スマートフォンの世界では「閉じてスマホ、開けばタブレット」になる折りたたみスマホが次々と登場し話題になっています。日本でもKDDIから「Galaxy Z Fold2」がまもなく発売されます。折りたたみスマートフォンは開けば複数のアプリを同時に使ったり、YouTubeの動画を大きい画面で見ることができ、移動中は畳めばポケットにすっぽり納まるコンパクトなサイズになります。折りたたみスマートフォンはこれから5Gが始まり動画コンテンツを見るのが日常的になる時代に最適なデバイスと言えるでしょう。

  • Galaxy Z Fold2。1台で2役にも3役にもなる5G時代に向いたスマホだ

折りたたみスマートフォンがようやく今になって出てきたのは、曲げられるディスプレイ=「フォルダブルディスプレイ」がようやく実用化されたからです。そして今年になって今度はノートPCもフォルダブルディスプレイを搭載したモデルが出てきました。

レノボが9月に発表した「ThinkPad X1 Fold」は日本でも発売される予定の折りたたみ型のノートPCです。ディスプレイは13.3インチ、キーボードはありませんがBluetoothキーボードを使って文字入力もできます。また本体を「L」の字型に折りたたむと、上側にWindowsの画面を表示し、下側にソフトキーボードを表示して文字入力するといった使い方もできます。もちろん上下、あるいは左右に開いて雑誌を見るようなスタイルで、それぞれに別々のアプリを表示することもできます。

  • レノボのThinkPad X1 Fold

さらに専用のBluetoothキーボードをL字に折った本体の下側に乗せれば、ノートPCのような形で使うことができるのです。このキーボードはディスプレイを曲げたときに間に挟めばワイヤレスで充電もされるのはちょっと賢い機能。ワイヤレスキーボードが常に充電されるというわけです。

ノートPCのディスプレイを曲げるメリットは、スマートフォン同様に持ち運び時にコンパクトになることでしょう。13インチディスプレイのノートPCを持ち運ぶにはビジネスバッグなどある程度大きい鞄が必要です。しかし半分に折りたたむことができれば大きめのハンドバッグやポーチにも入るでしょうし、その気になればそのまま手に持って持ち運ぶことも苦ではありません。

また本体をL字に開けば狭い机の上でも使えます。カフェやオフィスで十分なスペースがあれば、完全に開いて一般的なノートPCの13インチディスプレイとしても使うことができるわけです。

  • ディスプレイを開いてキーボードを使う

スマートフォンのディスプレイを曲げる技術は古くから各社が開発を行っていました。手のひらサイズのスマートフォンで、さらに大きいディスプレイを使うにはどうしたらいいのか。その一つの回答が折りたたみスマートフォンなのです。

一方、ノートPCのディスプレイは、そもそも曲げる必要があるとは考えられていませんでした。最近のノートPCは十分薄く軽量で、折りたためばカバンに入れることも難しくはありません。仕事などでノートPCを使っている人も、そのディスプレイが折りたためることにメリットを感じられないかもしれません。

しかし最近のノートPCはキーボードが分離する「2in1」タイプが増えています。キーボードを外せばタブレットPCとして片手でも使えますし、移動中に立ったままでも使えます。2in1 PCはノートPCの利用シーンをさらに広げてくれるのです。

2in1 PCはマイクロソフトがSurfaceブランドで市場をけん引しています。そのマイクロソフトが2019年に発表した「Surface Neo」は、9インチディスプレイを2枚左右に配置し畳むことのできるタブレットPCでした。タブレット型とはいえ、Windowsの動くPCの画面が畳めるというスタイルはノートPCの全く新し使い方を生み出そうとしています。

  • WindowsのタブレットPCを畳める形にしたSurface Neo

ThinkPad X1 FoldはSurface Neoの「畳めるPC」の概念をさらに進化させた製品です。2枚のディスプレイを備えるSurface Neoは、完全に開いた時に真ん中にヒンジのラインが見えてしまいます。しかしフォルダブルディスプレイを搭載したThinkPad X1 Foldなら、開けば1枚の大きいディスプレイを使うことができるのです。

現時点では他のメーカーからフォルダブルディスプレイを搭載したノートPCが出てくる動きはありません。しかしノートPCのOEM/ODM生産を請け負うコンパックがレノボと同様のフォルダブルディスプレイディスプレイを搭載したタブレットPCのコンセプトモデル「FlexBook」を発表しています。コンパックは自社ブランドでは製品を販売せず、大手PCメーカーから開発を請け負って製品を製造します。つまりコンパックは折りたたみ型のタブレットPCの需要がこれからあると考えているのでしょう。

  • コンパックのFlexBook

ThinkPad X1 FoldもFlexBookも、L字型に折り畳んだときのソフトウェアキーボードのタッチ感度など、ノートPCとして使うときにどれくらい実用性があるかはまだわかりません。しかしスマートフォンの文字入力もタッチ方式が当たり前になった今、WindowsのノートPCやタブレットPCも画面タッチで文字入力することが普通の日が来るかもしれません。レノボに続く折りたたみノートPCが他社からいつ出てくるか、気になるところです。

  • ディスプレイを折り曲げて片側をキーボードにするスタイルが当たり前になるかもしれない