日本ではサムスンに続きGoogleから横に開くスタイルの折りたたみスマートフォン「Pixel 9 Pro Fold」が登場しましたが、海外ではそれを上回る画面サイズの3つに折りたためるスマートフォンが登場しました。ファーウェイは2024年9月20日に世界初の3つ折りスマートフォン「Mate XT Ultimate Design」を中国で発売しました。価格は2万3,999元、日本円で約48万円ですが、予約は500万人を超える超話題の製品になっています。
スマートフォンの画面を折りたたむことができるだけでもまだ珍しい機構ですが、ファーウェイは1枚の画面を3つに分割し、それぞれ山型、谷型にたたむ「Z型」のスタイルで3つ折りスマートフォンを実現しました。完全に閉じた状態では普通のスマートフォンサイズながら、1段階開けば小型タブレット、2段階開けばタブレットに変形するのです。
Mate XT Ultimate Designのサイズはたたんだときが156.7×73.5×12.8mm、質量は298gです。重さがかなりありますが、本体の大きさは一般的なスマートフォンをやや厚くした程度。画面サイズは6.4インチ、解像度は2,232×1,008ピクセル、アスペクト比は20:9。実際に手に持ってみると、違和感なく使うことができます。
折りたたんだ状態から、1枚の画面を開けば7.9インチ、2,232×2,048ピクセルの画面サイズになります。これは従来の折りたたみスマートフォンと同型の大きさ。折りたたみスマートフォンは開けば小型タブレットサイズになるものの、それでも全体の大きさはやや小さめです。高価な折りたたみスマートフォンですが、8インチ程度の大きさにしかならないのであれば「スマートフォンとタブレットを別々に持ち運ぶ」と考える人もいるかもしれません。ところがMate XTはさらに開き、完全平面スタイルにすると10.2インチ、2,232×3,184ピクセルの画面が現れます。ここまで画面が大きくなるのであれば、折りたたみモデルを持つメリットは大いにあるでしょう。
10.2インチの画面なら2つのアプリを同時に起動しても余裕で表示できます。またスプレッドシートを開いても十分な表示ができるので、仕事にも使えるでしょう。そして動画を見る場合もここまでのサイズがあれば迫力も違います。普段はスマートフォンとして使いながら、必要な時にタブレットとして使えるわけです。
ファーウェイが世界初の3つ折りスマートフォンを出すことができたのは、過去に2つのタイプの折りたたみスマートフォンを出していたからでしょう。今回のMate XTは折りたたみスマートフォンとして一般的な「谷折り型」と、ファーウェイなど一部メーカーしか製品化しなかった「山折り型」、それぞれのモデルの画面を1枚に合体させたような製品なのです。ファーウェイの自社初の折りたたみスマートフォン「Mate X」は先行するサムスンとは反対に本体を山型に折る構造でした。
そして2023年には他社同様の谷折り型モデルとなる「Mate X3」を発表。同型では世界最薄(当時)のたたんだ時の厚みは11.1mmで世界を驚かせました。しかし実は初代モデルのMate Xは11mmとこちらのほうが薄かったのです。なお谷折り型のほうが厚いのは、折りたたんだ際の画面の伸びを逃がすためにヒンジ部分に空間が必要なためです。このように2種類の折りたたむ構造のスマートフォンを、しかも最薄クラスの製品を出してきたファーウェイだけに、3つ折りスマートフォンを世界で最初に投入することは他社よりも難易度が低かったのかもしれません。
なお3つ折りスマートフォンはファーウェイより若干早く、8月28日にTECNOが「PHANTOM ULTIMATE 2」のコンセプトビデオを発表していますが、製品はまだ出てきていません。TECNOは1年前の同じ時期にもローラブルディスプレイ搭載のコンセプト「PHANTOM Ultimate」を発表し、翌年2月に実機を公開しています。これと同様にTECNOの3つ折りモデルも2025年2月、世界最大のモバイル展示会「MWC」で実機が公開されることが期待されます。
一方、サムスンディスプレイはZ型に折りたためるディスプレイを「Flex S」として開発中で、海外展示会ではモックアップの展示もすでに行っています。ファーウェイとTECNOの動きを受けて、サムスンからも来年には3つ折りスマートフォンが出てくるかもしれません。