スマートフォンのカメラ性能の進化は目を見張るものがありますが、中国のvivoが2023年11月13日に発表した「X100 Pro」は1インチセンサーを含む5,000万画素カメラを3つ搭載。望遠も100mm(4.3倍)と高倍率で、もはやデジタルカメラの必要性がなくなってしまいそうです。現時点では中国国内のみの販売ですが、4,999元(約10万3,000円)という価格はハイエンドカメラフォンとしては破格値です。
X100 Proには特別なアクセサリも販売される予定です。デジタルカメラなどにアクセサリをつけるフレーム(ケージ)を販売しているSmallRigから、同モデル専用のアタッチメントが登場するのです。SmallRigはデジタルカメラ用としてソニーなどのカメラの機種ごとのフレームや、スマートフォン向けには様々なモデルに対応した汎用ケージの他、iPhoneにピタリとはまる専用ケージを販売しています。このようにグローバルで販売されているデジタルデバイス向けの製品を展開している同社が中国メーカーのvivoの中国向けモデルに専用品を販売するのは異例のことです。
製品構成はX100 Pro用のケース、ケースの裏側に装着できる折りたたみハンドル、そのハンドルに装着できるBluetoothリモコンのセットになっています。ケース背面はカメラ部分が丸く開いていますが、ここにはレンズフィルターのネジが切ってあり市販の67mmのカメラ用フィルターを装着できます。
またハンドルは90度向きを変えて装着可能で、側面には三脚のネジ穴もあります。自撮りスティックをつけたライブ配信も片手で簡単に行えるというわけです。
スマートフォンをデジタルカメラっぽく使えるようにするキットはここのところ中国でブームになりつつあります。その先鞭ともいえるのはシャオミが2022年7月に発売した「Xiaomi 12S Ultra」。ライカとコラボしたカメラを搭載し、背面中央に円形に配置するとともに限定品ながらフィルターを装着できるカバーを提供。高性能なカメラをデジタルカメラ用フィルターでさらに活用できたのです。ただし同モデルは中国国内のみの販売であり、海外ではこのキットもあまり話題になることはありませんでした。
2023年4月発売の「Xiaomi 13 Ultra」は中国のみならずグローバル展開も行われ、一部の国では純正のプロカメラキットを販売。こちらはレンズフィルターを装着できるケースに加え、脱着式のカメラグリップも装着可能、グリップにはワイヤレスシャッターボタンも備えます。すべてを取り付けた状態はかなりカメラっぽい形状になります。
スマートフォンの背面にフィルターや望遠レンズを取り付けるキットは過去にも販売されたことがありますが、クリップ式のためレンズ位置がずれたり、本体から出っ張ってしまい使いにくいなどの難点がありました。しかし最近のスマートフォンはカメラを円形台座にまとめ背面中央に配置するデザインが1つのトレンドになっています。このデザインならばケースに開いているカメラ部分の円形の穴に、丸いレンズフィルターを装着できるよう加工することが可能なわけです。
この円形カメラデザインは2019年にファーウェイが発売した「Mate 30」あたりが嚆矢と思われますが、当時はまだフィルターを付けて活用するほどカメラ性能は高くなかったのでしょう。そのためファーウェイからはフィルター装着カバーは発売されませんでした。むしろファーウェイが力を入れたのはフロントカメラを使ったセルフィーで、カメラ部分を加工用に収納できるセルフィーライトを販売しています。
なおシャオミは海外の一部で「Xiaomi 13T」シリーズ用のカメラキットも販売しています。こちらは専用品ではなく汎用品で、Xiaomi 13T以外のスマートフォンにも装着できるLEDライト付きグリップや三脚などがセットになっています。グリップそのものはUURIGの「PH-10」という製品で、シャオミのロゴを入れた特注品です。なお日本でもXiaomi 13Tは発売されていますが、残念ながらこのキットの提供はありません。
スマートフォンのカメラの進化は「1インチセンサー」「高倍率望遠」そして「マルチ高画質カメラ」がトレンドになっていくでしょうが、カメラのセンサーそのものはソニーなどが作っているものをそのまま使うため、メーカー間での差別化は難しくなっていきます。カメラの使い勝手を高め、また特徴的な外観に変身させることのできる「カメラ化キット」。スマートフォンの次なる差別化製品として、今後各社から様々なものが出てくるでしょう。