世界的にAndroid OS搭載のスマホがシェアを伸ばす中、中南米ではWindows Phoneの人気が高まっている。調査会社IDCの報告によると、中南米のスマホOSでWindows Phoneがシェア2位に上昇したという。
低価格スマホ「Lumia 520」が牽引
Microsoftのリリースによると、IDCが調査を行っている世界各地域のスマホOS別シェアで、2013年第2四半期のWindows Phone OSのシェアが中南米で2位になったとのこと。ちなみにシェア1位はもちろんAndroid OSである。
国別に見るとメキシコは第1四半期に次ぎ今期も2位、そしてコロンビアとペルーでは今回初めて2位となった。中でもコロンビアはシェア25.6%、同国で売られるスマホの4台に1台がWindows Phoneになっている。またアルゼンチン、チリ、ブラジルでは3位につけている。
中南米諸国では長らくスマホと言えばNokiaのSymbian OSかBlackBerry OSという時代が続いていた。だがAndroid OSの低価格な製品が多数のメーカーから登場したことによりAndroidがこの1年で急成長を遂げている。一方iPhoneは本体価格が高いことからシェアは先進国ほど伸びていない。
一例としてKantar Worldpanel Comtechの調査を見ると、2012年3月のメキシコの各OS別シェアはBlackBerryがトップの32.3%、Symbianが27.2%、Androidが27.1%。iOSは7.9%に留まりWindows Phoneはわずか2.2%だった。だが1年後の2013年にはAndroidが60.3%と倍以上にシェアを伸ばす一方、BlackBerryとSymbianは逆に1/3程度に急落。iOSは9.9%と若干伸びたものの、Windows Phoneの数は少ないとはいえ3倍となる6.6%まで伸ばしている。
Windows Phone人気の立役者はNokiaの低価格端末、Lumia 520だ。2013年2月に各国で発売が始まったLumia 520は実売150ドル前後という価格の低さから中低所得者にも無理なく手に届く製品である。プリペイド販売であれば半額以下での購入も可能だ。ディスプレイ解像度は480×800ピクセルながらサイズは4インチ。Androidスマホの低価格機が3インチ大・HVGAのディスプレイを搭載していることを考えると、Lumia 520は低価格ながらも画面サイズは大きい。
そして本体カラーもホワイトとブラックに加えイエロー、レッド、シアンとカラフルなものが揃っている。このカラフルな本体色は中南米の国民の好みにも合っており、モノカラーが多い他社のスマホに対してLumia 520は見た目だけでも勝っていると言えそうだ。
手軽に使えるソーシャルスマホ
Nokiaはこの夏にハイエンドモデルとなるLumia 925や4100万画素カメラを搭載したLumia 1020など上位モデルを立て続けにリリースしている。だがAndroidスマホの上位モデルと比較するとディスプレイやCPU性能は一世代前のものであり、GALAXY S4やHTC Oneなどと比べると見劣りしてしまう。先進国でのハイエンドスマホ市場では苦戦しているのが事実である。
だがミッドレンジクラスのモデルで比較すると、このLumia 520はAndroid端末と十分互角に戦えるだけの性能を持っている。特にWindows Phone OSはタイルを並べたUIが視覚的にもわかりやすく、Peoples HubにFacebookやTwitter、LinkedInなどのIDを融合させることができソーシャルサービスを手軽に使いたい消費者にとっても使いやすい。MicrosoftやNokiaとしては先進国のWindows PCユーザーにもWindows Phoneを使って欲しいと考えているだろうが、新興国や途上国のユーザーのほうが先にWindows Phoneに飛びつく格好になっているのだ。
Nokiaは7月に4.7インチディスプレイ搭載のLumia 625も発表。解像度は低いものの価格は200ドル台前半と安く、先進国向けではなく新興国や途上国の大型ディスプレイニーズに応えた製品である。先進国ではなかなか存在感を現せないLumiaシリーズだけに、新興国向けの製品への注力は今後のシェアアップに繋がる正しい戦略とも言えるだろう。
とはいえNokiaだけでWindows PhoneそのもののOSシェアを引き上げるのは難しい。Nokiaは9月には高画質ディスプレイのフラッグシップモデルを投入予定だが、SamsungやHTC、Huaweiなどからは大きな動きがない。Windows Phoneのバリエーションを増やし消費者に選択肢を多数提供することがシェア向上には必要なだけに、Microsoftには各メーカーへの働きかけはもちろんのこと、今後タブレットPCのSurfaceのような自社ブランドスマホの開発・販売も行うべきではないだろうか。