ASUSは1月頭にラスベガスで開催されたCES 2024で変わった形状のノートPCを発表しました。一般的なノートPCはキーボードとディスプレイという折りたたみ構造ですが、ASUSの新製品「Zenbook Duo」はキーボードが無くディスプレイ2枚を折りたたむ構造になっています。片方の画面にキーボードを表示すれば普通のノートPCのような形状で使えますし、折りたたんだときに挟み込んで持ち運べるキーボードを使えば、上下2画面が使える大画面PCになります。

  • ASUSのZenbook Duo

ディスプレイを折りたたむことのできるノートPCはこれまで数機種登場したことがあります。スマートフォンの折りたたみディスプレイモデルに影響を受けてか、ASUSからも「Zenbook 17 Fold OLED」が2022年に発売になりました。レノボやDELL、LGなども同型のノートPCを出しています。

  • 折りたたみディスプレイを搭載するASUS Zenbook 17 Fold OLED

Zenbook Duoは2つのディスプレイを貼り合わせ、それを折りたたむ形状です。そのためディスプレイとディスプレイの間にヒンジのラインが見えます。このラインは邪魔に見えますが、そもそもノートPCは複数のウィンドウを開いて使うことも一般的です。ゲームや動画の視聴時には1つの大画面を使いたいでしょうが、オフィスワークや動画編集時も複数のソフトを起動してそれぞれのウィンドウを行き来する使い方が多いでしょう。Zenbook DuoをCESの会場で触ってみても違和感が少なかったのは、そのような作業をしてみたからかもしれません。

  • 2つの画面の間のラインはあまり気にならない。キーボードを使うことも可能だ

折りたたみディスプレイを搭載したモバイル製品として真っ先に思い浮かぶのは折りたたみスマートフォンでしょうが、Zenbook Duoのような2画面タイプは現在市販されていません。サムスンが本格的な折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」を発売したのは2019年でしたが、折りたたみできる2画面スマートフォンはそれよりも早く、京セラが「Echo」を2011年に、NECカシオモバイルコミュニケーションズが2013年に「MEDIAS W」を発売しています。しかしこれらの2画面スマートフォンは流行ることなく廃れてしまいました。小さい画面を大きく使うには、ヒンジのラインは不要・使いにくい存在だったのです。

  • ヒンジで繋がれた2画面スマホは流行らなかった

一方で、ノートPCも折りたたみディスプレイなら、さらに大きな画面を使えるメリットがあります。しかし価格はかなり高くなってしまいます。各社の折りたたみディスプレイ搭載ノートPCの価格は50万円以上で、本体質量もやや重くなります。折りたたみスマートフォンも高価ではあるものの、折りたたみノートPCほどではありません。もちろん折りたたみディスプレイの価格が下がればノートPCでの採用も広がるかもしれませんが、現時点ではまだ普及製品になるほどコストは下がっていません。

  • 開発コストの高い折りたたみディスプレイ。折りたたみノートPCの価格を高くしている

という状況下で、Zenbook Duoの価格は1,400ドル(約21万円)とのこと。細かいスペックの差はあるとしても、開発コストの高い折りたたみディスプレイを使わず、一般的なフラットディスプレイを2枚組み合わせただけなのでコストはかなり安くなるわけです。一般的なノートPCと変わらないレベルで販売できるので、Zenbook Duoが成功すればノートPCは「折りたたみによる大画面化」ではなく「2画面によるマルチウィンドウ化」が進むかもしれません。

  • キーボードを乗せれば一般的なノートPCスタイルにもなる

奇しくも2023年12月からギャザテックが2画面ノートPC「DXUSCREEN」をクラウドファンディングに出品、2024年2月末まで購入者を受け付けていますが2024年2月16日時点で400名以上の予約を受けています。ノートPCとしてのスペックはやや低いものの定価は12万8,000円とこちらも安く、2画面ノートPCを誰もが普通に買える製品になっています。初めて買ったノートPCが2画面だった、なんて人もこれからでてくるかもしれません。

  • クラウドファンディングで予約受付中の「DXUSCREEN」

なお2画面ノートPCでもレノボの「Yoga Book 9i Gen 8」は40万円弱と高いものの、同社の折りたたみノートPC「ThinkPad X1 Fold 16 Gen 1」が約60万円からと、やはり高価です。

折りたたみスマートフォンはサムスン、Google、シャオミ、ファーウェイ、OPPO、HONOR、vivo、OnePlus、TECNOと主要メーカーのほぼ全社から登場しています(横折りタイプ)。今後も参入メーカーや製品種類は増えるでしょう。それに対してノートPCは折りたたみディスプレイではなく2画面モデルがこれから増えるかもしれません。

またノートPCで大画面が必要ならば、同じくASUSがCES 2024で発表した折りたたみディスプレイ「ZenScreen Fold OLED MQ17QH」を別途持ち歩く方が現実的かもしれません。いずれにせよスマートフォンもノートPCもディスプレイの大型化の進化はまだまだこれからも進むと思われます。

  • ASUSは折りたたみディスプレイも発表している