サムスンが海外で発売した縦に折りたたむことのできるスマートフォン「Galaxy Z Flip3 5G」が注目を集めています。アメリカでの価格は1,000ドルを切る999ドル(約11万円)、韓国では125万4,000ウォン(約11万8,000円)と、10万円ちょっとの価格で購入できるからです。Galaxy Z Flip3 5Gは閉じた状態では86.4 x 72.2 x 最薄部15.9mmというほぼ正方形のデザインながら、開くと6.7インチの大型ディスプレイが現れます。コンパクトなボディーながらも大きいディスプレイを搭載しているのです。
スペックが同じではないので直接の比較はできないものの、日本人に人気のiPhoneの価格を見ると「iPhone 12 Pro」は11万7,480円から、「iPhone 12」は9万4,800円から。Galaxy Z Flip3 5Gの価格はほぼ同じレベルで「折りたたみスマートフォンは高いもの」あるいは「特別なもの」という概念を打ち砕いてくれます。それに12万円のスマートフォンは単純に2年間使い続けるなら毎月5,000円の負担で買えます。Galaxy Z Flip3 5Gは折りたたみスマートフォンをふつうのスマートフォンと同じ感覚で買える製品にしようとしているのです。
スマートフォンのサイズは年々大型化しています。2011年に初代のiPhoneが登場したときは3.5インチのディスプレイですら大きく見やすくタッチしやすい、と言われたものです。しかし今ではスマートフォンのディスプレイサイズは6インチ以上が主流となりました。片手で持てるコンパクトなスマートフォンを求める消費者も一定数いるでしょうが、動画を見ることが当たり前となり、SNSでは写真のやりとりが一般化した今、多くの人が大画面スマートフォンを求めているのが世界的な流れでしょう。
とはいえ今のスマートフォンのディスプレイサイズはそろそろ片手で持てる限界に近づいています。長方形で平らな板の形状では、これ以上ディスプレイを大型化することは難しく、しかもカバーをつけるとさらにサイズが大きくなってしまいます。
今から20年ほど前も、同じような問題にガラケーは直面しました。ストレート形状で上半分にディスプレイ、下半部に10キーの形状では、ディスプレイサイズを大型化するのが難しかったのです。そこで日本メーカーは率先して折りたたみ型のケータイを開発し、ディスプレイサイズの大型化に成功するとともに本体を畳んでコンパクトサイズで持ち運ぶことができるようにしました。2000年代初頭は海外で日本メーカーの折りたたみケータイが人気になった時代もあったほどです。
それから約20年後の今、今度はスマートフォンが畳める形になって折りたたみ方式が戻ってきました。縦折式のスマートフォンはサムスンやモトローラが発売しており、中国メーカーも開発中と言われています。しかしこれまでの製品は価格が高く、サムスンが昨年発売した「Galaxy Z Flip 5G」のKDDIモデルは18万5,835円でした。20万円弱のスマートフォンに手が出せる人は多くなかったに違いありません。
Galaxy Z Flip3 5Gは日本での発売は未定で、日本でいくらになるかもわかりません。しかし、もしも海外と同じ12万円程度で発売してくれば、「スマホも折りたたみがいい」と思う人も何とか手が出せ、興味がわくのではないでしょうか。
韓国では、2020年2月に最初の縦折りスマートフォン「Galaxy Z Flip」(5G非対応、4Gモデル)が約15万1,000円で販売されましたが、2か月間の販売台数は約37万台だったというデータがあります。単純計算で1か月あたり約14万台です。一方、今回のGalaxy Z Flip3 5Gは、予約だけでも約46万台に達していると推測されます(数値は韓国のニュースから筆者が推測)。価格が下がったことに加え、折りたためるデザインはスタイリッシュ・ファッショナブルということで発売前から人気がかなり高まっています。
サムスンも価格を下げるだけではなく豊富なカラバリを用意してGalaxy Z Flip3 5Gを本格的に拡販しようとしています。Galaxy Z Flip3 5Gのカラバリはクリーム、グリーン、ラベンダー、ファントムブラック、グレイ、ピンク、ホワイトの7色もあります。なおこのうちグレイ、ピンク、ホワイトはサムスンオンラインストア限定です。
それに加えてこれまでのサムスンの折りたたみスマートフォンがコラボしてきた、ニューヨーク発のファッションブランド「Thom Browne」とコラボしたモデルも発売されます。
韓国ではゴルフウェアのPXGとコラボしたモデルも登場、発表後、瞬時に予約上限数に達したとのこと。今後はGalaxy Z Flip3 5Gのブランドコラボもさらに進むかもしれません。
本体バリエーションを増やすだけではなく、本体に取り付けるカバーも様々なタイプのものが販売されます。これまでの折りたたみスマートフォンはカバーを取り付けにくいこともあり、サムスンはカバーの展開はそれほど積極的ではありませんでした。しかしGalaxy Z Flip3 5Gは本体色を選ぶだけではなく、バリエーション豊かなカバーをつけて楽しむことを提唱しているのです。サードパーティー製はもちろんのこと、ブランドとコラボしたカバーも出てくるでしょう。
これまで出てきた折りたたみスマートフォンは高嶺の花のような存在で、興味を持つ人も少なかったかもしれません。「誰もが買える折りたたみスマホ」になったGalaxy Z Flip3 5G、日本での発売時期や価格が気になるところです。