AppleがiPhoneの次期アップデート内容を公開したが、ここ最近、同社のイベントや発表会が近づくにつれ新しいiPhone、すなわち3Gに対応したiPhoneの発表があるのでは? との憶測が飛び交うようになっている。果たして3G版iPhoneの登場はいつになるのだろうか? iPhoneを利用しているユーザー側の視点から推測を行ってみよう。
iPhoneの値段は高い?
iPhoneは昨年6月に北米で発売開始されて以来、現在はヨーロッパ数カ国でも販売されている。今年も販売国は拡大される予定であり、ヨーロッパのみならずアジアにもいよいよ上陸することになりそうだ。
市場では新しい3G版のiPhoneの登場に期待する声が高まってきている。では3G版iPhoneのアナウンスはいつ行なわれるのだろうか? 今年1月にサンフランシスコで開催されたAppleのイベント・MacWorldの開催前には、「いよいよ3G版iPhoneの登場か?」という期待の声が大きく聞かれたが、蓋を開けてみれば目玉は「MacBook Air」であった。その後Appleは2月になって、内蔵メモリを16GBにアップグレードしたマイナーチェンジ版を投入した。
さて今まで8GB版のiPhoneを利用していたユーザーの中で、どれほどの人が16GB版に乗り換えるだろうか? 具体的な数値は出てきていないが、おそらくその数はあまり多くないと考えられる。なぜならばiPhoneの価格は、実は"高い"のだ。
北米でもヨーロッパでも、SIMロック+奨励金による販売方式により"端末無料"などの割引き販売が多くの国で行われている。もちろん、ハイエンドのスマートフォン系端末を無料で入手するには、基本料金の高いプランへの加入などが必要だ。一方iPhoneの価格はワンプライス。通信事業者が価格を設定することもできず、無料で提供されることはない。
では、iPhoneと性能を比較されることが多い、Nokiaのマルチメディアスマートフォン「N95 8GB」との価格を比較してみよう。イギリスではiPhone(8GB)が269ポンド(約55,000円)で販売されている。利用する事業者・O2のiPhone向け最低基本料金は35ポンド(約7,000円)/月だ。これに対し、Vodafone UKで同じ35ポンドの基本料金で契約すると、18カ月の固定契約が必要なものの、N95 8GBはなんと「無料」である。
もちろん両者の基本料金内で使える無料利用分には差があるし、iPhoneとN95とではスペックや使い勝手は大きく異なるだろう。しかし、N95はHSDPAに対応しGPSも内蔵したハイエンドスマートフォンであり、iPhoneより機能的に優れた点もいくつかある。両者を厳密に比較することは難しいのだが、単純に価格だけ見てしまえば、iPhoneが約55,000円なのに対しN95 8GBが無料という差は、両者のスペック以上の開きがあるのではないだろうか?
それでもiPhoneを初めて買う時ならば、その先進性に投資するため5万いくらかの出費は苦にならないかもしれない。しかし、買って早々新しいiPhoneが登場したからといって、すぐにまた買い換えようと思うには値段が高すぎるのではないだろうか?
発売したくてもすぐには発売できないジレンマ
話を3G版iPhoneに戻そう。仮に今、3G版iPhoneが発売されたとしたらどうなるだろうか。まず、既にiPhoneを発売している国では「3G版が出ると分かっていたら、出るまで待ったのに」といった既存ユーザーからの反発が予想される。また3G版が出たからといって、現行のGSM版をすぐに販売中止することは無いだろう。そのため新しくiPhoneを販売する国では両者を併売することが予想されるが、安価でロースペックのGSM版ではなく高価でハイスペックの3G版に人気が集まることになるだろう。これは初期のiPhoneの4GB版と8GB版の売れ行きを見ればわかることだ。iPhoneのような先進性のある端末を買う消費者は、価格ではなく性能を基準に製品を選ぶのだ。
このためAppleが3G版のiPhoneを市場に投入するとしても、発表から実際の発売までには相応のリードタイムを置く必要が出てくるだろう。特にGSM版の在庫が多い時に3G版を発表してしまえば、買い控えにより大量の在庫を抱えてしまう可能性もある。たとえ製品の開発が完了しても「明日から発売開始」と急な発表を行うのは難しいだろう。
それでもAppleが、既存ユーザーの声などを気にせず新製品を投入する可能性も十分ありうる。しかし、ライバル他社の端末が無料で手に入る環境があれば、先進性だけで消費者を引き付けるのは難しくなっていくかもしれない。
さて以下は推測だが、さすがにiPhoneも1年使えば傷やガタが出てくるだろう。そうなればユーザー心理も買い替えに動き始めるのではないだろうか。また3G/HSDPAの利用率は、無線LAN環境が充実している北米よりも、ヨーロッパのほうが高いと思われる。そうなると3G版iPhoneの発売開始はヨーロッパでiPhoneが発売された昨年冬から1年後、すなわち今年の冬あたりではないだろうか? そこから逆算すると、発表は夏ごろだろうか? もちろんこれは、既に3G版の開発が現時点でかなり終わっているという推測の上での予想にすぎないのだが……。
最後に少しばかり宣伝をさせていただきます。技術評論社より、拙著「iPhoneが日本に上陸する日」(ISBN: 4774133957)が刊行となりました。iPhoneを通し日本の携帯電話業界の長所や問題点を探った内容になっています。書店で見かけましたら、手にとって見ていただければ幸いです。