2017年のスマートフォン市場を振り返ると、大きなトレンドの一つがワイドディスプレイの採用。従来の16:9の縦横比に代わる、18:9や18.5:9といった縦長(横長)なワイドディスプレイが秋冬モデルで急増しています。毎週のようにスマートフォン新製品が登場する中国でもいまや16:9のディスプレイモデルは少数派。1万円程度のエントリースマートフォンですらワイドディスプレイを搭載しているのです。
2017年上半期の海外のモバイル関連展示会ではあまり目立たなかったワイドディスプレイモデルも、下半期になると一気に増えてきました。新興メーカーですら新製品は18:9が当たり前となり、16:9のディスプレイモデルはどことなく古さを感じてしまうほど。中にはいPhone Xっぽいデザインの製品を出すメーカーも登場しています。
スマートフォンの画面サイズは大きいほうが好まれます。そのほうが一度に多くの情報を見ることが出来るからです。もちろん片手にすっぽりと収まる、持ちやすさを考えた小型の製品を使いたいと考えるユーザーの数も多くいます。しかし世界の流れは「画面の大型化」が進んでいて、その大きい画面をどのように持ちやすくするかに各社は頭を悩ませていました。ベゼルレスデザインなら横幅は狭くできますが、それでも限界があります。
2017年2月にLGが18:9のワイドディスプレイを搭載した「G6」を発表し、4月にはサムスンが18.5:9のディスプレイ機「Galaxy S8」「Galaxy S8+」を発表すると、全てのメーカーがこのワイドディスプレイに飛びつきました。横幅を狭くしたまま上下に画面を伸ばせばディスプレイのサイズそのものを大型化できます。最近の各社の新製品を見ると6インチ以上のディスプレイを搭載した製品が続々と登場しています。16:9の比率では片手では持てなかった6インチモデルも、18:9であれば楽に握ることができるのです。
しかもAndroidスマートフォンであれば、2つのアプリを1画面に同時表示できます。ワイドな画面サイズならば2つのアプリの表示も無理なくできるわけです。スマートフォンを使いこなすユーザーにとってもワイドディスプレイは便利な存在であり、一度このサイズに慣れると16:9には戻れないかもしれません。
2017年11月に久しぶりの新製品を日本で発表したWiko(ウィコウ)も、18:9のディスプレイを採用していなければ「コスパに優れたセルフィースマホ」というだけで目立たない存在になってしまったかもしれません。最新モデルの「View」は5.7インチという大型ディスプレイを搭載。視野性に優れながらも片手で持てるサイズで、しかもフロントには1,600万画素カメラを搭載します。Wikoのスマートフォンはフランスの若者に好まれているといいますが、細身のVIEWならポケットからさっと取り出す仕草も様になりそうです。
18:9のディスプレイを採用していないメーカーは今のところ大手ではソニーモバイルやアルカテルなど、一部のメーカーに留まっています。マグネットでスマートフォンの背面に合体型モジュールを装着できるMoto Zシリーズを販売しているモトローラも、まだディスプレイは従来の16:9を搭載したままです。しかし2018年にはこれらのメーカーも続々と18:9への移行が進むでしょう。
ほぼ毎月新製品を投入するサムスンとファーウェイは、ワイド画面と従来サイズ、どちらの製品も引き続き継続して投入しています。ファーウェイは10月に発表し12月に日本でも発売になった「Mate 10 Pro」が18:9で、それに加え16:9の「Mate 10」も同時にリリースしています。フラッグシップで2つの画面サイズを揃えるあたりは、今一番乗っているメーカーだからできるのでしょう。ファーウェイはこの他にオンライン向けブランド「honor」でも18:9の製品を早々と投入しています。
さて現在はワイドディスプレが1モデルだけのAppleも、2018年のiPhoneはX系統が2機種、従来モデルの後継機が1機種出ると噂されています。恐らく全モデルがX系統のワイドディスプレイになるのは2019年でしょう。そのころにはどのメーカーのスマートフォンもワイドディスプレイ搭載が進んでおり、縦長の画面を活かした新しいアプリやサービスが生まれていることでしょう。スマートフォンの進化は止まったようにも見えますが、ディスプレイの縦横比が変わるだけで新しい動きが起きるかもしれないのです。