韓国を皮切りにアメリカ、スイス、イギリスなどで5Gのサービスが始まっています。日本では今年秋にプレサービスが始まり、2020年には各キャリアが本格的に5Gを開始する予定です。とはいえ今の日本のスマートフォン市場は料金プランの改革の話題でもちきりであり、5Gの話は全く見えてきません。

海外ではすでに1Gbpsという超高速通信が可能な5Gスマートフォンが実際に販売され、5Gならではの新しいサービスも始まっています。日本同様これから5Gが始まる予定の香港でも、通信キャリアが5Gの体験イベントを開くケースが増えています。香港最大のキャリア、香港テレコムが行った5Gイベントで実際に5Gのスマートフォンを体験してみました。

  • 香港でも一般人が体験できる5Gイベントが開催

2019年6月時点、海外で販売されているまたは販売予定の5Gスマートフォンは、サムスンやLG、ファーウェイなど日本でも名の知られた大手メーカーの製品に加え、OPPOやOnePlus、シャオミなどの新興メーカーも含め10機種近くがすでに登場しています。4Gが始まったときはモバイルルーターが先行したことを考えると、5Gではすぐにスマートフォンを使った高速通信が利用できるわけです。

  • サムスンのGalaxy S10 5Gは5G開始国ですでに販売されている

香港のイベントでは、以下のモデルが実際に5Gの電波をつかんで展示されていました。
サムスン:Galaxy S10+
LG:V50 ThinQ
ファーウェイ:Mate 20 X 5G
シャオミ:Mi MiX 3 5G

  • ファーウェイのMate 20 X 5G

  • シャオミもすでに5G機を出している

また以下のモデルは触ることはできませんでしたが、参考出展として展示されていました。
OPPO:Reno 5G
Vivo:NEX 5G
ファーウェイ:Mate X

  • 折りたたみ型スマートフォンとして発売が待たれるファーウェイMate X

  • 日本にも参入したOPPOの5Gスマートフォン

会場内には3.5GHzの5G試験波が飛ばされており、デモ端末では4K動画のストリーミング配信が行われていました。自分の見たい場所まで早送りしても放送が途切れず見ることができるなど、5Gならではの高速通信を実感。スピードテストはできなかったものの、4Gよりもかなり高速であることがわかります。

  • 5Gの試験電波をつかんでデモが行われた

  • 4K動画のストリーミング配信デモ

5Gでは遅延速度も低くなるため、スマートフォン側の反応がよりダイレクトにアプリケーションに伝わります。5Gではスマートフォン向けのVRゲームや複数のカメラからの映像を同時に受け、それを画面上で切り替えて自分好みのアングルで動画を視聴できるサービスなどが海外で始まっています。LGのV50 ThinQのように画面を2枚にして異なるアングルの映像を同時に見る、といったことも可能になるのです。

  • カバーに2枚目の画面が付いているLG V50 ThinQ

高速・低遅延を生かせばオンラインゲームも有線の呪縛から解かれ、スマートフォンを使ってどこからでも参加することが可能になります。eスポーツは5Gが始まれば今以上に普及すると見込まれています。イベント会場にもeスポーツのデモコーナーがありましたが、家族ずれも参加する和気あいあいとしたイベントであるからか、バリバリのシューティングゲームではなく家族向けのゲーム体験などが行われていました。

  • eスポーツは5Gのキラーサービスの一つ

5Gにはもう1つ「同時多接続」という特性あります。それにより今までより数多くのセンサーや機器がネットワークにつながるようになります。いわゆるIoTです。これにより様々な自動化が進み生活もより便利になり、例えば空いた時間を別のことに活用できるようになるわけです。体脂肪測定もできる体重計に毎日乗るだけで自分の健康状態が記録され、変異に異常があれば医者から通知が来る、といったことも数年以内には実用化されるでしょう。またすべてのペットにトラッキングデバイスを付けても5G回線なら接続エラーが起きることはありません。ペットが行方不明になる、なんてことも5G時代には無くなるでしょう。

  • 健康デバイスもスマートフォン接続から、医者とデータを共有する時代になる

  • ペットにトラッキングデバイスを付けることがあたりまえになるだろう

そしてそのIoTの晋先に見えるのが、都市のスマート化、スマートシティーです。道路状況を監視カメラがチェックして信号を自動で切り替えたり、気温や湿度に応じて建物の空調を自動でコントロールするなど、街中に設置されたセンサーが5Gなどのネットワークを通じて情報を収集し、そのデータを解析することで渋滞や冷房・暖房のかけすぎといったエネルギーの無駄をなくしていきます。自動運転や工場の自動化などもスマートシティーに合わせて実現されるでしょう。スマートシティーの実現には基幹インフラとして5Gが必要なのです。

  • スマートグラスを使い、マニュアルいらずで機器を操作するデモ

5Gはまだ漠然としたイメージしかありません。しかしスマートフォンの画面には常にビデオが流れているようになるなど、今のスマートフォンの使い方を大きく変えるものになります。また5Gは都市のスマート化を加速化します。「気が付けば生活がとても便利になっていた」5Gが完全に普及したころには、日々の生活も今とは全く違うものになっているかもしれません。