学生限定SNS

Twitterにはもうひとつ、悲しい側面があります。性被害に巻き込まれやすいサービスとして名が挙がっているのです。警察庁が発表した「平成29年におけるSNS等に起因する被害児童の現状と対策について」によると、平成29年中に青少年保護育成条例違反や児童ポルノ、児童買春などの犯罪に巻き込まれる17才以下の児童1813人のうち、695人がTwitterで出会っています。これは他サイトを引き離してもっとも多く、さらに前年度の1736人中446人よりも増加しています。

Twitterを「#出会い厨」で検索すると、出会いを求めて近づいてきたアカウントとのやりとりを画像で投稿し、注意を喚起する女子のアカウントが後を絶ちません。ある女子高生は、本人ではない盗撮画像をネタにゆすられ、「このトイレでの画像を拡散されたくなかったら、俺と会え。裸の画像を送れ」などと脅されていました。友人と通話で相談しながら対応して事なきを得たそうですが、かなり怖かったと話してくれました。

同調査では、2番目に「ひま部」(181名)があります。ひま部は中学生、高校生、大学生、専門学校生を対象とした学生専用のSNSです。チャットや通話、ビデオ通話などを備えており、グループチャットでは盛んに会話が繰り広げられています。

株式会社テスティーによる「それちょう」の『“学生限定”アプリ、「ひま部」の実態調査!』では、中学生、高校生、大学生(専門・短大含む)5,949名のうち、ひま部を利用していると回答した人は、中学生で13.5%、高校生で9.3%、大学生で6.3%とのこと。TwitterやLINEなどと比較するとかなり少ない数値ですが、実際にひま部の「サークル(グループチャット)」をのぞくと、やりとりはかなり活発です。

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    学生限定のSNS「ひま部」は同年代で気兼ねなく話せるコミュニティですが、運営は難しそうです

気軽に会話が楽しめるひま部ですが、「学生じゃない人がいる」「出会い系の業者がいる」など、あまり良くない評判もあります。そこで、ひま部の運営会社は、トラブル防止のために人の手やAIによるパトロール、学生証による年齢確認などを導入して対策にあたっています。

ネットで知り合った人に相談することで、解決策を見いだしたり、心を落ち着けられることもあるでしょう。しかし一方で、若い女性を狙う大人がいることも事実です。今の10代はTwitterやInstagramでも本名を登録し、顔出しも当たり前です。直接メッセージを送られると、親の目の届かないところで連絡を取り合ってしまいます。ネットの出会いがすべて悪だとは言いませんが、実際に会うことで殺人事件や性被害に発展する可能性を子どもたちに伝えていきたいものです。

著者プロフィール
鈴木朋子

鈴木朋子

ITライター・スマホ安全アドバイザー。SNSやスマホなど、身近なITに関する記事を執筆。10代のスマホカルチャーに詳しく、女子高生とプリクラにも出かける。趣味はへんてこかわいいiPhoneケース集め。著書は「親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)など20冊を超える。