8月31日から9月5日までドイツ・ベルリンで開催されたIFA2018は家電を中心としたIT関連の展示会です。スマートフォンメーカーによる新製品の発表も毎年この展示会では行われますが、今年は間もなく各国でサービスが始まる5Gに関連した展示が目立っていました。5Gスマートフォンのモックアップを展示するメーカーもあるなど、次世代の移動通信システムの足音が近づいているのが感じられました。

  • 5Gの展示や発表が目立ったIFA2018

5Gに対応した通信モデムを内蔵したスマートフォンはまだ現存しません。いち早く5G対応をアナウンスしたモトローラのスマートフォン「Z3」は、合体式モジュールの「5G mod」を8月に発表しましたが、IFA2018のモトローラブースにはその実機が展示されていました。現時点ではアメリカのキャリア、ベライゾンの5G方式に対応しますが、今後は他国への展開も考えているとのこと。

  • モトローラスマートフォンを5G化する5G mod

一方、ZTEは5Gスマートフォンやタブレットのモックアップを展示していました。ZTEもIFA2018にあわせて新製品を発表しましたが、それとは別に5G端末の展開方針も発表したのです。ZTEが開発中の5G端末はスマートフォン、タブレット、そして屋外用と屋内用のCPE(宅内通信装置)。それぞれの端末の用途に応じて5Gの対応通信周波数や搭載する機能を変えることで、最適な5G端末を開発するとのこと。

  • ZTEは来年発表予定の5Gスマートフォンとタブレットのモックを展示

スマートフォンではVR/AR機能が標準となり、タブレットでは4Kディスプレイを搭載します。5Gの高速・低遅延・同時多数接続という特性を生かした新しいサービスやアプリケーションがこれから生まれてくるでしょうが、ZTEはその将来を見越した端末を提供しようと考えているとのこと。ZTEによると同社最初の5G端末は2019年下半期に発売予定だそうです。

  • ZTEの5G端末開発ソリューション

またファーウェイは10月に発表する新製品「Mate 20」を予告し、同端末に搭載されるチップセット「Kirin 980」を発表しました。Kirin 980はCPUのパフォーマンスだけではなくAI機能も強化され、スマートフォンの使い勝手を大きく高めてくれます。また4G方式ながらも最大1.4Gpbsの高速通信に対応します。さらに同社が開発した5Gモデム「Balong 5000」との接続も可能で、5G端末をいつでも出せる準備はできていると説明しました。

  • ファーウェイの5G端末はいつでも出せる状況

通信キャリアではIFA2018の開催地、ドイツで最大の総合通信キャリアであるドイツテレコムが5Gの実電波を使ったライブデモを披露しました。会場内に5Gの基地局を立て、試験電波を飛ばして3Gbpsという高速通信を実演していたのです。今後基地局や端末側の整備が続けば、5Gの理論値である10Gbpsを常時出すことも可能になるでしょう。

  • ドイツテレコムの5G特設ブース

  • 通信速度は常時3Gbps

さてソニーやサムスンはプレスカンファレンスで5G端末には触れなかったものの、どちらも5Gに関する話が織り込まれていました。ソニーはクリエーターとユーザーをつなぐためのエレクトロニクス製品作りに注力していくと話しましたが、5Gはクリエーターが描いた通りのコンテンツをそのままユーザーに送り届けることができるものとし、5Gを念頭に置いた製品開発を行うと説明しました。

  • ソニーは5Gがコンテンツ配信を変えると話す

サムスンもすべてのデジタル製品がつながることで人々の生活が一変する未来が間もなくやってくると話し、より使いやすいスマート家電を開発するだけではなく、年内にはアメリカで5Gを使ったブロードバンドサービスの開始も支援、インテリジェントな生活体験をいち早く届けたいと抱負を語りました。

  • サムスンはアメリカの5G開始で生活を変えようとする

5Gと聞いてもまだまだ概念的なイメージの印象が強く、その特性を生かしたサービスがまだ見えてこないことから、5Gが間もなく始まると言われても「生活の何が変わるのだろう」と思われる人が多いでしょう。しかし3G時代は音楽や動画をダウンロードして使っていたのに対し、4G時代の今ではストリーミングで利用することが当たり前になっています。5Gが始まれば今まであまり実用的ではなかったサービスも実用性の高い、誰もが毎日使うものになるでしょう。

  • 5GはSFの世界を現実にしてくれるかもしれない

例えば最近普及が始まった音声AIサービスも、家庭でスマートスピーカーを使う人が増えていますが、スマートフォンで利用する人はまだ多くありません。呼びかけてもうまく応答してくれないことが多いですし、回答に時間がかかることがあります。しかし5G回線なら呼びかけると瞬時に答えを返してくれますし、返答と同時に画面に動画を流す、なんてこともお手の物になります。「今日のサッカーの試合結果は?」とスマートフォンに話しかけると、即座に試合のダイジェストビデオがストリーミングで配信される、そんなことが当たり前になるのです。

IFA2018の各社の展示からは、そんな未来のある生活を感じ取ることができました。あとは世界で最初にどのキャリアが5Gの提供を始めるのか、そして対応したスマートフォンはどこが最初に出すのか。5G開始に向け「世界初」のニュースがこれから世界をにぎわしそうです。