日本では知られざるスマートフォンメーカーはまだまだ海外にたくさんあります。その中でもTecnoはアフリカで圧倒的なシェアを獲得し、インドでもメジャーなメーカー。最近では東南アジアにも着々と進出しており、様々な製品を展開しています。筆者も過去に色の変わるスマホ「CAMON 19 Pro Mondrian Edition」や新興国向けの折りたたみスマホ「Phantom V Fold」などを紹介してきました。
Tecnoは世界初を謳うレンズが収縮するスマートフォン「Phantom X2 Pro」も現在販売しています。いずれの製品も新興国向けとしては価格は高く、現地ではなかなか手の届く製品ではありません。しかし格安モデルばかりを作っていてはメーカーの技術力も進みませんし、より高機能な製品を望むユーザーはiPhoneやGalaxyへと乗り換えて行ってしまうでしょう。色の変わるスマートフォンも、高いモデルを買ったユーザーを飽きさせないための工夫と言えます。
そのTecnoの最新モデル「CAMON 20 Premier」もなかなか面白い製品です。まず本体の背面は幾何学的な美学と前衛的なファッションを取り入れたという、パズルのピースを組み合わせたようなデザインをしています。平面にもかかわらず一見すると凹凸のある、不均一な表面処理を施しているようにも見えます。視覚的にも毎日使うことが楽しいと思えるデザインではないでしょうか?
スペックはチップセットがメディアテックDimensity 8050、6.67インチ2,400x1,080ピクセル120Hz駆動、フロントカメラはパンチホール式で3,200万画素、バッテリーは5,000mAhで45Wの急速充電に対応と、ミドルハイレンジクラスの製品です。価格はインドで3万6,999ルピー、約6万4,000円。現地のスマートフォンとしてはやはり高価な部類に属します。
そして強力なカメラを搭載しています。メインカメラは5,000万画素、超広角カメラは1億800万画素です。一般的なスマートフォンはメインカメラが高画質で、超広角カメラは画質が落ちるのが一般的。たとえばiPhone 14 Pro Maxはメインカメラは4,800万画素、超広角カメラは1,200万画素です。ところがCAMON 20 Premierは超広角カメラに高画質な1億800万画素カメラを搭載するのです。広大なアフリカの風景や、大人数での集合写真を撮影するときも高画質で記録することができるというわけ。実際にCAMON 20 Premierを手にもってアフリカを旅行してみたくなります。
それではなぜメインの広角カメラは5,000万画素なのでしょうか。それはこのカメラがただの5,000万画素のセンサーを搭載しているだけではないのです。CAMON 20 Premierのメインカメラはカメラ部分が実際に動くジンバル機能を搭載しています。そのため手ぶれに対して強力な強さを誇るのです。
ソフトウェア的に手振れ補正を行うスマートフォンのカメラは多いのですが、実際に撮影できる画角が狭くなったり、また暗いところでの撮影を苦手とするものが多くあります。それに対して物理的なジンバル機能なら暗いところでもしっかり手振れ補正も効かせられます。街歩きしながらのVlog撮影もCAMON 20 PremierならGoProなどのアクションカメラのように、画面が揺れない動画を撮れるのです。
ジンバルカメラは日本でも販売中のASUS「Zenfone 9」などまだ一部のスマートフォンにしか採用されていません。そんな機能を新興国向けに特化した製品展開しているTecnoが積極的に採用しているのは驚きでもあります。しかし新興国でも高所得者層はiPhoneを好んで買うでしょうし、格安モデルはシャオミなど中国メーカーが多数の製品を出しています。そんな中で「新興国専業」ともいえるTecnoが生き残るためには他社にはない製品を出すしかないわけです。
日本など先進国でTecnoの製品が販売される時代はまだまだ遠い先でしょうが、アジア各国では数年内にシャオミと並ぶ一大メーカーになっている可能性もあります。アフリカ向けのスマートフォンもこれからどんどん進化を進めようとしているのです。