手首につけるスマートウォッチや音楽を聴くワイヤレスイヤホンなど、身体に装着する製品を「ウェアラブルデバイス」と呼びます。最近ではメガネの形でイヤホン機能を搭載する製品も増えてきました。このメガネ型のデバイスは2013年にGoogleが「Google Glass」を発表して大きな話題になったことを覚えている人も多いでしょう。Google GlassはMijia拡張現実に対応し、スマートフォンと高度な連携ができる高性能なメガネでした。しかし価格が高かったことや、使い道が実際は限定されるなど、時代を先取りしすぎたデバイスでもありました。残念ながら「誰もがGoogle Glassを使う」日は来なかったのです。

このGoogle Glassから約10年が経った2022年8月、今度はシャオミがよく似た外観のメガネ型のウェアラブルデバイスを発売しました。中国で販売が始まった「Mijia眼鏡相機(メガネ型カメラ)」は、メガネの形をしたカメラ。つまり目の前で見えるものをそのまま記憶できるウェアラブルデバイスなのです。

  • シャオミが中国で発売した「Mijia眼鏡相機」。Google Glassのようなデザインだ

Mijia眼鏡相機は正面から見ると左側に2つのカメラが搭載されています。また右側にはそのカメラの映像を直接目の前に映し出す小型モニター(ヘッドアップディスプレイ)が取り付けられています。Google Glassはスマートフォンの通知だけではなく動画を見たりブラウジングも可能でしたが、Mijia眼鏡相機はスマートフォンに撮影データを送るだけしかできません。これでは力不足と思う人もいるかもしれませんが、そもそもMijia眼鏡相機はカメラなのです。スマートフォンからの通知を知りたければスマートウォッチをはめておけばいいでしょうし、Mijia眼鏡相機はそのような機能を求めるユーザー向けの製品ではありません。繰り返しますがMijia眼鏡相機は「デジタルカメラ」なのです。

  • 2つのカメラと小型モニターを搭載搭載するデジタルカメラだ

縦に並ぶカメラは下側が5,000万画素の高画質な広角カメラで、F1.8と明るく電子式手振れ補正を搭載しています。上にあるのは800万画素F3.4のペリスコープ式の望遠カメラでこちらは光学式手振れ補正を搭載。カメラ性能は最近の高性能スマートフォンとほぼ同等と考えてよさそうです。

  • 5,000万画素と800万画素望遠のデュアルカメラ仕様

Google Glassは約10年前の製品だったとはいえ、カメラは500万画素でした。そのため積極的に写真を撮る目的には不十分だったのです。一方、Mijia眼鏡相機はスマートフォンをわざわざポケットから取り出さなくとも、撮りたいと思った時にすぐにメガネ搭載のカメラを使ってスマートフォン品質の写真が撮影できます。つまりハンズフリーで撮影ができるわけです。作業中に両手がふさがっているときや、道を歩いているときでもスマートフォン不要で撮影できるだなんて、実はかなり優れたカメラと言えるかもしれません。

  • ハンズフリーカメラという新しいデバイスでもある。メガネ部分は交換可能

メガネ型のデバイスを作るのであれば、あれもこれもといろいろな機能を詰め込みたくなるでしょう。しかしシャオミはきっぱりと割り切り、カメラに絞ることで、中途半端な画質ではなく美しい写真を十分撮影できる製品に仕上げたのです。

  • 近未来を思わせるデザインだが、機能はカメラだけだ

実際の作例を見ると、標準の広角カメラ、望遠の光学5倍撮影の写真、どちらも細かいディテールがしっかりと写っています。スマートフォンで撮影したと言ってもその差に気が付かないレベルでしょう。またデジタル15倍もメガネのモニターを通したりスマートフォンの画面で見る分には十分な画質のようです。

  • カメラはオマケレベルではなくスマートフォンと画質は変わらない

ヘッドアップディスプレイのプレビューもかなり鮮明なようです。シャオミの製品紹介ページには実写真ではなくCGが表示されているため、やや「盛っている」写真でしょう。しかしそれを差し引いても実際にどんな構図で写真や動画を撮っているかを確認しながら撮影ができるのは便利そうです。そういえば中国の通販などで、メガネのフレーム中央にカメラを埋め込んだ製品もありますが、プレビューが無いため実際にどんな絵が撮れているかを撮影中に確認することができません。そのため写したいものが写っていなかったこともよくあります。しかし、Mijia眼鏡相機ならそのような失敗も無くしっかりと撮影ができるわけです。

  • プレビューを見ながら撮影できるのは便利だ

さて日常的に写真や動画を撮影する機会は多いでしょうが、Mijia眼鏡相機にはシャオミのAIシステム「小愛」を使った機能も搭載されています。最も有用なのは外国語の看板などを見ると翻訳文を表示してくれる翻訳機能でしょう。レストランでメニューを見ながら、スマートフォン片手に翻訳する必要はありません。Mijia眼鏡相機のカメラを通して自動的に翻訳してくれるのです。またオブジェクトを認識してその説明をしてくれる機能も搭載されているとのこと。

  • カメラを通した翻訳表示。現在は中国語と英語のみに対応

チップセットにクアルコムの8コアを搭載、独自の画像処理チップも搭載しています。メモリは3GB、ストレージは32GB。通信はWi-FiとBluetoothを搭載しています。そしてバッテリーは1,020mAh、100分間の連続動画撮影が可能、また30分で80%を充電できる急速充電にも対応します。本体の重さは100gです。

  • 1,020mAhのバッテリーで100分の動画が撮れる

Mijia眼鏡相機はシャオミのクラウドファンディングで発売が決まりました。先行予約価格は2480元(約5万円)とウェアラブルカメラとしてはやや高価でしたが、クラウドファンディング開始からわずか5分で100万元(約2,010万円)の受注を得るほどの人気になりました。最終的には14日間で延べ6万9,000人がオーダー、8月20日から中国国内で出荷が始まっています。

  • シャオミのクラウドファンディングでも大ヒット製品となった

Mijia眼鏡相機で撮影した写真や動画はスマートフォンに自動転送され、アプリで簡単な編集も可能です。自動的にショートビデオを作ってくれるなど、SNS向きの機能も搭載されています。Google Glassの印象が強いために「メガネ型デバイスは何でもできるべき」という印象があるでしょうが、実はシャッターチャンスを逃さないデジタルカメラこそ最適な機能なのかもしれません。シャオミは日本でも続々とIoT機器を出していますから、このMijia眼鏡相機もぜひ発売してほしいものです。

  • 撮影した写真や動画は手軽に編集できる