こんにちは、阿久津です。今回はWindows 7(ビルド7000。以下、Windows 7ベータ版)から搭載された「ホームグループ」に注目してみましょう。
そもそもWindows OSにおける家庭向けネットワークは、小規模なネットワークグループに参加していることを明示化するワークグループ機能や、他のコンピュータから特定のファイルを共有する共有フォルダ機能などによって支えられてきました。操作に慣れたユーザーは、特定のフォルダに対して共有設定を行ない、他のコンピュータからUNC名(\\PC1\Akutsuなど)で直接参照するのが常。もしくはネットワークアイコンからワークグループをたどり、目的のファイルを開く場面もあったのではないでしょうか。
操作に慣れたユーザーであれば特に疑問を感じない、この設定・操作方法も、はじめてコンピュータに触れたユーザーには、皆目見当もつきません。この問題を解決するために搭載されたのが、LAN経由のファイル共有を簡単に仕上げるホームグループという新機能。Windows Vistaまでのファイル共有のように、特定のフォルダを対象にするのではなく、ドキュメントフォルダやミュージックフォルダなど、これまでのユーザーフォルダをひとまとめに共有するというもの。
同機能の有効化手順も簡単で、ホームグループを作成するコンピュータ上では、ウィザードによる共有フォルダの選択と、ランダムに生成されたパスワードが作成されます(図1~4)。
同一のLANにぶら下がっている他のコンピュータがホームグループを発見しますと、ホームグループウィザードで生成されたパスワードを入力することで、設定した共有フォルダ内のファイルにアクセスできるようになります(図5~8)。
ここで疑問に感じるのが、複数のホームグループが存在するケース。そもそもホームグループ機能は、同機能を提供する「ホームグループプロバイダー」と、ホームグループの参照や自ホームグループの通知を行なう「ホームグループリスナー」と、ふたつのWindowsサービスで実現しています。この後者が他のホームグループを検知した状態でホームグループ機能を呼び出しますと、ホームグループの結合ウィザードが実行可能なります(図9~10)。
従来の共有フォルダでは、フォルダごとにアクセス権をはじめとする設定が必要でしたが、ホームグループ機能によるシンプルかつ簡単にファイル共有が行なえるようになりました。また、任意のフォルダもホームグループの共有フォルダに加えることも可能です(図11)。
このホームグループを支える技術背景が、NLA(Network Location Awareness:Windows Vistaではネットワークデバイス発見時に設定をうながされる"ネットワークの場所")。Windows Vistaでは「自宅」「職場」「公共の場所」という名称で示され、ファイアウォールの個別設定やネットワーク探索サービスの有無など、選択項目によって差異はありましたが、一見してもわかりにくいものでした。Windows 7では、選択した場所によって稼働するWindowsサービスが異なり、ホームグループへの参加も影響を及ぼします。
具体的には「自宅」を選択しますと、ファイルやプリンタの共有に必要なサービスが開始されるため、ホームグループへの参考も可能ですが、従来の「職場」にあたる「社内ネットワーク」や「パブリックネットワーク」に変更した状態では、ホームグループへの参加は認められません(図12)。
このようにWindows 7のファイル共有設定はホームグループが中心となりますが、前述のようにネットワークの場所が「社内ネットワーク」を選択しているケースでは、従来の共有手順を使う必要があります。Windows OSに慣れたユーザーにはホームグループの存在が煩雑に感じられるかもしれませんが、Windows 7にはホームグループとフォルダ共有という、ふたつの選択肢が用意されたと前向きに捉えるべきでしょう(図13)。
そろそろ誌面も尽きてきましたので今回はこの辺で。次回もWindows 7の新機能をチェックしていきましょう。
阿久津良和(Cactus)