ファーウェイが10月16日にロンドンで発表した秋冬向けのフラッグシップスマートフォン「Mate 20」シリーズは、メモリカードに新しく開発された「NMカード」を採用します。NMとは「ナノメモリ」の略で、スマートフォンに装着するナノSIMカードと全く同じ大きさになります。NMカードによりスマートフォンの大きさは今よりもさらに小型化することができそうです。
iPhoneにはメモリカードスロットはありませんが、Androidスマートフォンのほとんどが外部メモリを装着して本体内部の保存領域を拡張できます。現在採用されているメモリカードはマイクロSDカードです。マイクロSDカードはその名前の通り小型のメモリカードですが、スマートフォンに装着するナノSIMカードと比べるとサイズは一回り大きくなっています。そのためスマートフォンにこれらのカードを装着させようとすると、ナノSIMカードとマイクロSDカードの両方を載せるためのトレイが必要になります。
このトレイは2種類のサイズの異なるカードを装着するために、若干長い形状となっています。スマートフォン本体内部は基板や部品が所狭しと並んでいますが、このトレイを収納するために空間をあけなくてはなりません。
一部のAndroidスマートフォンはメモリカードを不要とした設計としていますが、本体内のメモリが足りなくなった場合に後から容量を追加できないという欠点があります。では最初から大容量メモリを搭載したスマートフォンを買えばいいかというと、メモリの多いモデルは価格も高く、後からマイクロSDカードを追加したほうが安上がりでもあるのです。
iPhone XS/XRの中国向けモデルはナノSIMカードトレイの上下にSIMを2枚装着できるトレイを採用しています。AndroidスマートフォンでもOPPOの「Find X」が同じ構造です。しかしどちらの製品もSIMは2枚入りますが、マイクロSDカードを入れることはできません。
そこでファーウェイが考えたのがNMカードの採用です。ナノSIMカードと同じ大きさにしたことで、トレイには表にナノSIMカード、裏にNMカードを装着できます。トレイの大きさはナノSIMカードより一回り大きいくらいで、既存のSIMトレイよりも小さくなっています。
とはいえファーウェイ以外にNMカードを採用するメーカーはまだありません。ファーウェイ1社だけしか採用しないようでは、NMカードの先行きが少し心配です。この手の製品はソニーのメモリースティックのように、他社が採用しなくてはマイナー規格に終わってしまいます。ファーウェイはこのNMカードを他のモデルにも広げていくのでしょうか?
まず新製品のMate 20シリーズは4機種もあり、それぞれ最低メモリ容量は128GBあります。「Mate 20 Pro」には256GBモデルもありますし、「Mate 20 RS」は256GB、512GBの2タイプが用意されます。外部メモリを買わなくても内蔵メモリだけで使い続けることはできそうです。
一方、ほかのモデルのうち、ミッドレンジ以下の製品は本体の小型化を考えるよりも生産コストを重視するでしょう。そのためあえてNMカードを採用する必要性はありません。本体の内蔵メモリを64GB程度に抑え、追加でマイクロSDカードを買ってもらう、という戦略を続けるでしょう。
しかしハイエンドのカメラフォン、「P」シリーズの来年のモデルはおそらくNMカードを採用すると思われます。Mate 20同様に最低メモリ容量は128GBにあげ、なるべく外部メモリを買わなくても済むようにしたうえで、必要ならばNMカードを追加してもらうようになるでしょう。
マイナーなメモリカードはマイクロSDカードと比べて価格や入手のしやすさに不安があります。なおカードリーダーが販売されるようなので、PCなどに接続してデータを抜き出すことは可能です。とはいえ今やスマートフォンを直接ケーブルでPCに接続したほうが手っ取り早いでしょう。
入手先は今やAmazonなどオンラインショッピングが当たり前ですし、外出先で急にスマートフォンのメモリ内容が少なくなったら、クラウドに逃がすといったこともできます。むしろ「ポイントの溜まるお店で買えるかどうか」という、本来の目的以外の点が心配される程度でしょうか。
そのように考えると、独自規格のNMカードも、実際にMate 20シリーズを買う人にとってあまり心配する必要はないかもしれません。またNMカードの将来を考えるよりも先に、スマートフォン本体の内蔵メモリが今よりも急に大容量化する可能性もあります。Mate 20シリーズの日本発売と合わせ、NMカードをどのように展開していくのか気になるところです。