スマートフォンで映画を見ているときなど、もっと大きく迫力ある画面サイズで見てみたいと思うことも多いのではないでしょうか。TCLが発売予定のウェアラブルデバイス「NXTWEAR AIR」なら、めがねをかけるだけで動画や映画を140インチの大きなサイズで手軽に楽しむことができます。
TCLは次世代のウェアラブルデバイスに「NEXT」と「WEAR」を組み合わせた造語「NXTWEAR」という製品名をつけています。NXTWEAR AIRは「AIR」の名の通り軽さが特徴の製品で、重さは75g。見た目は普通の眼鏡やサングラスに見えますが、レンズ部分の内側には1080p対応のマイクロLEDディスプレイが内蔵されているのです。投影サイズは4メートル先に140インチの画面を表示可能。NEXTWEAR AIRのめがねの「つる」の先にはUSBケーブルがあり、DisplayPort対応のスマートフォン、タブレット、PCなどを接続して画面を投影できます。
TCLは2021年に初代モデルとして「NXTWEAR G」を発売しましたが130gと重く、価格も680ドルと高めでした。NXTWEAR AIRは半分近くに軽量化され、着け心地が向上、価格はまだ未定ですがより安価での提供が期待されます。もしも3万円程度で入手できれば、普段使いできるスマートフォンのアクセサリとして購入する人は多いのではないでしょうか。
NXTWEAR AIRははめがねをかけるだけで140インチの大画面を利用できるので、動画視聴やゲームといったエンターテイメント用途はもちろん、ビデオ会議など仕事にも活用できるでしょう。VRグラス無しでもメタバースを利用できる「cluster」といったサービスが最近話題ですが、NXTWEAR AIRをかけることで高い没入感を得られそうです。そしてこれらの大画面体験を外出中や電車の中など移動中でも得られるわけです。
また自宅でも大型TVを各部屋に設置する必要が無くなります。リビングルームでは100インチの大型TVでNetflixのドラマを楽しみ、眠くなったらベッドルームに移動してNXTWEAR AIRをかけてドラマの続きを見る、なんてこともできるわけです。一人暮らしの狭い部屋なら設置できるTVの大きさには限界がありますが、NXTWEAR AIRならどんな狭い部屋でも利用できます。
個人が購入して利用するだけではなく、飛行機の機内や新幹線の車内などでNXTWEAR AIRをレンタルするサービスも面白そうです。自分のスマートフォンだけではなく機内エンタメシステムにも導入すれば、飛行機内の狭い空間を意識させない体験を乗客に提供できそうです。
TCLはTVやディスプレイメーカーとしても業界大手であり、次世代の新しいディスプレイを次々と開発しています。折りたたみ式ディスプレイもサムスンと同時期に開発に着手していますし、巻取り式のローラブルディスプレイではLGと製品化を競い合っています。ディスプレイのギミックだけではなく、TVで培った高画質化技術をスマートフォン向けとした「NXTVISION」も開発するなどモバイル向け、小型ディスプレイでトップクラスの技術をTCLは有しているのです。
NXTWEAR AIRはスマートフォン以外の小型デバイスに高性能なディスプレイを搭載するという新しいカテゴリの製品です。Googleが以前販売した「Google Glass」は640x360ピクセルの高精細な表示をして、スマートフォンやPC操作をめがねを通して行うことができましたが、価格の高さや操作性などから普及に至っていません。一方シャオミやOPPOは主に通知を表示できるスマートグラスを出していますが、こちらはより低解像度、色表現も数色程度です。これらのウェアラブルデバイスと比較すると、NXTWEAR AIRは「いつでもどこでも誰にでも使える大画面デバイス」という、ユーザーニーズが比較的高い製品と言えるでしょう。
AirPodsに代表される超小型のヘッドホン、通称「TWS」を誰もが使うようになったように、数年もすればNXTWEAR AIRのような「アイウェア」としてのめがね型デバイスも多くの人が使うようになっているかもしれません。アイウェア型デバイスがあればスマートフォンはポケットに入れたまま情報収集やコンテンツ視聴も可能になります。スマートウォッチもファッションブランドとコラボした製品が増えていますが、アイウェア型デバイスもいずれファッション製品としてブランド品化が進むでしょう。これからの進化が楽しみです。