日本市場に彗星のごとく市場参入を果たしたスマートフォンメーカーのBLU。アメリカ・マイアミベースの同社は2010年からフィーチャーフォンを、2011年からはAndroidスマートフォンとタブレットを手掛けている中堅どころのメーカーだ。
Strategy Analyticsの調査によると、2017年第1四半期(1-3月)のアメリカSIMフリー端末市場で、BLUのシェアは1位だったとのこと。2位はiPhoneを擁するAppleで、BLUはここ1-2年SIMフリー市場でAppleとの覇権争いを繰り広げるほどのメーカーになっているのだ。アメリカのスマートフォン市場はSIMロック販売が主力だが、キャリアにとららわれずに自分の好きな端末を使いたい、しかも手軽な値段で購入したい、という層にBLUのSIMフリー機は人気を集めている。
ではアメリカではBLUの端末はどのように販売されているのだろうか。Appleやサムスンなど大手メーカーの製品は、各通信キャリアがSIMロックをかけて2年契約とセットで販売する例が一般的だ。VerizonやAT&Tといった大手キャリア(MNO)だけではなく、Boost MobileやCricket WirelessなどのMVNOでも同様のことが行われる。日本ではMVNOキャリアはSIMフリー機を販売するが、アメリカではMNO、MVNOを問わずキャリア販売品はロックがかかっていることが一般的なのである。
BLUはアメリカのSIMロック端末市場ではなく、SIMフリー機として販売されている。そのためキャリアでの取り扱いは無く、家電量販店や通販で販売されているのだ。たとえばアメリカ最大のIT量販店「Best Buy」にはSIMフリー機コーナーがあり、BLUの製品がサムスンやモトローラ、ソニーモバイルなどの製品と一緒に販売されている。ちなみにアメリカではサムスンなど大手メーカーもキャリア向けにSIMロック機を出しながら、SIMフリー端末を自社販売している。
また通販ではAmazonで面白い販売方法を行っている。Amazon Prime会員向けのオファーで、スマートフォン本体にはAmazon関連アプリがプリインストールされている。それに加えてロック画面には常に広告が表示される。いわばAmazonモデルとすることで端末価格を大幅に値引きしているのだ。2016年7月から始まったこの「広告表示割引端末」はBLUの「R1 HD」とモトローラ「Moto G」の2モデルが対象端末となっている。広告が表示されるとはいえSIMフリー機のままであり、R1 HDの価格はわずか50ドルとのこと。Amazonは電子ブックリーダーの「Kindle」で広告表示モデルを出しているが、他社スマートフォンにも同類のプラットフォームを搭載することで割引販売を実現したのである。
この他には大手スーパーのウォルマートの店舗や通販でもBLUのスマートフォンは販売されている。売れ筋モデルの価格帯は70-130ドル程度と割安感が強く、通販で食品や雑貨と一緒に買えるような価格帯のモデルを多数そろえているのだ。BLUにはiPhoneのような超ハイスペック製品はラインナップに無いが、その理由はスマートフォンを日用品として気軽に使いたいというユーザーを主なターゲット層にしているからだ。
BLUのラインナップは、Advance、Dash、Energy、Grand、Life、R、Studio、Tank、Vivoなど多岐にわたる。これまで様々な製品を送り続けてきただけに、過去からのモデル名をそのまま今に引き継いだモデルもあるのだ。また2017年に入ってから発売したモデルはすでに20機種を超えている。一部のモデルはLTE版と3G版の両方を出しており、南米などLTEの普及が遅れている国には割安感のある3Gモデルを販売しているのである。
ちなみに2017年の最新モデルは「Studio J8 LTE」「R2 LTE」。どちらも3Gのみのモデルも存在する。主なスペックは前者が5.5インチHDディスプレイ、RAM1GB、ROM8GB、リア800万画素、フロント500万画素カメラ。後者が5.2インチHDディスプレイ、RAM2GB、ROM16GB、リア1,300万画素、フロント1,300万画素。チップセットはどちらもMT6735クアッドコア1.3GHz(LTEモデル)。どちらもこれから販売となるが、価格は200ドルを切るレンジになるだろう。
日本に投入された「GRAND X LTE」は12,800円、「GRAND M」は3Gのみ対応ながら7,980円。しかし製品を手に取るとその質感は価格よりも良いと感じることだろう。アメリカで数十機種もの新製品を毎年出しているメーカーだけあって、製品の仕上げは意外と悪くないのだ。海外向けの2017年モデルを見ても、日本市場で受けそうな製品はこの2機種以外にもありそうで、今後もぜひ定期的に新製品を日本に投入してほしいものである。