サムスンの「Galaxy Fold」、ファーウェイの「Mate X」と画面が折りたためるスマートフォンが相次いで発表になりました。どちらも閉じればスマートフォン、開けばタブレットになる新しいデザインの端末です。ところが両者の折りたたみの構造は大きく異なっているのです。
Galaxy Foldが開いたディスプレイを内側に折りたたむスタイルになっているのに対し、Mate Xは外側にたたむ構造になっています。どちらもヒンジ部分には多くのパーツを組み込み、この複雑な構造体を製品化していますが、このデザインの違いから両者の使い勝手は大きく異なっています。ではどちらの形状が使いやすいのでしょうか?
Galaxy Foldの利点は「自然な使い方」ができることです。閉じればスマートフォン、開けば中からタブレットの大画面が出てくる様は、普段我々が見慣れている書籍や雑誌などと全く同じです。サムスンのモバイル部門CEOのDJ Koh氏も日本メディアのインタビューで「Galaxy Foldの形は2000年前に発明された本と同じ」と語っています。胸ポケットにも入るスリムサイズなので、ビジネスパーソンにとってはメモ帳感覚で持つこともできるでしょう。
一方でデメリットは、閉じたときにもスマートフォンとして使うために外側にもう1枚のディスプレイが必要となることです。スマートフォンを構成する部品のうち、CPUに次いで価格が高いのがディスプレイと言われているくらい、よりよいディスプレイの搭載はスマートフォン本体の価格を引き上げてしまいます。つまり側に折りたたむデザインを採用すると、もう1枚ディスプレイを追加せねばならず、コストアップにつながってしまうのです。
なおサムスンは世界最大のディスプレイメーカーでもあり、世界のスマートフォンの半数以上にディスプレイを供給しています。そのため自社製品であるGalaxy Foldがディスプレイを1枚追加したとしても、その分のコストは他社よりも低くできるでしょう。Galaxy Foldの価格は1,980ドル、20万円を超えるもののその大半は革新的な折り曲げられるディスプレイの開発コストと思われます。
外側に折りたたむディスプレイを採用したファーウェイ「Mate X」の利点は、内側折りたたみタイプのGalaxy Foldの欠点がないこととなります。つまり開いた大きい画面を外側に向けてたためば、表も裏もスマートフォンの画面として使える「両面スマートフォン」になるのです。つまり追加のディスプレイは必要ないのでコストを抑えられ、設計も楽になります。
とはいえ外折りタイプのディスプレイにも欠点があります。それは閉じた状態では表も裏もどちらもディスプレイ面となることから、持ち運び時に傷がつかないように気を付ける必要があるのです。もしも片面に傷が入ってしまえば、開いた時もその傷がそのまま画面表示に影響してしまいます。
実はその点もファーウェイは考慮しているようで、Mate Xには専用カバーが提供されます。しかしそれの意味するところは、ケース無しで使うのにはやや心配があるということかもしれません。またケースは閉じた状態で片側のディスプレイ部分を隠すので、そちらの画面がすぐに使えないというデメリットもあります。
ところで内折り式、外折り式、どちらのディスプレイのほうが製造は難しいのでしょうか? Royoleは2018年11月に世界初の折りたたみ型スマートフォン「FlexPai」を発表しましたが、そのデザインは外折り式でした。つまり外折り式のほうが製造は行いやすいのかもしれません。
TCLの子会社で中国大手のディスプレイメーカー、チャイナスターはスマートフォン向けの内折り式、外折り式、どちらのディスプレイも開発していますが、そこに興味深いデータがあります。ディスプレイの折りまげ部分、すなわちヒンジの部分ですが、同社のディスプレイは内折り式が3ミリ径、外折り式が5ミリ径のカーブとなります。つまり内折り式のほうが閉じたときに、よりフラットな形状になるということです。しかし外折式は、折り曲げたときに内側に本体部分の厚みがくるため、その曲がる径のサイズを吸収することができます。
Galaxy Foldはまだ本体の一般公開はされていません。Mate Xはメディア向けに実機が公開されましたが、閉じた状態を見ると表と裏の面はぴったりとくっつき、フラットでした。同じ構造のFlexPaiは表と裏の間にかなり隙間が開きます。Mate Xは5Gの通信方式に対応するとはいえ、2,299ユーロ、27万円の価格になったのはディスプレイ部分の開発費がかなりかかっているからなのでしょう。
どちらのデザインが使いやすいのかは実際に製品が出てこなくては判断しにくい部分もありますが、これまでのスマートフォンでは考えられない、全く新しい体験を消費者に与えてくれます。ハイエンド端末嗜好の高い日本市場でも販売されるに違いありませんから、発売を楽しみに待ちたいと思います。