スマートフォンの通信速度をさらに高速化する次世代通信規格「5G」が早ければ年末から商用化される予定です。日本も2020年の東京オリンピックの時には5Gがサービスインされる予定で、オリンピックの生中継をより高画質な映像で視聴できるのはもちろんのこと、複数のカメラから同時中継される映像を自分のスマートフォンで切り替えながら視聴する、なんてこともできるようになりそうです。
この5Gに対応したスマートフォンをいち早くモトローラが発表しています。モトローラが8月3日に発表した「Moto Z3」は単体では4G対応のスマートフォンですが、背面に合体できるアクセサリ「moto mods」の新しいモジュール「5G moto mod」を装着すると、5Gスマートフォンに早変わりするのです。
moto modsは2016年9月に発表され、モトローラの「Z」シリーズのスマートフォンの背面にマグネットで装着できるアクセサリです。スマートフォンとmoto modsの接続には専用端子があり、単純に背面に貼り付けるだけではなく制御信号などを流すことができます。そのためmoto modsにはバッテリーカバーやスピーカーといったものだけではなく、ハッセルブラッド製の光学ズームレンズ搭載カメラモジュールや、スマートフォン本体の写真を印刷できるプリンターモジュールなども登場しています。
スマートフォンに合体して機能をアップできるという製品は、とくに男性にはわくわく感を与えてくれます。しかしモトローラ以外を見渡すとこの合体式のスマートフォンを見かけることはほとんどありません。多くのメーカーが「合体スマホ」の夢を見て製品をだしてきましたが、いずれも失敗しているのです。
それらのメーカーの中でも、アルカテルはスマートフォンのフリップカバーに機能を持たせた合体式スマートフォンを出すなど、この分野に果敢に挑戦してきました。まるでノートPCのような形のドッキングステーションを出したこともあります。ですがそれらの存在を覚えている人はいないでしょう。
筆者は2017年2月にアルカテルが発表した、最新の合体式スマートフォンを入手できたので、実際に使ってみました。ヨーロッパでは「A5」、アメリカでは「A50」などの名前で発売されたアルカテルのスマートフォンは、背面カバーに機能を持たせた製品です。
背面カバーは「LEDカバー」「バッテリーカバー」「スピーカーカバー」の3種類が登場しました。今回はそのうちのLEDとバッテリーのものをテスト。スマートフォン本体の電池カバーを外すと、内部には端子が見えます。そしてLEDやバッテリーのカバーにも同じ位置に端子があり、電気信号を送れる構造になっています。
カバーの形状は本体の側面をしっかり覆う形になっています。そのためカバーを取り付けてもちょっとやそっとでは外れることはありません。内部端子をしっかり接続させるためにこのような構造になっているのでしょう。しかしその結果、これらのカバーを他に流用しようとすると、本体の縦横サイズをまったく同じにし、厚みもある程度揃えなくてはなりません。
そうなるとディスプレイのサイズが固定されてしまいますし、スマートフォン本体のデザイン設計にも大きな制約が生まれます。これに対しモトローラのmoto modsはフラットな背面にマグネットで貼り付けとなるため、スマートフォンの縦横のサイズが多少変わってもカバーできますから、別のモデルへの流用も可能になるわけです。
カバーをつけるとスマートフォンの画面に通知が表示され、アプリを使うものはそのアプリをそこから起動できるなど、端子を使ってカバーが接続されるメリットは生かされています。バッテリーカバーは別途モバイルバッテリーを持つ必要がありませんからかなり実用的です。しかし実売価格は1万円弱程度したようで、そこまで出すならばモバイルバッテリーを買ったほうが安上がりになってしまいます。
一方、LEDカバーはスマートフォンの通知や着信、また音楽再生中に背面カバー全体が光るという面白いアイテムです。自分を表現したい人のために点滅パターンの自作も可能など、ほかのスマートフォンにはない独創的なアクセサリと言えます。
通知もわかりやすく、例えばメールを受ければ赤時で「M」、Facebookにコメントがあれば青時に「F」などアルファベットが表示されます。スマートフォンを裏返しておけば、バイブレーションや通知音を切っていても通知がわかるというわけです。
販売国によってはこのLEDカバーが標準で付属していたようで、アルカテルとしてはこのカバーの楽しさで合体式、着せ替え式スマートフォンの楽しさを消費者に伝えたかったのでしょう。しかしベースとなるA5シリーズはミッドレンジクラスの製品です。200ドル以下、1万円台で買えるスマートフォンに、別途1万円弱のカバーを複数買ってもらうのは難しいでしょう。
モトローラの「Z」はハイエンド(Z Playはミッド・ハイレンジ)の製品のため、機能性のある合体モジュールを買う消費者も多いと思われます。アルカテルは低価格なスマートフォンに別売のモジュールを提供したために、せっかく生み出した「SNAPBAK」というこの合体モジュールも広がりを見せませんでした。どうせなら3つのカバーをセットにして販売するべきだったでしょう。
アイディアはよくともマーケティングで売れなかった、それがアルカテルの敗因だったと思われます。またモトローラは10種類以上のmoto modsを出しており、交換する楽しみを消費者に与えています。合体式スマートフォンはそれくらい本気で取り組まなくてはなかなか買ってもらえない、ということなのでしょう。