2021年9月24日から全世界でiPhone 13シリーズの販売が始まりました。大きな目玉は動画でもボケを自在に操ることのできる「シネマティックモード」で、まるで映画のようなムービーを手軽に撮影することができます。スマートフォン各社はカメラ性能の向上を競い合っていますが、Appleは動画機能で他社を大きくリードしようとしているわけです。
一方シャオミはiPhone 13の発表日翌日、9月15日に「Xiaomi 11T」シリーズ2機種を発表しました。シャオミのフラッグシップスマートフォンとなるこれらのモデル、実はiPhone 13を意識したかのような特徴を持っています。Xiaomi 11Tは日本でも発売予定で大きな期待が寄せられています。
Xiaomi 11Tの最大の特徴は動画撮影機能の強化。「Cinemagic」というキャッチフレーズがXiaomi 11Tの製品紹介に使われています。シャオミのカメラは業界初の1億800万画素を採用するなどすでに定評のある性能を持っていますが、ついに動画機能にも力を入れ始めたのです。
Xiaomi 11Tはチップセット別に2つのモデルがあります。クアルコムのSnapdragon 888+を搭載したXiaomi 11T Proが649ユーロ(約8万4,000円)から、メディアテックのDimensity 1200を搭載したXiaomi 11Tが499ユーロ(約6万5,000円)から。どちらもチップセット以外の性能は同等で、同じカメラを搭載します。今回シャオミが2つのモデルを作り分けたのは昨今の半導体不足の影響があると見られています。そういった状況下で、他メーカーのように「Pro」と「無印」モデルでカメラ性能を変えなかったのは、最高のシネマ体験を提供したいとシャオミが考えているからでしょう。
スマートフォンの動画性能は各メーカーも力を入れているところですが、とはいえ製品紹介では写真の画質にフォーカスを当てたものが大半です。シャオミはもはや写真が綺麗に撮影できることは当たり前とばかりに、Xiaomi 11Tの機能紹介の大半を動画にしています。
Xiaomi 11Tの動画性能は背景だけをズームできるマジックズーム、動画撮影中に一部の被写体を停止させるタイムフリーズ、テレマクロレンズを使った近距離動画撮影、さらに撮影中にマイクの向きを特定の被写体に合わせる機能など様々。iPhone 13のようなシネマティックモードは搭載していないものの、他のスマートフォンには無い機能が盛りだくさんです。
動画を撮影していると電池の減りが心配になりますが、Xiaomi 11Tは10分の充電で7時間の動画再生、11時間の通話、5時間のナビゲーション、2時間の動画撮影(1080p)が可能。わずかな隙間時間でも十分な充電ができることをアピールしています。
シャオミはなぜXiaomi 11Tでここまで動画撮影を強化したのかと言うと、もはやスチールカメラ性能だけでは他社との差別化が難しいという背景があります。シャオミは2年前の2019年に1億800万画素カメラを世界で初めてスマートフォンに搭載しました。その時は世界中が驚いたものです。しかしそれから2年が経ち、もはや1億画素カメラは珍しいものではなくなりました。また1億800万画素カメラの採用はサムスンやモトローラなど一部のメーカーに留まっているものの、他のメーカーは5,000万画素カメラを2つ載せたOPPOの「Find X3 Pro」のように、単一カメラではなく複数カメラの性能を高める方向に動いています。
シャオミは2021年第2四半期にAppleを抜きスマートフォン世界シェア2位になりました。第2四半期はAppleの新製品発表前で毎年Appleの出荷数が減少するとはいえ、1位サムスンとの差も大きくはなく、シャオミの世界シェア1位が現実になる日も遠くないと思わせます。とはいえ今までと同じスマートフォンの開発方針では他社との差別化は難しく、カメラの画素数競争ではなく「総合性能」でいずれ他のメーカーに抜かれてしまうかもしれません。
今やYouTubeにとどまらず、TikTokなどのショートムービーも大きな人気です。またスマートフォンのカメラもすでに各社の上位モデルなら美しい写真を撮ることができます。Appleがシネマティックモードを搭載したのも、スマートフォンのカメラがこれからは動画機能を重視すると睨んでのことでしょう。シャオミもそんな「ポスト・静止画」の時代に向けて、他社に先駆けて動画機能を充実させることで「ムービーといえばシャオミ」というイメージを消費者に印象付けたいのでしょう。そうすることでAppleを抜くどころか、サムスンを抜き去り堂々たる世界シェア1位メーカーになろうと考えているに違いありません。