スマートフォンの充電技術は急激に高速化が進んでいます。日本ではシャオミが「神ジューデン」の名で120W急速充電対応のスマートフォン「Xiaomi 12T Pro」を販売中で、わずか19分でスマートフォンを満充電できます。海外ではさらに高速な充電技術を搭載したモデルが製品化されており、現在市販されている製品の中ではrealmeの「realme GT3」が240W充電に対応、満充電に必要な時間は9分半です。

  • Xiaomi 12T Proは19分で満充電できる

ところがそれを上回る急速充電技術をInfinixが発表しました。Infinixの技術は260W充電で、スマートフォンを7分半で満充電できるといいます。さらにそれだけではなく、ワイヤレス充電も110Wと高速化し、USBケーブルを接続することなく16分で100%までの充電に対応します。

  • Infinixは有線260W、無線110Wの急速充電を発表

Infinixというスマートフォンメーカーの名前を聞いたことが無い人がほとんどだと思いますが、それもそのはずで同社はアフリカなど新興国を中心に製品を販売しています。親会社であるTransionnはInfinix、Itel、Tecnoの3メーカーを展開しており、この3社合計でアフリカのスマートフォン市場でシェアは約半数。サムスンや中国メーカーを超える圧倒的な人気を誇っているのです。アフリカ向けだから格安スマートフォンばかりを作っていると思いきや、180Wの急速充電に対応した「Infinix Zero Ultra」など新しい技術を搭載した製品も販売中です。

  • 180W充電の「Infinix Zero Ultra」

Infinixの260W充電を搭載したスマートフォンはまだ販売されていませんが、すでに試作機が作られ実際に動作が可能とのこと。海外メディアがテストを行ったところ、最速では約5分で充電が可能だったそうです。神ジューデンは朝起床してスマートフォンの充電がゼロであることに気が付いても、家を出るまでの間に満充電にできるでしょうが、5分の充電であればもはや充電切れを気にする必要が無くなるでしょう。

  • 現時点で最速充電に対応するrealme GT3

260W充電など、爆速な充電の最大のメリットはチャージする時間を気にする必要がなくなることです。外出時もモバイルバッテリーを持ち歩く必要もなく、付属の充電器とUSBケーブルを持ち運べばよくなります。260W充電に慣れてしまうと、むしろモバイルバッテリーの充電が面倒になってしまうでしょう。とはいえ、専用の充電器とケーブルを常に使う必要がある点はやや面倒かもしれません。外出用に充電器とケーブルをもう1セット買うべきでしょうね。

  • 急速充電は専用充電器だけではなく対応するUSBケーブルも必要だ

Infinixの急速充電技術はむしろ110Wの無線充電のほうが有用かもしれません。こちらはUSBケーブルが不要なので充電がより簡単に行えます。もちろん専用の充電台が必要になりますが「置くだけで充電」は簡単です。専用充電台に接続する充電器も100W超えの市販の充電器が対応できるでしょうから、汎用性もより高いと思われます。ちなみにシャオミはすでに100Wの無線充電台を販売していますが、そこまでの電力に対応するスマートフォンはまだ販売されていません。現時点では「Xiaomi MIX 4」などが67Wの無線充電に対応しています。

  • シャオミの100W無線充電台

それでは今後、急速充電はさらに高速化が進むのでしょうか? 実はすでにシャオミが300Wのデモを公開。300Wに対応させた「Redmi Note 12 Pro魔改版」では5分で満充電が可能とのことです。もはやカップうどんを作る時間で満充電できてしまうのです。とはいえ前述したように専用充電器とケーブルが必要なので、製品化された際には持ち運び用に買えるよう、別売もしてほしいものです。

  • 5分で満充電できる技術をシャオミが開発中だ

スマートフォンの充電・バッテリー周りに関する技術は他にも進化が進んでいます。HONORはバッテリーの新しい素材を実用化し、既存のバッテリーと同じ大きさで容量を増やすことに成功しました。同社の最新モデル「Magic5 Pro」が搭載するシリコンカーボンバッテリーは、一般的なリチウムイオンバッテリーより電力効率が12.8%高く、それだけ駆動時間を延ばすことができます。

  • HONORが開発したシリコンカーボンバッテリー

急速充電技術とバッテリー効率技術の進化が進めば、いずれ「数分の充電で1週間使える」スマートフォンが実用化されるでしょう。また以前はカフェのテーブルの上に急速充電台が置かれていたことがありましたが、当時の無線充電速度は遅く、いつの間にか無くなってしまいました。これも超高速な無線充電が当たり前になれば復活するでしょう。「コーヒーを1杯飲む間に充電が完了」するようになれば急速充電器を持ち歩く必要もなくなります。今後の技術の進化に期待したいものです。

  • カフェのテーブルで充電も復活してほしいものだ