スマートフォンのカメラ性能は年々進化していますが、TikTokに代表される縦動画の流行で撮影スタイルも変わりつつあります。一方で、高画質な写真を撮れることになったことで、カメラに似せたデザインを採用するスマートフォンも増えてきました。スマートフォンのカメラの配置と言えばiPhoneに代表される背面の左上に台座を置いてそこに複数のカメラを設置するデザインが主流です。それに対して背面中央にカメラを搭載するモデルも増えています。日本で販売されているシャープの「AQUOS R7」やライカの「Leitz Phone 2」はその代表例です。
海外ではシャオミの「Xiaomi 12S Ultra」が大胆なデザインで話題になっています。背面にあるトリプルカメラを大きな円形ガラスカバーで覆ったデザインはデジタルカメラのレンズを思わせます。このカバーの下には中央に超広角カメラを配置し、その上に1インチセンサーを採用した本格的な広角カメラ、さらに3.5倍望遠カメラを左に納めています。
ここまで大きい円形ガラス、デジタルカメラのように特殊フィルターを付けて様々な撮影効果を楽しみたいものですが、フィルターを取り付けできる構造にはなっていません。サードパーティーからXiaomi 12S Ultraに付けるケースを改造してフィルターを装着できる製品もいくつか販売されていますが、シャオミから限定版として本格的な映像撮影キットが登場しています。これは52ミリのフィルターを装着可能な革風ケースとフィルター2枚、さらにフードもセットになったもの。それに加えてレンズキャップやフィルターキャップも金属風のものが付属し、その外観は古くからあるカメラ用のレンズキットのようにも見えます。
もちろん本格的な絵作りでは高級デジタルカメラには敵いません。しかしこのキットのフィルターやフードを取り付けてXiaomi 12S Ultraを持って街に繰り出せば、いつもの風景も違って見えることでしょう。写真を作品として撮影するときに必要なのはなんといっても撮影者のインスピレーション。「まずは形から」という言葉があるように、デジタルカメラのようなルックスのスマートフォンを持ち歩けば写真撮影も楽しくなりそうです。
Xiaomi 12S Ultraがカメラのようなデザインになっているのは、シャオミが初めてライカと協業したモデルであるからです。本体にもライカの名前を冠したフラッグシップスマートフォンだけに、その外観にもこだわりを見せているのです。日本ではライカ自らがスマートフォンを出していますが、Xiaomi 12S Ultraもライカ製と名乗っても認められるのではないかと思えるほど高い質感と完成度を誇っています。
このように本格的なカメラスマートフォンを投入したシャオミですが、シャオミの挑戦はこれだけに留まっていません。スマートフォンの背面にカメラのレンズを装着できる試作モデルをすでに作り上げているのです。それはこのXiaomi 12S Ultraをベースにした「Xiaomi 12S Ultra Concept」という製品です。コンセプトの名前がついていますが、実際に何台か製造され、シャオミ社内でテストも行われたとのこと。
Xiaomi 12S Ultraのカメラを覆う円形の台座にライカのレンズが装着できるように加工がされており、マウントを介して本物のライカのレンズを取り付けることができます。Xiaomi 12S Ultraが搭載する1インチのセンサーならば、カメラのレンズを使った本格的な写真撮影も楽しめるというわけです。
残念ながらこのXiaomi 12S Ultra Conceptは発売予定はありませんが、1インチセンサーを搭載したスマートフォンがこれから次々と出てくれば、どこかのスマートフォンメーカーや、あるいはクラウドファンディングでレンズ交換式のスマートフォンが出てくるかもしれません。1インチセンサーのカメラを搭載するスマートフォンはシャオミ、ソニー、シャープに次いで、2022年11月にはvivoからも発売になっています。2023年は各社スマートフォンのフラッグシップモデルは1インチセンサー搭載が当たり前になりそうです。
スマートフォンのカメラの進化はシングルカメラからマルチカメラへと進み、またAI処理によるコンピューティショナルフォトグラフィーは美しく映える写真を誰もが手軽に撮影できるようにしてくれました。メーカー側も性能だけの差別化は難しくなりつつありますが、シャオミの映像キットは他社のスマートフォンでは味わえない「シャオミだけの撮影体験」を提供するものとして面白い取り組みと言えるでしょう。スマートフォンの本体性能だけではなく、スマートフォンと一緒に使うアクセサリの進化もこれから進むかもしれません。