スマートフォンから操作できるスマート家電が増えていますが、海外では冷蔵庫のスマート化も進んでいます。サムスンの「Family Hub」は冷蔵庫の扉にタッチパネル式のディスプレイを搭載し、大型タブレットのように使うこともできるのです。庫内にカメラもあるのでドアを開けずに中の確認も可能。外出先からスマートフォンを使って庫内を見て足りない食材を確認する、といったこともできます。

  • サムスンのスマート冷蔵庫「Family Hub」

このようなスマート冷蔵庫は他の大手家電メーカーからも出ており、未来の冷蔵庫と言えるかもしれません。しかし「冷却できる貯蔵庫」という、冷蔵庫が誕生したころからその形状は大きく変わっていません。ところが食品を保管するだけではなく、食材を使いやすくする、そんな新しい概念の冷蔵庫が生まれようとしています。

  • 未来の冷蔵庫は本棚のようなモジュラー式になる

ヨーロッパの大手家電メーカー、Electroluxの「GRO」は、キッチンのあり方を大きく変えるコンセプトを提示しています。キッチンの壁を見ると本棚のように長方形のユニットが多数組み合わせて並べてあります。よく見ると野菜などが見えますが、このユニット1つ1つが冷蔵庫なのです。

  • それぞれがユニット式の冷蔵庫。こちらには牛乳やヨーグルトを保管

野菜の保管も今までの冷蔵庫のように野菜室に詰め込むのではなく、買ってきた野菜を並べるように保管します。まるで野菜のギャラリーを見ているような気分になれるわけです。

  • 野菜を見せるように保管できる

またすべてが冷蔵庫ではなく、棚なども組み合わせることができます。キッチンを料理する空間としてだけではなく、時には気分転換する場所にもしてくれそうです。

  • パスタの保管庫や食器や本を並べられる棚も同じサイズのユニットになっている

なぜ冷蔵庫をこのような形にしたのかというと、それは現在自宅にどのような食材があるか可視化するため。冷蔵庫を開けてから料理を決めるのではなく、今ある材料を日々確認しながら食事のメニューを考えられるわけです。そのため冷蔵・冷凍食品だけではなく、お米、小麦、パスタといった他の食材も同じように保管できるようにしているのです。今のキッチンでは冷蔵庫に入らないものは別の場所に保管していますよね。

  • ピクルスなどカラフルな発酵食品も、ガラスドアを通して残量が見える

Electroluxによると現代の食生活は牛肉や小麦など、数種類の食材で大半を占めているとのこと。さらに肉の摂取量が非常に多いとのことです。これは生態系に悪影響を与えますし、食事そのものを不健康なものにしてしまいます。また今の冷蔵庫は買ったまま食材を放置してしまうこともあり、フードロスにつながります。GROのこの見える冷蔵庫なら人々に「肉よりも野菜をより多くとろう」という意識を育むこともできるのです。

  • GROはシンクも含めた総合キッチンシステム。調味料はこちらに保管

とはいえついつい食事は楽をしたくなるもの。そこでGROは「GROコーチ」というAIサポートを用意しています。これはシンク側にタッチ式ディスプレイが埋め込まれており、日々の食事を記録するとともに、どんな食事をとればいいかを画面でアドバイスしてくれるのです。また自分がどれだけ「持続可能な食事をとったか」をスコアにもしてくれるとのこと。このGROコーチはスマートフォンやタブレットでも利用できるでしょうから、自分の部屋やリビングでくつろいでいるときでも「お昼はこんな食事にしたらどう?」といったアドバイスを受けることもできそうです。

  • 日々の食事を記録、食事のサステナビリティーポイントを算出してくれる

GROのシンク側にはガラス容器の燻製機や、豆などを栽培するコーナー、海藻を育てる水槽、生ごみを処理なども備えられています。食事を作ることだけではなく食材を自分で作るという楽しみも提供してくれます。週末はキッチンに籠って健康や食事のことを調べたり、スパイスの組み合わせを考える、なんて生活を送る人も増えるでしょう。

  • 燻製を作ったり若芽を育てることも可能だ

GROはコンセプトの提示の段階であり、すぐに製品化されるものではありません。また将来製品化されたとしても広いキッチンが必要となりますから、このままの形での実用性は難しそうです。しかしGROの「サステナビリティなキッチン」は、書斎やリビングも兼ねた空間にもなるでしょう。つまり自宅の家のレイアウトや間取りそのものを変えるものになるかもしれないのです。そして常に食材に囲まれるようになれば、小腹が減ったらポテトチップスではなく燻製やセロリを自然にかじる、という健康的な生活を送ることができるようになるでしょうね。

  • キッチン空間を居住スペースと共存させるものになるかも