日本でも5Gが始まりましたがまだ使えるエリアが少ないことから様子見の人も多いでしょう。iPhoneもまだ5G対応モデルは出てきておらず、5Gへの乗り換えをためらう理由にもなっていると思われます。

筆者の居住する香港では2020年4月から5Gサービスが始まりました。利用できるエリアはかなり広く、キャリアによっては室内でも5Gを使うことができます。スマートフォンの種類もサムスン、ソニー、シャオミ、OPPO、ファーウェイと種類が増えているのに加え、中国から大量の5Gスマートフォンが輸入され、利用されています。

  • ファーウェイのハイスペック5Gスマホ「P40 Pro+」も香港では人気だ

5Gは高速・低遅延・同時多接続を特徴としますが、電波の使い方の効率がいいためにデータ単価も4Gより安価になっています。つまり通信料金が安くなるわけです。日本でも3キャリアの5Gプランはデータ定額が基本となっています。4Gの料金もいまでは数10GBが使えますが、5Gでは使い放題が当たり前となりそうです。

香港では各キャリアが推しているのが100GBのプラン。4Gでは6GBや10GBといったプランが一般的でしたから、一気に無料利用できるデータの量が一桁あがりました。そもそも高速な5Gですから、YouTubeを見るにしてもより高精細な映像を視聴できます。4Gの時と同様にストリーミングで動画を見ていても、常に画質は美しく、スマートフォン本体に動画が保存されているかの如く好きなシーンを瞬時にタップして見ることができます。同じ動画を見ていても、4Gよりも5Gは利用するデータ量が増えるわけですから、100GBに増えた無料利用分も1か月であっという間に使い切ってしまうでしょう。

このように5Gの開始でキャリアの店頭の案内に並ぶ料金プランの案内は「100GB」や「300GB」といった文字が当たり前になりました。しかしこのような大容量プランは5G以外にも広がっています。

  • キャリアの料金プランも「100GB」時代になった

日本でスマートフォンを使うときはキャリアと契約することが一般的ですが、香港ではプリペイドSIMを使うユーザーもかなり存在します。プリペイドSIMなら契約縛りも無いうえに大手キャリアの契約よりも料金が安いからです。香港のプリペイドSIMは登録が不要、コンビニでも買えるので気軽に使うことができるのです。

  • 香港は駅のホームの自動販売機でもプリペイドSIMが売っている

このプリペイドSIMの料金も、いまや「50GB」「100GB」といった高利用プランが登場しています。従来は「30日5GB」のように、大手キャリアの1か月の料金体系と似たようなプリペイドSIMが売られていました。また香港のプリペイドSIMは有効期限が最大180日が一般的。「180日間20GB」のように、長期間大容量が使えるSIMも販売されていました。

  • SIMを売る屋台。日本では見られない光景だ

しかし2020年になってから、さらに使いやすいプリペイドSIMが売られるようになっています。まずは有効期限の延長。1年間利用できるプリペイドSIMが次々と発売されました。学生が新学期と共に購入して1年間使い続けることもできます。1か月や3か月有効のプリペイドSIMのように、頻繁に買い換えや料金の追加も不要です。

  • 「1年」と値札の貼られたプリペイドSIM

1年対応のプリペイドSIMが出てきた背景は2つあります。まずは新型コロナウイルスの影響です。香港政府は3月末前後から感染拡大策としてカラオケ店やバーの営業停止や、5人以上の集会を禁止しました。レストランの大テーブルで家族で食事する場合も4人までとなったのです。これにより外出を自粛する動きも強まり、プリペイドSIMを買い換えに街中の屋台やキャリアの店に気軽に立ち寄る人も減ってしまったのです。なお6月時点では多少緩和されています。

またテレワークが増えオフィスで仕事をする時間が減ったことで、自分のスマートフォンを使う機会が増えています。ビデオ会議をする際もスマートフォンを使って手軽に行うワーカーも多いのです。外出先やカフェならWi-Fiがありますが誰もが動画を使う時代になったことで回線は常に混んでいます。おのずとスマートフォンの4G回線を使う機会が増えているのです。

プリペイドSIMを提供する各業者も、「1か月3GB」のSIMを売るよりも、同じデータ単価なら「1年36GB」のSIMを出せば売値をあげられます。また料金を割引(無料利用分の上乗せ)をして「1年50GB」なんてSIMを売れば競争力が高まるわけです。

その結果、今ではMVNOキャリアのプリペイドSIMは、「100GB」「1年」クラスのものが次々と出てくるようになりました。筆者が見たものは300GBで1,288香港ドル、約1万8,000円です。さすがにここまで使えるとなると高価ですが、面白いのは実売価格。SIM屋台ではたいてい半額程度で売っています。キャリアからの卸値はもっと安いということなのでしょう。

  • 300GBのプリペイドSIM、実売は9,000円くらい

このように高容量・長期間利用可能なプリペイドSIMの登場は、香港を訪れる観光客やビジネス客にも便利な存在です。1年使えれば有効期限をあまり気にする必要がありませんし、100GB以上も使えればホテルに戻ってから動画を見ていても容量がすぐに無くなってしまう心配もありません。

また香港在住の外国人にとっても、キャリアでの契約はなにかと面倒なもの。一度買えばしばらく使い続けられるプリペイドSIMなら1年程度の短期滞在でも安心して使えます。香港の国際競争力を高めてくれる存在にもなりそうです。

いずれ5GプランもプリペイドSIMも、無料で利用できるデータ量がさらに増え、1年もすれば「1TB」、テラの時代を迎えることは間違いありません。日本ではすでにMVNOのLinksMateが最大1TBの料金プランを提供、オプション料金を払えば5Gも利用できます。まだ料金は高いものの、企業などでは必要とするところもあるでしょう。同社はモバイルゲームサービスとの提携もしており、スマートフォンのゲームユーザーを取り込もうとしているわけです。

スマートフォンで毎月1TBも使えれば、自宅の光回線を使うように外出中でも実質使い放題の感覚でデータ通信が使えるわけです。そうなればスマートフォンの使い方も今とは大きく変わっていくでしょう。