NIO Phoneというスマートフォンが海外で発売になりました。スマートフォンの新規参入と言えば最近では2022年7月に「Nothing Phone(1)」を発売したNothingが記憶に新しいところですが、NIO PhoneはNothingのようなIT関連メーカーから登場したスマートフォンではありません。NIOは中国でEV(電動自動車)を販売するメーカー。自動車メーカーがスマートフォンを発売したというわけです。
NIO Phoneはチップセットにハイエンドモデル向けのクアルコム製Snapdragon 8 Gen 2を搭載し、カメラも5,000万画素を3つ搭載とかなりのハイスペックなスマートフォンです。バッテリーは5,200mAhで66Wの急速充電対応、ディスプレイも6.81インチ3,088x1,440ピクセルと高解像度。新規参入したメーカーがいきなり高性能なスマートフォンを出してくるとはちょっと驚きです。
NIO Phoneがここまで高性能なのは、スマートフォン以外の用途も考えられているからでしょう。NIO PhoneはNIOのEVのドアロックの開閉をワイヤレスで行えます。専用アプリ「NIO LINK」をインストールすれば自動車の30もの機能をNIO Phoneからコントロールできます。EVのバッテリー残量や走行距離の確認、地図検索、さらにエンジンをかけることまでアプリで可能。自動車のリモコンとして使うことが最初から考えられているわけです。このようにアプリで自動車が操作できるのであれば、快適な体験を提供するためにもハイスペックなスマートフォンが必要になるわけです。
NIOのEVには車内に約12インチサイズのディスプレイが搭載されています。NIO Phoneを車内に持ち込むとこのディスプレイの中にNIO Phoneの画面を投影する「Sky Window」機能も搭載。スマートフォンを触ることなく車内からNIO Phoneの内部にアクセスすることも可能です。
NIOのEVは現時点で8製品が販売されています。中国のみならずドイツ、オランダ、スウェーデンなどヨーロッパでも販売中です。自社のEV充電ステーション「NIO Power」も運営しており、中国とヨーロッパに約1,000か所を展開。もちろん他社のEV充電器も使用できます。EVは充電しなくては使えませんが、充電ステーションまで運営することで将来的にはステーションにデジタルサイネージを設置して広告を流したり、Wi-FiのホットスポットにしてNIOユーザー以外の人も呼び込む、といった仕組みも組み込めるようになるでしょう。
NIOは他にもライフスタイル製品「NIO Life」、NIOユーザーのための憩いの空間「NIO House」などを展開しています。自動車だけを作るメーカーではなく、生活全般をサポートする企業として様々なジャンルに取り組んでいるのです。NIO Lifeは食品開発やワインの販売を行うなど実生活で自社と関わる機会も増やそうとしています。それらのサービスを受けるにはスマートフォンが必要でしょうから、自社でスマートフォンを手掛けるのは当然のことなのでしょう。
とはいえスマートフォンは他の製品とは違い、技術はまだまだ日進月歩で進化する製品です。例えばチップセットは今や半年ごとにアップグレードバージョンが出てきます。本体デザインも移り変わりが激しく、ちょっと前までならばiPhoneのように背面片側にレンズを2つか3つ寄せたデザインが主流でしたが、今では4つのレンズをスクエアに配置したり、円形にまとめるデザインがトレンドです。NIO Phoneのデザインも2年もすれば古いと思われるかもしれませんから、最低でも1年に1回の新製品投入、2年に1回はデザインのフルモデルチェンジが必要かもしれません。定期的に新製品をどれだけ投入できるかが、NIO Phone成功の大きな鍵を握りそうです。
一方でEVとセットでスマートフォンを売るというバンドル販売も今後行われるかもしれません。EVは数百万円する製品ですが、そこに10万円のスマートフォンをプラスしても月々の支払額はそれほど変わらないでしょう。NIO Phoneの価格は6,499元、約13万3,000円です。例えばEVを24回払いにした場合、月々NIO Phoneの分として約5,500円追加すれば済みます。もちろんEV購入者にNIO Phoneを大幅割引する、あるいはグレードによっては無料進呈する、という売り方も考えられるでしょう。
NIO Phoneがメジャーなスマートフォン製品の仲間入りを果たすのか、NIOの今後の動きには注目したいところです。