中国通信事業者6社の再編方針が中国政府関係機関から発表された。年内に事業買収などの手続きが行われ、来年にも新体制で事業が開始される予定だ。
業態別事業からマルチプレイヤーへ再編
中国の通信事業は業態別に事業が行われおり、6社が事業展開している。固定電話はもともと「旧・中国電信」が中国全土で営業していたが、2002年からは南北のエリア別に2社に分離された。また携帯電話も同様に「旧・中国電信」から中国移動が2000年に分離したものだ。その後携帯電話事業は2社が事業を行っている。現在の各社の事業内容は以下の通り。
<固定通信事業>
1.中国電信(China Telecom) - 固定電話(中国南部)及びブロードバンド(全土)
2.中国網通(China Netcom) - 固定電話(中国北部)及びブロードバンド(全土)
<携帯電話事業>
3.中国移動(China Mobile) - GSMおよびTD-SCDMA方式
4.中国聯通(China Unicom) - GSMおよびCDMA2000方式
<鉄道・衛星関連>
5.中国鉄通(China Railcom) - 鉄道沿線を中心に固定電話及びブロードバンド
6.中国衛通(China Satcom) - 衛星電話事業
中国でも携帯電話利用者は急増しており、一方で固定電話の利用者は減少が進んでいる。業態別に事業を分割したのは、それぞれの事業者が均等に競争し成長することを狙ったものだったが、固定電話事業は成長が鈍化しているのが実情だ。特にここ1~2年は世界最大の携帯通信事業者となった中国移動の「一人勝ち」が目立っている。今回の再編は、言うなれば中国移動への偏りを是正することが目的とも見られているが、再編後の3社を「固定・移動・ブロードバンド」のマルチプレイヤー化することで、国内はもとより国際的にも競争力の高い事業者へ成長させる目的もあるようだ。
再編の柱は、
- 中国電信が中国聯通のCDMA2000事業を買収
- 中国移動が中国鉄通を吸収
- 中国聯通のGSM事業と中国網通が合併
となっており、すでに中国移動の中国鉄通吸収は合意に達した模様である。今後は中国聯通のCDMA2000事業の売却額が再編のカギを握ると見られており、中国電信との間で金額の合意に至らなかった場合は政府による介入もありそうだ。ただし政府介入は再編後の事業者の財務内容にも影響を与える可能性も高く、「再編ありき」で実資産額を無視した事業売却は強要できないだろう。また中国聯通はGSMとCDMA2000の両方式を利用できる「世界風」というサービスを行っているが、事業分割により同サービスの利用者を新会社に引き継ぐのか、もしくは中国電信へ移行するのかといった問題もクリアにされていない。同サービスはビジネス利用が多くARPUも高い優良客が多いだけに、顧客の奪い合いも今後懸念されている。
それでも中国移動の強さは不変か
再編後は以下3社での事業体制となる。
- 新中国電信 - 固定電話(南部)及びADSL、携帯電話(中国聯通のCDMA)、衛星電話事業
- 新中国移動 - 固定電話及びADSL(中国鉄通)、携帯電話(GSM及びTD-SCDMA)
- 新中国聯通 - 固定電話(北部)及びADSL(中国網通)、携帯電話(GSM)
これを見ると各社ともマルチプレーヤーとして均等な競争が期待できそうだが、中国移動の強さは引き続き変わらないと見られている。たとえば中国移動の約4億人の加入者数は、現時点で固定電話シェアNo.1である中国電信の固定電話加入数(約2億)の倍もある。そして中国電信は悲願ともいえる携帯電話事業に乗り出すことができるが、中国聯通から引き継ぐCDMA2000事業の加入者数は4,000万強と、中国移動の総加入数の10分の1にしかならない。また昨年の中国移動の純利益は中国聯通の10倍強もあり、中国聯通が中国網通と合併したとしても収益を多く伸ばせるとは考えにくい。
今回の再編方針は改めて中国移動の強さを目立たせるものとなったが、今後は新中国電信、新中国聯通が対抗策として固定電話やブロードバンドと携帯電話を組み合わせた新しいサービスや料金を打ち出すことが予想される。それにより競争が今以上に激化し料金の引き下げが期待できるほか、新しい技術が開発される可能性もある。そうなれば中国の通信関連メーカーにも新たなチャンスが生まれることになるだろう。HuaweiやZTEなどに続く、世界で通用するメーカーが今後中国から登場することも期待できる。中国の事業者再編は中国国内のみならず、世界中からも大きな注目を浴びているのだ。