こんにちは、阿久津です。筆者の作業スタイルは朝方のため、本原稿も早朝から取りかかろうとテキストエディターを起動したところ、見慣れぬダイアログが現れました。タイトルバーには「ATOK」。メッセージの内容は「契約情報を正常に取得できなかったためATOKを利用できません」というものです。筆者が購入したATOKはFAQにあるような月ぎめ契約のようなものではなく、ATOK 2013 for Windowsのダウンロード版でした(図01)。
以前寄稿した記事で「ATOK Syncの初期設定が実行できない」と述べたように、ネットワーク周りで何らかの問題が発生しているのかと思い、別のコンピューターにインストールしているATOK 2013を確認しましたが(ATOK 2013 for Windowsは購入者が同時使用しない限り、三台のコンピューターにインストール可能です)、こちらは契約情報は消失していません。ちなみにATOK Syncの初期設定は同コンピューターでも実行できませんでした。
どうにか探し当てたサポートセンターの連絡先の受付時間は朝九時半から。……これは仕方ありませんが、原稿執筆に欠かせないIMEが動作しないと話になりません。そのため、本原稿は別のコンピューターにインストール済みだったATOK 2013 for Windowsを使用して執筆していますが、長年ATOKを愛用していましたが、このようなトラブルに出くわすのは初めての経験です。
執筆業にとって欠かせないテキストエディターとIMEですが、プロである以上「予備を用意」すればよかったのかもしれません。確かに予備のコンピューターやキーボード、インターネット回線は用意していますが、ソフトウェアがこのような形で使用できなくなるとは思いもよりませんでした。幸いにも本トラブルは、ATOK 2013 for Windowsをアンインストールし、%APPDATA%フォルダーからユーザー辞書など関連ファイルを一度待避。再びダウンロード済みだったATOK 2013 for Windowsを新規インストールすることで解決済みです。
しかし、同じトラブルに見舞われる可能性は少なくありません。こうなると必要になるのが予備もしくは移行先となるIMEですが、Windows 8に対応するIMEは限られ、軽く見回すと執筆に使用できそうなのはGoogle IMEぐらい。しかし、過去のGoogle NoteBook廃止や先頃発表されたGoogle Readerの終了を見ていますと、Google IMEがいつ廃止されるかわからないため、「仕事の道具」として選択することはできません。
改めてATOKの重要性を感じると共に、ここ数年(バージョン)のATOKはソフトウェア品質の低下が特に進んでいる印象を受けました。MS-DOS時代のATOKも決して安定したソフトウェアではありませんでしたが、JustSystemsには新機能や変換効率の向上も重要ながらも、違法ユーザー対策が正規ユーザーに不便を強いるようなことのない品質向上を目指してほしいものです。
さて、デスクトップのコンテキストメニューに対するチューニングは本コラムで何度も取り上げてきましたが、深い階層に用意された設定を数クリックで実行できるのはWindows 8の利便性を向上させる重要なチューニングだと、筆者は考えてきました。この観点からお勧めしたいのが、電源プランの選択です。コントロールパネルの「電源オプション」をクリックするとラジオボタンで電源プランを変更可能ですが、コマンドライン派は「powercfg」コマンドを利用されるかもしれません。
そこで同コマンドを呼び出す項目をデスクトップとコンテキストメニューに追加すれば、電源プランの選択は便利になるのではないでしょうか。ノート型コンピューターのように場面に応じて電源プランを選択しなければならない環境なら、特に便利になるでしょう。そこで今週はコンテキストメニューから電源プランを選択するチューニングをお届けします。まずはチューニングの前準備として現在の電源プランと割り当てられているGUID(Globally Unique Identifier:グローバル一意識別子)を確認しましょう。
管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、「powercfg /l」と実行してください。これでWindows 8が認識している各電源プランとGUIDが列挙されました。また、現在選択中のプランには「*(アスタリスク)」が加わります(図02~03)。
1. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。
2. HKEY_CLASSES_ROOT\DesktopBackground\Shellキーを開きます。
3. PowerPlanキーを作成します。
4. 文字列値「MUIVerb」を作成し、値のデータを「電源プラン(&P)」に変更します。
5. 文字列値「SubCommands」を作成し、値のデータを「Balanced;PowerSaver;HighPerformance」に変更します。
6. 文字列値「Icon」を作成し、値のデータを「powercpl.dll」に変更します。
7. HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\CommandStore\shellキーを開きます。
8. HighPerformanceキーを作成し、(既定)のデータ値を「高パフォーマンス」に変更します。
9. 文字列値「Icon」を作成し、値のデータを「powercpl.dll」に変更します。
10. サブキーとしてcommandキーを作成し、(既定)のデータ値を「powercfg.exe /setactive 8c5e7fda-e8bf-4a96-9a85-a6e23a8c635c」に変更します。
11. Balancedキーを作成し、(既定)のデータ値を「バランス」に変更します。
12. 文字列値「Icon」を作成し、値のデータを「powercpl.dll」に変更します。
13. サブキーとしてcommandキーを作成し、(既定)のデータ値を「powercfg.exe /setactive 381b4222-f694-41f0-9685-ff5bb260df2e」に変更します。
14. PowerSaverキーを作成し、(既定)のデータ値を「省電力」に変更します。
15. 文字列値「Icon」を作成し、値のデータを「powercpl.dll」に変更します。
16. サブキーとしてcommandキーを作成し、(既定)のデータ値を「powercfg.exe /setactive a1841308-3541-4fab-bc81-f71556f20b4a」に変更します。
17. [F5]キーを押してから、レジストリエディターを終了します。
今回は少し長くなりましたが、おつきあいください。これでチューニングが完了しました(図04~45)。
図17 今度は、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\CommandStore\shellキーを開きます |
図26 commandキーの(既定)をダブルクリックし、値のデータを「powercfg.exe /setactive 8c5e7fda-e8bf-4a96-9a85-a6e23a8c635c」に変更して<OK>ボタンをクリックします |
図35 commandキーの(既定)をダブルクリックし、値のデータを「powercfg.exe /setactive 381b4222-f694-41f0-9685-ff5bb260df2e」に変更して<OK>ボタンをクリックします |
図44 commandキーの(既定)をダブルクリックし、値のデータを「powercfg.exe /setactive a1841308-3541-4fab-bc81-f71556f20b4a」に変更して<OK>ボタンをクリックします |
それでは結果を確認してみましょう。そのままデスクトップの何もないところを右クリックしますと、コンテキストメニューに<電源プラン>が加わり、サブメニューから<高パフォーマンス><バランス><省電力>が選択可能になりました。いずれかを選択しますと、一瞬コマンドプロンプトが起動し、(既定)で指定した「powercfg」コマンドが実行され、電源プランの変更が実行されます(図46~47)。
各電源プランのGUIDは通常であれば同じですが、メーカー製コンピューターなど独自の電源プランを追加している場合は異なるかもしれません。その際はステップ5で参照するキーを増やし、ステップ8~10で行う参照先となるキーおよびエントリを増やして対応してください。また本チューニングは、HKEY_CLASSES_ROOT\DesktopBackground\Shell\PowerPlanキー、およびHKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\CommandStore\shell\HighPerformance(Balanced、PowerSaver)キーを削除すれば元の状態に戻せます。
それでは、また次号でお目にかかりましょう。
阿久津良和(Cactus)