例年2月は各スマートフォンメーカーから2021年のフラッグシップモデルが発表されます。サムスンは1月に「Galaxy S21」シリーズを前倒しして発表、ファーウェイは2月22日に折りたたみスマートフォン「Mate X2」を発表しました。またシャオミは「Mi 11」を中国で12月に、グローバルでは2月8日に発表。今年も楽しみなスマートフォンが続々と登場しています。
2月に新製品が出てくるのは、世界最大の通信関連イベント「MWC」が開催されるため、それに合わせて各社が製品を準備しているからです。しかし新型コロナウイルスの影響で今年のMWCは例年2月にバルセロナで開催されていた本大会が6月に延期、6月に上海で実施されていたイベントが2月に入れ替わって敢行されています。2月22日から24日までの開催となった「MWC上海」はオンラインイベントが主体となっており、スマートフォンメーカーの華やかなブース展示は影を潜めていました。
しかしそのような状況の中でも、OPPOは新しい技術をMWC上海で発表しています。「エアチャージ」と呼ぶOPPOの新技術は、スマートフォンをワイヤレスで充電できる技術です。しかもスマートフォンと充電台の距離は10数cm離すことができます。ワイヤレス充電というと充電台の上にスマートフォンを置く必要があり、ワイヤレスと言いながらも実際は充電台に接触させる必要がありました。ですが、OPPOの新技術では、スマートフォンを手に持って使いながら充電することが可能になります。
OPPOはこのエアチャージ技術を同社が開発中の巻き取り式ディスプレイ搭載スマートフォン「OPPO 2021」に搭載しているとのこと。OPPO 2021は6.7インチディスプレイの本体を左右に引っ張ると、モーター駆動で本体内に巻き取られていたディスプレイが延び、7.4インチのタブレット形状になるスマートフォンです。
OPPO 2021では、例えば机の上や壁にエアチャージの充電台を埋め込んでおき、スマートフォンを使いながら充電することが可能になります。OPPOによると約10cmの距離で7.5Wの充電が可能とのこと。巻き取り式スマートフォンは充電ケーブルを繋ぎながら使うと、ディスプレイの巻き取りの時にケーブルが触れて巻き取りに問題が生じるなんてこともあるかもしれません。新しいディスプレイ形状のスマートフォンには、充電スタイルも従来とは異なる完全ワイヤレスにする必要があったのでしょう。
巻き取り式ディスプレイのスマートフォンはOPPO以外にもLGやTCLが開発中です。一方シャオミも新しいコンセプトのディスプレイを採用したスマートフォンを開発しています。それは「Quad-curved Waterfall Display」を搭載する、4面ディスプレイのスマートフォンです。
サムスンやファーウェイなどのスマートフォンは、左右をカーブさせたディスプレイを搭載したモデルがあります。ファーウェイはそのカーブした側面をダブルタップするとボリュームボタンが画面上にソフトキーとして出てくる機能も持たせています。側面をカーブさせることで、ボタンの代わりに使うことができるのです。
シャオミはそのカーブディスプレイを上下にも広げ、スマートフォンの四方側面をサブディスプレイ的に表示できるようにしてしまいました。これによりファーウェイのようにボタンをディスプレイ上にソフトキーとして配置することが可能になります。またメッセージの通知なども今のスマートフォンなら通知画面を開く必要がありますが、4辺がディスプレイならその部分に通知を表示できます。
つまりスマートフォンをポケットに入れていて通知の振動が来たら、スマートフォン側面を見ればメッセージの内容を見られるというわけです。他にもアンテナピクトなどの状態表示も側面に追いやることができます。
これによりスマートフォンのディスプレイ前面を常にコンテンツの表示領域にできるわけです。フロントカメラはディスプレイ下への埋め込み式になる予定で、全画面表示中でも顔認証などを利用できます。
4辺がディスプレイとなると充電端子を備えることはできませんが、ワイヤレス充電で対応させます。そのほかSIMカードはeSIMを使い、ヘッドホン端子は廃止。完全ボタンレス、コネクタレスのスマートフォンとなります。シャオミはすでに数m離れた位置からでも充電できる空間ワイヤレス技術の開発に着手してますが、それはこのような充電端子の無いスマートフォンが将来主流になると考えているからかもしれません。
とはいえ空間ワイヤレス技術の実現にはまだかなり時間がかかるでしょう。一方、OPPOの技術なら既存のワイヤレス充電の延長となるため、実現は早いと思われます。巻き取り式スマートフォンの名前が「OPPO 2021」ということから、OPPOはこのスマートフォンを年末までに出そうとしているかもしれません。ということは10cm離れて充電できるエアチャージも、年内に商用化されそうです。
なお完全ボタンレススマートフォンは、すでに中国のVivoが2020年頭に「Vivo APEX 2020」というコンセプトモデルを発表しています。左右のディスプレイは裏面近くまでに回り込み、やはりその側面のディスプレイ部分をタッチして操作ボタンを呼び出します。もちろん充電はワイヤレス、完全ボタンレスなスマートフォンです。
スマートフォンと充電台を離してワイヤレス充電できる技術が商用化されれば、スマートフォンの形も今とはまた少し違ったものになっていくでしょう。これからは充電技術がスマートフォンの進化を大きく変える要素になりそうです。