コスパに優れたスマートフォンを出す中国の家電メーカー、TCLからペン入力に対応したタブレット「TCL 10 TABMAX」がヨーロッパで発売になります。価格は300ユーロ(約3万7,000円)を切る手ごろなレベルに設定されています。
TCLのタブレットはNEXTPAPERと呼ぶ新しいディスプレイを採用しています。ペーパーという名前がついていることからわかるように、電子ペーパーと同じように電子書籍やコミックを読むのに適したディスプレイでもあるのです。NEXTPAPERの最大の特徴はバックライトが不要なこと。つまり消費電力が少なく、ディスプレイの厚みも薄くすることができます。一般的な液晶や有機ELより長時間使うことができるというわけです。
NEXTPAPERのようにバックライトのいらないディスプレイといえば、すでに電子ペーパーが商用化されています。代表的な製品はAmazonのKindleのモノクロモデルでしょう。バックライトが無いため目が疲れにくい特徴がある半面、暗いところでは部屋の明かりを明るくするか、フロントライトでディスプレイを照らさないと文字が読めません。とはいえ価格も安く文字を読むのに適しているため、電子ブックリーダーとして使うなら十分実用的な製品なのです。
電子ペーパーの欠点はモノクロ表示しかできないことでした。しかし2020年7月にPocketBookが8インチのカラー電子ペーパーを搭載した「PocketBook Color Lux」を発売。電子ペーパータブレットもついにカラー表示できる時代がやってきました。
とはいえカラー電子ペーパーは最大4,096色しか表示できないので、色の鮮やかさは液晶や有機ELには劣ります。モノクロのKindleより表示は華やかですが、iPadなど一般的なタブレットと比較すると色表示は大きく劣ります。
TCLのNEXTPAPERは液晶の技術を使っているため、表示できる色はカラー電子ペーパーよりも多くなっています。またカラー電子ペーパーに見られる「くすみ」も感じられません。NEXTPAPERは液晶と同様にRGBの3つの色素を使って色を表現するため、液晶に近い色を出すことができるようです。
TCLによるとNEXTPAPERは動画の再生も可能とのこと。バックライトが無いため液晶ほど明るくコントラストのある表示はできないものの、液晶の代替として十分使い物になるようです。一方、カラー電子ペーパーのPocketbook Color Luxは動画や写真の表示に関して情報はありません。そもそも電子ペーパーで動画を再生することは難しいため、マルチメディア系コンテンツの表示は難しそうです。
それではこのNEXTPAPERを使ったタブレットに市場性はあるのでしょうか? Appleは9月15日に10インチクラスiPadの2020年モデル2機種を発表しましたが、iPad 10.2インチモデルは日本でも税込み4万円を切る手ごろな価格が魅力であり、ペン入力にも対応します。iPad Airのような上位モデルだけではなく、低価格タブレットも市場では十分求められているのです。
IDCの調査によると、2019年のタブレット出荷台数でAppleは1位を守り続け、4,990万台でシェア34.6%でした。2位サムスンの2,170万台と倍以上の差をつけています。それに続くのはファーウェイですが、僅差で追いかけているのがAmazonです。AmazonのKindleは低価格な製品に特化していますが1,300万台も出荷しているのです。
TCLのTCL 10 TABMAXはKindleより価格高いものの、カラー表示ができます。またiPadより若干価格は安く、電池の持ちも優れています。スタイラスペンに対応するため、iPad低価格モデルのライバルにも十分なりうります。すなわちKindle以上、iPad以下という隙間を狙った製品として、市場性は十分にありそうです。
NEXTPAPERが十分実用性のあるディスプレイならば、今後はより小型化してスマートフォンに搭載することもありうるかもしれません。スマートフォンにNEXTPAPERを搭載すれば電池の持ちは大幅に伸びるでしょう。新しいディスプレイ技術でタブレット市場に参入するTCLですが、スマートフォンへの応用展開も是非、進めてほしいものです。