スマートフォンのカメラでより遠景を撮影するためのクリップ式レンズのように、スマートフォンに装着して機能を拡張する周辺機器は様々なものが発売されている。そのほとんどはサードパーティーによる製品だが、スマートフォンメーカー自らがそれらの機器を純正アクセサリとして販売するケースも増えている。
たとえばSamsungが8月2日に発表した「Galaxy Note7」には、本体と一体化できる着脱式のバッテリーカバーや、広角レンズと望遠レンズを取り付け可能なカバーが販売される予定だ。バッテリーカバーは本体側がワイヤレス充電に対応しているため、コネクタを接続することなく本体背面にはめ込むだけで利用できる。バッテリーが切れたらジャケット感覚で取り付けるだけで充電ができる優れた製品だ。またレンズカバーに装着するレンズは口径が広い本格的なもので、これまでに市販されてきたクリップ式レンズなどよりも画質ははるかに高い。
だがもっと高機能なアタッチメントを取り付け可能なスマートフォンも登場している。それが8月に発売されたばかりのMotorolaの「Moto Z」だ。Moto Zは本体の厚さがわずか5.18ミリという世界最薄クラスのスマートフォンで、CPUにはSnapdragon 820、5.5インチのディスプレイの解像度はWQHDと同社のフラッグシップモデルに位置づけされる製品だ。このMoto Zは本体の背面に「Moto Mods」と呼ばれる脱着式のアクセサリを取り付けることが出来るのである。
Moto Zの背面下部には24個のピンが並んでいる。そして装着するMoto Mods側にも同じピンがついており、両者を合体させることで電気的な信号や電力を流すことができるのだ。Moto ZとMoto Modsの合体はマグネットを利用するため、余計なフックやヒンジなども不要で簡単に取り付けることが出来る。このMoto Modsの技術仕様は公開される予定なので、様々なアクセサリが登場する予定だ。
まず最初に登場したMoto Modsは、22時間の利用時間を延長できるバッテリー「Incipio offGRID Power Pack」、高音質スピーカーを搭載したBluetoothスピーカー「JBL SoundBoost Speaker」、そしてプロジェクターを搭載する「Moto Insta-Share Projector」の3製品。Moto Zの本体がかなり薄いので、たとえばPower Packを装着してもその厚みは11.38ミリと一般的なスマートフォンとは変わらない。アメリカではMoto Zを販売するキャリアのVerizonがこのバッテリーを無料提供しており、Moto Zに常に装着しておくMoto Modsという位置づけのアクセサリにもなっている。
そしてInsta-Share ProjectorはMoto Modsならではの一品といえる製品だ。これまでにもプロジェクターを内蔵したスマートフォンやタブレットはあったが本体の大きさは厚みが増してしまい、プロジェクターを使わないときは持ち運びにくいのが難点だった。しかしアタッチメント方式なら、必要な時だけMoto Zをプロジェクターとして使うことができる。本体が極薄であり、しかも電気接点を利用した拡張モジュールを開発したからこそ、このような多機能なアクセサリの開発も可能になったのである。
ネット上ではデジカメを搭載したMoto Modsも登場すると噂されており、本格的な写真を撮影したい時でもMoto Zを使えばデジカメすら不要になるかもしれない。今後のMoto Modsの展開は非常に楽しみである。
さて合体式スマートフォンと言えば、今年2月に発表されたLGの「LG G5」も忘れてはならない。G5は最近のスマートフォンには珍しいバッテリーが交換できる製品だが、そのバッテリーの取り外し方が面白い。一般的なスマートフォンならば背面カバーを外して交換するが、G5は本体の下部をキャップのように取り外し、そこからバッテリーを抜き出すのだ。
この本体底部のキャップ部分に機能を持たせた「LG Friends」と呼ばれるアクセサリが2種類販売されている。一つはカメラグリップとシャッター、そして補助バッテリーを搭載した「LG CAM Plus」で、G5をデジカメライクに使うことができる。もう1つは高音質なオーディオアダプタの「LG Hi-Fi Plus with B&O Play」で、ヘッドフォンを装着すれば32ビットのHi-Fiサウンドを再生することが可能だ。LGはこの他にも単体で利用できる360度カメラなどもLG Friendsとして販売している。
今やスマートフォンの機能は同じ価格帯の製品であれば各社ほぼ横並びという時代になっている。しかし高機能なアクセサリや合体できる周辺機器はスマートフォンの利用シーン拡大にも役立つし、製品の差別化ポイントして消費者にもアピールしやすい。スマートフォンを拡張する高度なアクセサリ類は、今後メーカー自らが手掛ける時代になっていくだろう。