世界で最も高速な通信インフラが発達している韓国で、この7月からLTEサービスが相次いで開始された。日本を始めヨーロッパでも続々と導入が進むLTEだが、韓国の導入事例を参考にする国が今後増えていくだろう。
LTEとWiMAXの戦いが始まる
7月1日からLTEを開始したのは3つある携帯電話事業者のうち、シェア1位のSKテレコムと同3位のLG U+。どちらもまずはソウル市など主要都市でサービスを開始し、2012年中には全国の広い範囲にエリアを広げる予定である。端末はUSBモデムとWi-Fiルーターの2タイプが用意されており、年内にはスマートフォンやタブレットも登場する予定とのこと。SamsungやLGなどLTEに強い端末メーカーの国だけに、LTE端末はかなりの数が出揃うことになるだろう。
一方、携帯電話シェア2位のKTはすでに全国主要都市でWiMAX(2.3GHz帯を使うWiBro)サービスを展開。同社はライバル2社がLTEのサービス開始時期を明確にした昨年後半からWiMAXを「4G」としてプロモーションを強化しており、高速通信への強さを大きくアピールしている。
KTはiPhoneを販売しているが、iPhoneの通信速度に不満なユーザー向けにはiPhoneジャケット型WiMAXルーターも販売している。スマートフォン向けWi-Fiルーター、PC向けのUSBモデムなど同社のWiMAX端末はラインナップが充実しており、この点はLTEの後発2社より高いアドバンテージとなっている。この夏のソウルの街中は「4G」の広告にあふれ返っており、韓国は本格的な4G競争時代に突入したのである。
データ定額廃止のモデルケースになるか
各社の4Gサービスの月額料金はいずれも一定利用分が含まれたパッケージ制を採用している。LTEではSKテレコムが3万5000ウォン/5GBと4万9000ウォン/9GB、LG U+は3万ウォン/5GBと5万ウォン/10GBの2系統、KTのWiMAXは1万ウォン/1GBから4万ウォン/50GBまで4タイプ。いずれも超過分は従量制となり、定額では利用できない。なお各社それぞれ新規加入者獲得のため、最大2倍となる無料利用分の増額プロモーションも行っている。
最近は各国でスマートフォン利用者が急増していることから、データ定額制の見直しが始まっている。しかし韓国ではむしろ3Gサービスは積極的に定額料金の利用を消費者に薦めており、定額加入者にはスマートフォン本体の価格を大幅に割引している。これによりフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が急激に進んでおり、韓国ではしばらく「3G定額」が見直されることはないだろう。
だが韓国でも3Gのデータトラフィック急増対策は急務となっている。そこで今のスマートフォンブームに水を差さないために、3Gは定額、一方で新しい4Gでは使った分だけを支払ってもらう従量制へ移行し、コスト意識を利用者に理解してもらおうと考えているようだ。利用者側も自分の利用形態に合わせて3G、4Gを使い分けるようになるだろうから、4Gでの定額廃止はすんなりと受け入れられていくだろう。
また韓国ではWi-Fiも各社が定額サービスを行っており、「3G+Wi-Fi+4G」と3つの無線インフラを提供することで使いやすさを消費者にアピールしている。通信方式に関係なく統合的な移動体サービスを提供する動きは、今後韓国以外でも広がっていくだろう。