ここ数年、スマートフォンの価格は10万円を超える超ハイスペックモデルと、3-4万円程度で買える低価格機に二分化していく傾向が強く見えます。その動きの中でも高スペックで低価格なモデルを次々と市場に送り出しているシャオミの新製品は世界各国で人気となっています。しかしそのシャオミを上回る勢いで低価格で性能のよい「コスパスマホ」を次々と出しているメーカーがあります。それは中国の大手家電メーカー、TCLです。

TCLは7月28日に日本で2万6,800円(税込み)のスマートフォン「TCL 10 lite」(グローバルでは「TCL 10L」)を発表しました。カメラは4,800万画素を含むクワッド仕上げ、指紋認証センサーやNFCを搭載しておりモバイルペイメントへも対応します。本体の質感も悪くなく、3万円以下の低価格モデルの中でもコスパの高さは群を抜きます。

  • TCLの格安カメラフォン「TCL 10 lite」

日本でTCL 10 liteのライバルとなるのは2万9,800円(税込み)のシャオミ「Redmi Note 9S」やファーウェイの「P40 lite E」(2万7,280円、同)でしょう。スペックを比較すると、Redmi Note 9SとP40 lite EはチップセットがそれぞれSnapdragon 720G、Kiron 710とTCL 10 liteのSnapdragon 665より若干勝っています。一方カメラはP40 lite Eはトリプル、Redmi Note 9Sが4,800万+800万+800万+200万画素、TCL 10 liteは4,800万+800万+200万+200万と1つのカメラ(マクロ)が劣るくらいです。

  • 4つのカメラを横に並べた独特のデザイン。背面は光の当たり具合で複雑な表情を出す

ライトユースなら両者の使い勝手の差は小さいでしょうから、より価格の安いTCL 10 liteには十分な競争力があります。Redmi Note 9Sの販売は好調なようですが、TCL 10 liteの発売後は両者の競争が激化しそうです。

さてTCLは総合家電メーカーとして全世界で製品を販売しています。日本ではTVを販売しているものの、スマートフォンメーカーとしての認知度はまだ高くないのがg現状です。日本で最初に販売したTCLブランドのスマートフォンは2019年12月に投入された「TCL PLEX」でした。しかしTCLはアルカテルのブランドでグローバルにスマートフォンを販売しており、日本でも過去にいくつかの製品が販売されていました。

  • TCLブランドで再出発を図った最初のモデル「TCL PLEX」

日本で最後に発売されたアルカテルのスマートフォンは「IDOL 4」で、2016年10月と今から約4年前になります。アルカテルのスマートフォンは価格の安さから各国で人気となりましたが、今やシャオミなど大手中国メーカーの台頭によりシェアを大きく落としています。そこでTCLは2020年1月に新しい「TCL 10シリーズ」を発表し、イメージチェンジを図ると共に、改めてシャオミなどに戦いを挑む姿勢を見せています。

  • 1月にラスベガスで発表されたTCL 10シリーズ3モデル

TCL 10シリーズは「TCL 10 lite」「TCL 10 Pro」「TCL 10 5G」に加え、7月に発表された「TCL 10 Plus」「TCL 10 SE」を合わせた5モデル展開となっています。このうちTCL 10 Proは日本でも4万9,800円(税込)で5月に発売になりました。カメラは6,400万+1,600万+500万+200万画素と画質が高く、ディスプレイは左右を丸めたエッジ形状となり持ちやすさを向上させています。このディスプレイは左右からのスワイプでアプリのショートカットや定規を両端に表示するといった付加機能も搭載。TCL 10 liteよりかなり高性能なモデルとなっています。

  • カメラとディスプレイの性能を高めた「TCL 10 Pro」

このように着々とスマートフォンを投入するTCLの次の目玉は、5Gに対応した「TCL 10 5G」でしょう。5Gスマートフォンはハイエンドモデルだけではなく、日本でもシャオミの「Mi 10 Lite 5G」やファーウェイの「P40 lite 5G」など、4万円前後の製品が出てきています。TCL 10 5Gは海外では399ユーロ(約5万円)となっており、シャオミなどの低価格5Gスマートフォンの対抗となる製品です。

  • 約5万円の5Gスマホ「TCL 10 5G」

TCL 10 5Gは6,400万+800万+500万+200万画素のクワッドカメラを搭載しており、5万円台の価格は十分妥当なものと言えます。通信キャリアにとっては5G利用者を増やすためにもぜひ販売したいモデルとなるでしょう。TCLはすでに3機種を日本に投入しているだけに、次のモデルとしてTCL 10 5Gを日本に投入する可能性は大いに考えられます。

もちろん価格だけではすでに低価格機を多数出しているシャオミ、ファーウェイの2大中国メーカーに勝つのは難しいかもしれません。しかしTCL 10シリーズは全モデルが背面の複数カメラを横に並べており、一目で見るだけで「他とは違う」「どこのスマホだろう?」と注目を集めるデザインを採用しています。また日本では豊富なケースも販売代理店のFOXから提供されます。マイナーメーカーのスマートフォンはケース探しが大変ですが、FILAとLANVIN en Blueという2つのブランドのケースが多数販売されるので、ケース選びも楽しめます。

  • LANVIN en Blueのケース。ブランドケースは複数販売される予定

スマートフォンの機能進化はある程度落ち着きを見せています。とはいえ5Gへの対応やさらなる低価格化など、スマートフォンの進化はこれからも続きます。低価格モデルに加え、5Gスマートフォンを展開していけばTCLの存在感は世界各国で高まっていくでしょう。TCLのスマートフォンにもぜひ注目してみてはいかがでしょうか?