こんにちは、阿久津です。古きものから新しきものへ、と時流に合わせて変化するのは世の常ですが、それをあらためて感じたのがIT系ニュースサイトのアイティメディアの発表でした。FAXによるプレスリリース受付を終了し、電子メールによる受付のみに完全移行するとのこと。IT系界わいのFAX需要は著しく低くなりましたが、必ずしも使われなくなった訳ではありません。筆者も認証処理で使用を求められることが何度かありました。
かく言う筆者は仕事場にFAX機能を残してありますが、FAX送受信機を破棄したのはかれこれ10年以上前の話です。最近までFAXモデムとFAXサーバーで運用していましたが、64ビット版Windows OSで動作するFAXモデムも数える程度。現在は某国内ベンダーのUSB接続型FAXモデムを海外ベンダーのデバイスドライバーで動作可能にし、サーバーではなくメインで使っているコンピューターに接続しています。しかし、FAXを使う場面はほぼ無く、名刺に番号を入れているので残している、というのが正直なところです。
FAXと同じように移行期へ差し迫りつつある、と感じるのがOfficeスイートからオープンソースへの移行です。主に官公庁関係で耳にする話ですが、そもそも大半のユーザーはOfficeスイートが備えるマクロなど高機能を使いこなせていないのが普通でしょう。また、現時点でデファクトスタンダードとなるMicrosoft Officeスイートは優秀なアプリケーションですが、単純なパーツで構成される文書であれば、オープンソースベースのApache OpenOfficeや、LibreOfficeで十分という考えが出てもおかしくありません。この流れは2010年あたりから顕著になりました。
Officeスイートがオープンソースに移り変わる現象は、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつある様を現しています。その一方で、圧倒的なシェアを誇ったWindows XPもLonghornの開発が暗礁に乗り上げたことで方向転換を余儀なくされ、アップグレードタイミングの遅延を生み出しました。現在のタブレットブームを踏まえますとWindows OSのシェアが伸び悩んでいる遠因と見るべきではないでしょうか。栄枯盛衰とはよく言ったものです。
さて、Windows 8を使用していて気になるのが、エクスプローラーの左側に現れるナビゲーションウィンドウの存在です。同箇所には各カテゴリが並び、矢印アイコンをクリックすると展開し、再度クリックすると閉じるのはご承知のとおり。しかし、その展開状況は次回エクスプローラー起動時に再現されてしまいます(図01~02)。
同じようにエクスプローラーのリボンも展開状況を次回起動時に引き継ぎますが、こちらは第252回で紹介したように、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows \CurrentVersion\Policies\ExplorerキーにDWORD値「ExplorerRibbonStartsMinimized」を作成することで対応可能でした。しかし、ナビゲーションウィンドウに対する同種のエントリは存在しません。
そこで調べてみたところナビゲーションウィンドウの状態は、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer \Modules\NavPaneキーのバイナリ値「ExpandedState」が管理していました。同エントリに関するMicrosoftの技術資料は公開されておらず、どのような構造体で状態が格納されているのか知ることができません(図03)。
図03 HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft \Windows\CurrentVersion\Explorer\Modules\NavPaneキーのバイナリ値「ExpandedState」が、ナビゲーションウィンドウの状態を管理しています |
しかし、エクスプローラーを終了し、バイナリ値「ExpandedState」を削除した状態で再びエクスプローラーを起動するとナビゲーションウィンドウの「お気に入り」「ライブラリ」が展開した状態になります。そして、エクスプローラーを終了する際に、バイナリ値「ExpandedState」を保存する仕組みを確認しました(図04)。
このロジックを踏まえますと、バイナリ値「ExpandedState」に対する書き換えを抑制すれば、常にナビゲーションウィンドウのカテゴリは閉じた状態になるはずです。そこで今週は、常にナビゲーションウィンドウのカテゴリを閉じるチューニングをお送りしましょう。
1. ナビゲーションウィンドウの各カテゴリを閉じてからエクスプローラーを終了します。
2. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。
3. HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Modules \NavPaneまでキーを開きます。
4. NavPaneキーのセキュリティの詳細設定ダイアログを起動します。
5. <継承の無効化>ボタンでアクセス許可の変換処理を行います。
6. 普段お使いのユーザーアカウントに対するアクセス権限を「読み取り」のみとします
7. 各ダイアログを閉じてから、レジストリエディターを終了します。
これでチューニングが完了しました(図05~16)。
図07 レジストリエディターが起動したら、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows \CurrentVersion\Explorer\Modules\NavPaneまでキーをたどって開きます |
早速結果を確認してみましょう。エクスプローラーを起動しますと、チューニング前と同じくナビゲーションウィンドウの各カテゴリは閉じた状態となります。適当なカテゴリの矢印ボタンを展開してから、一度エクスプローラーを終了してください。再びエクスプローラーを起動しますと、同箇所のカテゴリは閉じた状態となります(図17~18)。
今回のチューニングは、エクスプローラー終了時にナビゲーションウィンドウの状態をバイナリ値「ExpandedState」に保存するロジックを抑制するため、HKEY_CURRENT_USER \Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Modules\NavPaneキーに対して、書き込み権限を除外しました。これにより、エクスプローラー起動時に同じ値のデータが読み込まれ、ナビゲーションウィンドウのカテゴリ展開状態が維持されるのです。
元の状態に戻すにはステップ2から4までの操作を行い、<継承の有効化>ボタンをクリックして、上位キーのアクセス権限を継承する設定に戻してください。また、今回のチューニングは副作用が発生する可能性を拭いきれません。本来、レジストリによるチューニングを安定動作が必要となるコンピューターに実行するのは禁じ手です。あくまでも自己責任においてお試しください。
それでは、また次号でお目にかかりましょう。
阿久津良和(Cactus)