スマートフォンやタブレットの画面表示が立体的に見える「3Dディスプレイ」の話題が最近になって少しずつ増えています。2023年5月末に台湾・台北で開催された「COMPUTEX 2023」会場でも、めがねを必要とせず裸眼で3D表示できるディスプレイの展示がいくつかされていました。3D表示はかなり昔からスマートフォンやタブレットに搭載されたものの実用性が低いことから普及はしませんでした。しかし、ようやく実用的な製品が出揃ってきたのです。
Acerは2022年に発売した3Dディスプレイ「SpatialLabs View Pro ASV15-1B」と同技術のディスプレイを搭載したノートPC「Predator Helios 300 SpatialLabs Edition」を展示。どちらもゲームプレイのデモが披露されていました。3D表示に対応したゲームなら立体感ある画面表示が行え、ゲームの臨場感も高まります。3Dディスプレイの構造から、手前に浮き出るというよりも、ディスプレイの奥に深みがあるといった表示になりますが、15.6インチのディスプレイなら、それがより現実味を帯びた表示に見えます。
Acerは3Dディスプレイを3枚つなげたシステムも展示。ヘッドホンを耳に装着し、ゲームの音に合わせてバイブレーションする振動装置の内蔵された椅子に座ってゲームをすれば、もはや現実の空間と区別がつかないほどの新しい感覚を得ることができます。3Dディスプレイはこのようにゲームとの親和性が非常に高い製品です。現時点ではディスプレイ同士のつなぎ目が見えますが、いずれこの横ワイドサイズで一体型の3Dディスプレイも登場するに違いありません。
ASUSは1月に発表した3DノートPC「ProArt Studiobook 16 3D OLED」を展示。こちらもゲームのデモが行われたほか、3Dグラフィックなどの編集作業のデモも実施されました。ASUS初の3DノートPCとなるこのモデルには、トラックパッドの左側にホイールボタン「ASUS Dial」が搭載されています。Adobeアプリなどでコマンド選択やパラメータの変更などを直感的に操作することができます。メタバース向けの3Dコンテンツの作成にも3D表示可能なノートPCは有用でしょう。
ASUSブースにはキヤノンのVR動画撮影レンズ「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」を取り付けたデジタルカメラも展示。同カメラで撮影した180度VR映像の編集や表示もASUSの3DノートPCでできるようです。VRの視聴はVRヘッドマウントディスプレイを装着する必要がありますが、裸眼で体験できるとなればVRコンテンツもより普及が進むでしょう。新しいビジュアル体験用デバイスとしてはAppleが「Apple Vision Pro」を発表しましたが、大きいヘッドマウントディスプレイを装着しなくてはなりません。遠い将来はAppleも3D表示対応のMacBookを投入してるかもしれません。
個人向けの3Dディスプレイはこの2社の製品だけでしたが、業務用までをターゲットにした開発中の大型3DディスプレイをBRELYONが展示していました。「BRELYON Ultra Reality」は30インチのディスプレイですが特殊な表示により120インチサイズまで拡張して見ることのできる3Dディスプレイです。AcerとASUSの製品はディスプレイ上部に2つのカメラがあり、それが人の目をトラッキングすることで3D表示を行います。BREYON Ultra Realityはそれとは異なる方式であり、実サイズ以上に広い大きさの表示も可能です。
BRELYON Ultra Realityは一般販売も考えているとのことで、自宅で手軽に3D映画なども楽しめるようになりそうです。BRELYONは他にも自動車のダッシュボード向けの3Dディスプレイなども開発しており、3D表示は10年もすれば当たり前のものになっているかもしれません。
3D表示可能な製品は他にもZTE関連会社のNubiaが「nubia Pad 3D」を2月に発表しており、年内に発売されます。まだまだ数は少ないものの、3D表示可能な製品は着実に増えています。
今から10年以上前、シャープからは3Dスマートフォンが、富士フイルムからは3D撮影可能なコンパクトデジタルカメラが出るなど、3Dはちょっとしたブームになりましたが、どちらも表示できるサイズが小さく、それが3Dコンテンツの普及には至らなかったと考えられます。しかし、今回紹介した3D表示タブレットやノートPCは大画面で3Dコンテンツを楽しむことができます。ECサイトでの製品の立体表示や、メタバース空間でのコミュニケーションなどが普及すれば、3D対応製品も増えていくことでしょう。