海外旅行に出かけたら現地の蚤の市を訪れるのも面白い。数十年も前の家具の部品、まだ直せば使えそうな古いタイプライター、つい先日まで使われていただろう90年代の調理器具などを見つけることもできる。それはまるでちょっとした民族博物館のようだ。また蚤の市にはアウトレット品を売る業者も多く、最近はスマートフォンのケース店も増えている。
筆者は先日パリに寄る機会があったのでさっそく蚤の市を訪問してみることにした。パリには有名な蚤の市が3カ所ほどあり、地元客だけではなく観光客も訪れるスポットにもなっている。今回はその中の1つ、モントルイユの蚤の市に立ちよってみた。場所はパリメトロのPort de Montreuil駅を降りて徒歩5分ほどの場所にある。
駅から蚤の市へ行く途中には携帯電話ショップもいくつかあるが、そこでは普段見慣れないメーカーのスマートフォンが売られていた。恐らく中国製のもので、KonrowやVifoneなど聞いたことも無いメーカーの製品が並ぶ。価格は100ユーロ台、安いものなら50ユーロ以下のものもある。こんな格安携帯ショップがあるのも蚤の市がここにあるからだろう。
蚤の市は公園向かいの道沿いに広がっている。営業は毎週土・日・月曜日、時間は朝7時から夜まで。午後遅くには早々と撤収する店もあるという。道沿いにずらりと並ぶお店、いや屋台を回ってみると、個人の不用品売りよりも業者のアウトレット品の店が目立つ。靴や洋服、キッチン用品、工具など売っているものは様々だ。
そしてスマートフォンのケース店も結構見かける。対応するメーカーはiPhoneやサムスン、HTCなど。それに加え海外メーカーのメジャーどころのケースが並ぶ。珍しいのはWiko(ウィコウ)のケースもちらほら見つかる。Wikoはフランスブランドでパリの家電店でも普通に売られているだけに、ここではメジャーメーカー扱いなのだ。
蚤の市は横に広がっておりかなり広い。入り口から西の方へ延々と歩いてくと、少しずつ個人の不用品を並べて売る店が増えてくる。居間の不要物をそのまま並べている店などは、ちょっと良さげなデザインの小物があったり、アンティーク調の置物があったりと、自分の部屋に飾りたくなるようなものも見つかる。そんな店をいくつかまわったところ、恐ろしく古いが新品同様の携帯電話関連製品が売られていた。
このシルバーのブツはエリクソンの初期の携帯電話、GF768用の交換ボディーだ。プラスチックメッキの美しい仕上げは、当時携帯電話界のポルシェとも言われた高級携帯電話「Nokia 8810」を模したもの。GF768もヒット商品だったが、これをノキアの高級機風にしてしまうというボディーなのだ。こんなものはもちろん純正品では無く、2017年現在どこにも売られていない。しかしその店にはケースに入った傷一つない状態でこの着せ替えボディーが売られていたのだ。筆者は古い携帯電話も集めているコレクターなので、これを思わず買ってしまった。いずれ手持ちのGF768のボディーを交換してみたいと思う。
他にもIT製品を中心とした不用品・ジャンク屋台や、中古カメラ店もちらほらと見かけた。得体の知れないディスプレイの割れたタブレット、PCの基盤、なんの製品用か判らないACアダプタが売られていたが、壊れたスマートフォンも数台置かれていた。部品取り用途としてなら価値はありそうだ。
そして蚤の市をかなり端の方まで来たところ、携帯電話やスマートフォンを10数台売っている屋台を発見した。ここもIT製品を専門に扱っているところ。携帯電話は「いにしえ」という言葉が似合う、もはや製品価値の無いものばかり。傷も多く、これを買う客がいるのだろうかと思えるほどだ。
しかしその中に、1台だけ気になるものが売っていた。よく見ると「i」のマークが入っている。これは昔、ドコモのiモードがフランスでもサービスされていた時に、iモード専用機として売られていた携帯電話だ。バッテリーも無く、使い道も無いが、コレクション用についつい買ってしまった。ちなみに値段は7ユーロ。値段交渉に失敗してしまった。
ちなみにこの屋台はポータブルゲーム機やラジカセなども置いてあり、来客も多かった。もちろんどれもが実用性は無いような製品で、来る客はみなコレクターのようだった。パリ訪問のたびにここに来れば、またレアな携帯電話のジャンク品を見つけることができるかもしれない。
海外に出かけて時間があるとき、せっかく来たのだからと観光地に行くのもいいだろう。しかし蚤の市へ行けば意外と面白いものに出くわすこともあるかもしれない。たとえ買わなくても古いコンピューターやビデオデッキなど、「男の子心」をくすぐるものを見て回るだけでも面白いものだ。