日本でも人気のiPhone 12は売り切れが続出しています。そんなiPhone 12を海外ではタダでもらう方法があるというのです。しかもスマートフォンを買うとiPhoneがもらえるというお得なキャンペーンです。
中国で中古スマートフォンの買取・販売を行う「回収宝」は、ファーウェイの最新スマートフォン「Mate 40 Pro」を買うと、iPhone 12(64GB)を1台無料進呈する新品販売キャンペーンを11月26日から行います。Mate 40 Proの価格は6,499元(約10万2,600円)。iPhone 12は6,299元(約9万9,400円)。両者の値段はほぼ同じですから、「1台買ったらもう1台無料」というようなものでしょう。
この手のキャンペーンは「売れないものを売るために、お得なおまけをつける」ために行われるのが一般的です。しかし中国ではMate 40 Proの生産が追いついていないと言われています。アメリカの制裁を受け、Mate 40 Proが搭載するチップセット「Kirin 9000」の生産が新規に行えないからです。
実際にファーウェイの中国のオフィシャルストア「Vmall」を見ると、Mate 40 Proは常時販売されておらず、日時を絞って注文を受け付けています。不人気な製品がこのような販売手法を採ることは無く、生産数よりはるかに多い購入希望者がいるということを示しています。
回収宝のこのキャンペーンは、自社の本来のサービスである中古スマートフォン売買の利用者数を増やすために実施しているのだと思われます。新しいスマートフォンを買った人は、今まで使っていたスマートフォンを売るでしょう。またもう1台もらえれば、それを家族や友人に転売し(無償で渡すのはさすがにしないでしょうから)、その家族や友人が自分の使っていた端末を売りに出すはずです。
今回のキャンペーンは、中国でも最も注目されている2つの製品を絡めたことで、中国の消費者に広くアピールすることができたはずです。その広告効果を考えただけでもiPhoneを無料で提供しても十分元が取れると思われます。
このようにファーウェイは中国で絶大な人気を誇っています。そのファーウェイがスマートフォンの販売数を大幅に縮小するという決断を下しました。それは傘下のHonor(オーナー)ブランドの売却です。Honorの名前を付けたスマートフォンは、日本でも数年前に数機種がファーウェイの低価格モデルという位置づけで販売されたことがあります。
しかし中国ではファーウェイとは独立した、全く別のブランドとして販売されています。しかもハイエンドモデルも展開しており、「格安スマホ」ではなく独立したメーカーのように多数の製品を出しているのです。ファーウェイの店舗ではHonorは販売されていませんし、Honorのブランドストアもあります。
ファーウェイのスマートフォンは、2020年第2四半期に世界1位となりました。特に中国ではシェア46%と、ほぼ過半数に達しています。同率2位のVivoとOPPOは16%ですから、その差は約3倍です。
ファーウェイのスマートフォン出荷台数のうち、Honorブランドは1/4程度と見られています。このHonorブランドがファーウェイから分離され、完全独立した企業へと移管されるのです。これはアメリカの制裁によってスマートフォン生産に影響を受けたファーウェイが、今後縮小せざるを得ないスマートフォンビジネスの整理・合理化に入った一貫の動きと言えます。
ファーウェイからHonorが分離されると、ファーウェイのシェアは46%から35%程度になり、Vivo、OPPOとの差は2倍程度まで縮まります。今後ファーウェイのスマートフォン生産数はチップセット生産の影響を受けて縮小する可能性が高く、1位と2位の差はさらに縮まっていくでしょう。「中国1位」の座も危うくなるのです。
一方Honorのシェアは12%程度となり、4位のシャオミとほぼ並びます。毎月数機種の新製品を展開しているシャオミとやりあうためには、Honorも今以上に新製品の展開を進めていかなくてはなりません。
ファーウェイのこの苦境はアメリカ政府が招いたものです。そのアメリカは大統領選挙の開票結果で混乱が続いており、1月の新大領領就任までは他国のことにかまっている余裕はないでしょう。日本でもスマートフォンを展開するファーウェイですが、まだ相当な時間同社を取り巻く環境は落ち着かないものになりそうです。