スマートフォンやスマートウォッチを使ってドアの鍵の開閉ができる自動車が増えています。EV(電気自動車)の普及は自動車をスマートな製品に変えており、今や自動車が4Gや5G通信に対応するものも増えています。現在ではこのスマートフォン、スマートウォッチで操作できる自動車の数はまだあまり多くありません。今後種類が増えていくでしょうが、AppleやGoogle、スマートフォンメーカーと自動車メーカーの間で協業が必要なこともあり、世界的にメジャーなメーカーの自動車からの対応になるのでしょう。

しかしEVの世界では新興メーカーの勢いが加速しています。テスラの存在感はこの数年で一気に高まりましたし、日本でもEVを販売する中国のBYDは、世界のEV販売台数がテスラに次ぐ2位。恐らくマーケットの大半は中国でしょうが、今後グローバルに販売数は伸びていくでしょう。スマートフォンでシャオミが世界を席巻しているのを見れば、BYDも世界中で販売数を増やしていくのは確実です。

  • BYDのEV「ATTO 3」。日本でも発売されている

そのBYDが自社の自動車をコントロールできるスマートウォッチを4月に発売する予定です。Apple WatchやサムスンなどのスマートウォッチがBYDの自動車に対応するのは先になるでしょうから「ならば自分たちで作ってしまえ」ということなのでしょう。

自動車メーカーがスマートウォッチを手掛けるとは不思議な気もしますが、BYDは元々はバッテリーメーカーで、そこから多数の関連会社が生まれ、時を経て自動車を手掛けるBYD Autoを設立、現在に至っています。携帯電話やスマートフォン向けのバッテリーも古くから開発しており、そこから携帯電話やスマートフォンの相手先ブランドによる製造や開発も行っています。古くはノキアのフィーチャーフォンを製造したり、最近では背面が光る「Nothing Phone (1)」の製造もBYDと言われています。

  • あのNothing Phone (1)はBYD Electronicsが製造したとされている

つまりBYDグループは小型デバイスを作るノウハウはすでに持っており、構成部品数も少ないスマートウォッチを作ることはお手の物なのです。しかしスマートウォッチを作るだけでは自動車のコントロールはできません。BYDのEVはエンジンやバッテリー、車内環境などを制御できるようにプラットフォーム化されています。そしてそれを制御するOSを搭載し、そこに外部からスマートフォンやスマートウォッチを接続することで車の制御が可能になるのです。

それではBYDのスマートウォッチはどのような製品になるのでしょうか? 現時点では中国メディアにいくつか情報が公開されているだけですが、360×360ピクセルの円形のディスプレイを搭載しており、バッテリー容量は200mAh。一般的な使用では5-7日程度、最大待ち受けは30日とのこと。生活防水に対応し運動量の計測などアクティビティートラッカーとしての機能も持っているようです。またスマートフォンとの接続も可能で、iOS 4.4以上、Andorid OS 7.1以上に対応することから、ここ数年内に販売されたスマートフォンは大半が対応しそうです

  • BYDのスマートウォッチの主な性能

EVのコントロールは自動車のスマートキーのようなユーザーインターフェースで行え、ドアの鍵の開閉やエンジンスタートにも対応。スマートキーがそのままスマートウォッチに内蔵された製品と言えます。

  • EVのコントローラーになる

しかしBYDのユーザーが多いとはいえ、スマートウォッチは自分の好みのものを使いたいという人は多いでしょう。iPhoneユーザーなら利便性も考えるとApple Watchの選択肢がベストです。そのためBYDのスマートウォッチが発売されても、BYDのEVほど売れるとは限りません。

とはいえ、このスマートウォッチでEVの様々なコントロールができるようになれば、自動車に乗る時間が多い人にとってはこちらのほうが便利な製品になる可能性はあります。今後は音声コントロールも実用化されるでしょうから、スマートウォッチに話しかけるだけで操作もできるようになるでしょう。それでもApple Watchを手放せない人は「左手にApple Watch、右手にBYDのスマートウォッチ」なんて両腕使いをする人が出てくるかもしれません。スマートウォッチの自動車対応が想像以上に便利になれば、そんな姿も当たり前になるのです。

スマートフォン・スマートウォッチと自動車の連携では、中国でファーウェイが自動車メーカーのセレスと共同で「AITO」を開発しており、すでに数モデルのEVを販売しています。このAITOはファーウェイのスマートフォンやスマートウォッチでドアの開閉などが可能です。

  • ファーウェイのAITO。ファーウェイのスマートウォッチで操作できる

またシャオミは現在EVの開発を行っており、2024年には製造を開始する予定とのこと。当然のことながらシャオミのスマートフォンやスマートウォッチとつなげられる製品になるはずです。こうなるとEVのユーザーで運転する機会が多い人は、スマートフォンやスマートウォッチもEVメーカーと同じものを買うようになるかもしれません。BYDのスマートウォッチがどれだけ売れるのか、注目したいところです。

  • スマホ連携できるシャオミのEVに期待したい