世界最大の携帯電話マーケットである中国。果たしてどのような機種に人気が集まっているのだろうか? 家電量販店の販売結果を見ると、都市ごとに嗜好の分かれる面白い結果となっている。

中国では各メーカーが様々な端末を販売している(上海の地下鉄駅構内のLG電子広告)

広大な中国、各都市で売れている携帯はこれだ!

携帯電話の利用者数が6億人を超えた中国では、年間販売台数も1億9,000万台(2007年)に達するなど世界中のメーカーが注目する市場になっている。メーカー別ではNokiaが圧倒的な強さを誇っており、2位のSamsung以下がシェアを拡大しようと激しい販売競争を行っている。

では、中国ではどのような機種が売れているのだろうか? ローエンド機種ばかりなのだろうか? また地域によって消費者の好みの差はあるのだろうか? 中国のメディアによると、中国最大手の家電チェーン店「国美電器」が中国10都市の今年の機種別販売統計を出している。まずは、その中の5都市の販売台数上位5機種を見てみよう(上海と広州のみ10機種)。

北京
1位 Motorola A1200
2位 Nokia 6120C
3位 Nokia 6500C
4位 Samsung SGH-F278
5位 Motorola RAZR2 V8
天津
1位 Nokia N95
2位 Nokia N81
3位 Nokia N70
4位 Nokia N85
5位 Nokia 6500c
杭州
1位 Samsung SGH-C188
2位 Samsung SGH-F258
3位 Samsung SGH-L708E
4位 Samsung SGH-J708
5位 Nokia 1208
上海
1位 Nokia N81
2位 Nokia 5610XM
3位 Nokia N95
4位 Sharp SH9010c
5位 Nokia 6300
6位 Nokia 7310c
7位 Nokia 6500c
8位 Nokia 5000
9位 Nokia N78
10位 Nokia 5310XM
広州
1位 Samsung SGH-J808E
2位 Nokia 6120c
3位 Sony Ericsson W595c
4位 Motorola A1600
5位 Sharp SH9010c
6位 Philips 9@9u
7位 Nokia N95 8GB
8位 Motorola ROKR E6
9位 Lenovo P80
10位 Samsung SGH-L708E

都市ごとに消費者の嗜好は異なる

中国内のシェア1位のNokiaだが、機種別に見てみると都市によっては他メーカーの後塵を拝していることもあるのが興味深い。たとえば北京を見てみると、MotorolaのA1200が一番の売れ筋だ。これはPDAタイプのフリップ&手書き端末で、Motorolaが中国でシェア1位だった時代からの人気機種の流れをくんだ製品だ。他の機種も"無難なライン"が並んでおり、北京の消費者は最新機種やユニークな製品よりも質実剛健な製品を求めるようだ。

これが北京のすぐ隣の天津になるとシェア上位がすべてNokiaとなる。ハイエンドスマートフォンも入っており、北京よりも平均所得が高くNokiaの新機種への嗜好が強いようである。一方、杭州はなんとSamsung天下。実はシェア上位の機種はいずれもエントリーモデルであり、杭州では安くて丈夫で基本機能を備えた端末に人気が集まっているようだ。

さて中国で最も資本主義化の進む上海と広州でも嗜好の差が目立っている。上海はトップ10のうち9機種がNokiaであるのに対し、広州ではNokia、Samsung、Motorola、Sony Ericsson、Philips、Lenovoと広いメーカーが満遍なく売れている。広州は香港に近いことから違法の輸入携帯の数も多く、広州市民は普段から多くのメーカーの製品に触れる機会が多いということなのかもしれない。

そして特筆すべきはシャープの中国向け製品が上海と広州でトップ5に入っていることである。所得の高い大都市であれば、日本のハイエンド端末も十分勝負できるということを実証したと言えるかもしれない。ただしNokiaの売れ筋を見ればわかるように、Nokiaだけでも端末の種類は10種類以上に上る。シャープが今後も売り上げをキープするには続々と登場する他社の新製品に負けないよう、定期的な新製品の投入と端末のバリエーションを広げる必要がありそうである。年間数機種だけでは消費者に飽きられてしまう可能性もあるからだ。

携帯電話の売れ筋を見るだけでも、中国が広大でマーケットの特色が都市ごとに異なることがよくわかるだろう。もしも将来、日本メーカーが得意とする高機能端末を武器に中国に再進出するならば、特定メーカーにこだわらず所得の高い地域(例えば今回の統計結果では広州)から入っていくべきかもしれない――といったこともこの結果は示していそうだ。日本の国土の約26倍もの中国市場を攻めるには、都市ごとの特徴を徹底的に把握することが必要なのだ。