iPhone 12から導入されたMagSafeはマグネットを利用することで本体とアクサセリ類をぴたりと貼り付けられます。たとえばワイヤレス充電台を接触させてケーブルいらずの充電を楽に行うといったことができます。磁石で取り付けられるカードケースや、移動中でも充電できるマグネット貼り付け型のモバイルバッテリーが出てくるなど、MagSafeはiPhoneをさらに便利にしてくれるのです。
MagSafeを使ったアクセサリ類はこれからもいろいろなものが出てくるでしょうが、スマートフォンメーカーのBlack Sharkからちょっと変わった製品「Black Shark Cooling Back Clip 2 Pro in MagSafe version」が出てきました。見た目は円筒形、内部に回転するファンのあるMagSafeアクセサリです。いったい何に使うのでしょうか?
この製品はiPhone 12シリーズの背面に装着して、iPhone本体を冷やしてくれる空冷ファンなのです。本体サイズは62mm径、22mm高の円筒形で重さは73g。iPhoneの裏にMagSafeで貼り付けても簡単に外れることはないでしょう。装着した姿はiPhoneの裏に取っ手がついたような形状になりますが、特定の用途にiPhoneを使う人には最強のツールとなってくれます。
身近なところではポケモンGOを使っている人がよく体験するゲーム中の本体の発熱対策に使えます。CPU性能を極限まで使うアプリを使用するとスマートフォン本体内部でCPUが発熱し、その放熱処理が間に合わずアプリが落ちてしまうことがあります。そうなると本体が冷えるまでアプリを使うことができません。しかし空冷ファンを組み込めば強制的に本体を冷やしてくれるので、CPUに高負荷をかけるゲームをプレイしていても本体が熱暴走するのを防いでくれるわけです。Black Sharkのテストによるとファン無しでは42度まで発熱するのが、ファンをつけると22度まで冷却。温度上昇を抑え最大約20度も温度を引き下げてくれるとのことです。
iPhoneとの接合部分にはシリカゲルパッドを採用しておりiPhoneに密着、効率的に冷却してくれるとのこと。価格は未定ですが夏のポケモンGOには必須のアクセサリとなるでしょう。他にもビデオ配信を行う場合などiPhoneが熱くなりやすい条件下で使うと効果的です。なおファンを回すためには別途USBケーブルを接続し、モバイルバッテリーなどから給電する必要があります。
しかしiPhoneのライバルメーカーともいえるBlack Sharkが、どうしてiPhone向けの空冷ファンを発売したのでしょうか。Black Sharkはゲーミングスマートフォンに特化したメーカーで、日本でも最新モデル「Black Shark 4」が販売されています。ゲーミングスマートフォンは本体の熱暴走によるゲームアプリの動作不良や強制終了を防ぐために、本体内には強力な冷却システムが内蔵されていますが、それだけではなくクリップ式で外付けできる空冷ファンを用意することで、スマートフォンで高度なゲームをプレイするユーザーに快適な環境を提供しているのです。
Black Sharkの最新の空冷ファン「Black Shark Cooling Back Clip 2 Pro」は7枚のペラを持つファンを合金ヒートシンク内に収め、スマートフォンとの接着面には「電流を流すと温度が冷える」ペルチェ素子を採用した製品です。25.4度の環境でこのファンを使うと最大24度の温度低下効果があるとのこと。これならどんなに高度なゲームをプレイしても本体のオーバーヒートを抑えることができるでしょう。
Black Sharkはこの空冷ファンを1年以上前から製品化しており、すでに数モデルを送り出しています。モバイルゲームをプレイするのは他のスマートフォンユーザーも多いことからこのCooling Back Clip 2 Proはクリップ式でBlack Shark以外のスマートフォンにも取り付けできます。そしてこの空冷ノウハウをiPhone向けに展開することでiPhoneでゲームをする多くのユーザーにファンを買ってもらおうと、MagSafe版も開発したということなのでしょう。
空冷ファンを販売しているのはBlack Sharkだけではありません。NubiaのRed Magic 6というゲーミングスマートフォンの空冷ファン「REDMAGIC 6 Pro Ice Dock」は、なんと2つのファンを搭載した「デュアルファン冷却システム」。ちなみにRed Magic 6も日本で発売されているゲーミングスマートフォンです。Nubiaのスマートフォンは本体内にも回転する小型ファンを内蔵していますが、Black Shark同様に外付けの空冷ファンも販売しているのです。
Nubiaのデュアルファンの冷却効果はものすごく、わずか3分で26度からマイナス2度まで、28度も温度を下げることができるとのこと。そこまで本体が発熱してしまうアプリがあるのかはわかりませんが、ゲーミングスマートフォン業界では「どれだけ冷やせるか」の競争が進んでいるようです。
Black SharkやNubiaに比べると、日本でも知られている大手メーカーであるASUSのゲーミングスマートフォン「ROG Phone 5」用の空冷ファン、「AeroActive Cooler 5」はユーザーの使い勝手を考えた設計になっています。「何度まで冷やせる」という温度低下競争に参戦せず、十分な冷却効果を提供し、さらにファンにゲームボタンをつけゲームプレイをしやすくしたり、スタンドを内蔵し机の上に置いて動画を楽に視聴できるなどのユーザー体験を向上させています。このあたりの設計はさすがASUS、といったところでしょう。
このようにゲーミングスマートフォンの世界では密かに「外付けファンで冷やす」ことが当たり前になっているのです。今後もスマートフォンの性能は向上し、それに呼応するようにCPUに高負荷をかけるアプリも次々と出てくるでしょう。今やスマートフォンと一緒にモバイルバッテリーを持ち運ぶのが当たり前になっていますが、数年後は背面に備え付ける空冷ファンが必需品の時代になっているかもしれません。