今年も各社からさまざまな新製品が発売された海外市場。2009年の端末のトレンドは? 各社のマーケットシェアの変動は? 各調査会社の調査レポートや各社の端末ラインナップから今年を振り返ってみよう。

シェア変動は小幅ながらも勢いに大きな差

2009年は大手上位5社のシェアの順位そのものには大きな変動は無かったものの、各社の明暗がくっきりと出た1年だった。トップのNokiaの位置は変わらなかったが、マーケットシェアは30%台半ばで足踏み状態が続いている。

シェア1位ながらも以前ほどの勢いを感じられないNokia。今後の新製品が期待される

一方、2位のSamsungだが、年間販売数2億台突破は間違いなく、マーケットシェアも約20%と、その地位を確固たるものにしている。豊富なラインナップと敏速なトレンド対応により、今後も勢いは止まりそうもない。日本市場でも今年は複数のモデル展開、複数の通信事業者への端末納入を果たしている。

この上位2社を追いかけるLG、Motorola、Sony Ericssonの3社には大きな差が現れた。LGは四半期ごとの売り上げをコンスタントに10万台レベルとし、シェア約10%。3位の座は当確だ。一方MotorolaとSony Ericssonは今年に入ってから売り上げが急落し、2009年第3四半期はそれぞれシェア5%前後と2社合わせてLGに追いつくかどうか、というレベルにまで落ち込んでいる。両者の不振はラインナップの偏りや目玉製品が無かったことが大きく影響しており、販売台数回復の道は険しそうである。

フルタッチ端末が大流行

2009年はフルタッチ端末が一気に増えた年でもあった。iPhoneが火をつけたフルタッチ端末だが、各社が複数ラインナップを揃えるまでの一般的な製品になった。海外の街中でも指先で画面を操作するユーザーの姿を多く見かけるようになっているほどだ。

実は大手5社の勢いの差は、まさしくこのフルタッチ端末のラインナップの差がそのまま現れた格好になっている。勢いのあるSamsungとLGは、今年販売した製品のうち、フルタッチ製品はおおまかに見ても全体の30%前後に達しているだろう。海外の通信事業者や家電店の店頭のショーケースを見てもこの2社のフルタッチ端末が大きく目立っているほどで、「韓国メーカー=フルタッチ」という印象を消費者に大きく植え付けている。

また、両社ともにスマートフォンやハイエンド端末だけではなく、1万円台の低価格モデルまでもフルタッチ化を進めたのが特徴だ。「Star」の愛称を持つSamsung S5230は今年春の発売以来、半年で1000万台売るヒット製品になっており、フルタッチ端末の利用層を大きく拡大している。Nokiaの伸び悩み、MotorolaとSony Ericssonの不振は、この3社の端末ラインナップ中に占めるフルタッチ端末の割合と合致しているかのようだ。

展示会でも圧倒的なフルタッチ端末のラインナップを揃えるSamsung

スマートフォンが大きく伸びる

携帯電話の販売台数が伸び悩む中、スマートフォンの販売台数の割合が拡大している。今年第3四半期の比較では、携帯電話の販売台数が前年同期比で約6%減少したにもかかわらず、スマートフォンは逆に約27%の増加となっている。世界全体の景気回復にはまだ時間がかかるようだが、スマートフォンは不況とは無関係に売れているのだ。

スマートフォンの話題の中心は今年もiPhoneで決まり―― となると思いきや、10月から北米で販売開始されたMotorolaのAndroidスマートフォン「Droid」がこの冬の話題を大きくさらっている。Droidは通信事業者のSprintが目玉製品として販売しており、Android OS 2.0を搭載した最初の製品であることと合わせて北米で大きな注目を浴びている。北米市場以外には通信方式を変えた「Milestone」も発売されており、これからスマートフォンの世界ではMotorola旋風が巻き起こりそうだ。 またBlackBerryも2009年第3四半期の販売台数が1000万台に到達するなど好調だ。スペックやアプリケーションによる拡張性ではiPhoneには敵わないものの、QWERTYキーボードによる文字の打ち易さや電池の持ち、そして主要なSNSサービスに対応していることから着実に利用者を増やしているようだ。特に最近は個人ユーザーが大きく伸びており、若い世代向けのカジュアルな端末「8520」も販売されている。

スマートフォンは年明けにはSony EricssonのXperia X10が発売予定だ。Sony EricssonとMotorolaは今後Android端末に注力することで販売不振を打開したい考えのようである。これに対してNokiaはスマートフォンにLinuxベースのMaemo OSを採用した製品を今後増やしていく予定だという。携帯電話全体に対するスマートフォンの割合は、2009年は16%程度だが、今後年々増加し5年後には37%に急増するという調査報告もある。スマートフォンは今後業界を牽引していく中心的存在になっていくだろう。今年のスマートフォンの販売数拡大は、将来の携帯市場の方向を示唆していると言えるかもしれない。