温泉が恋しい季節になってきた。ここ数ヶ月間はシャワーばかりでちゃんとした入浴からは遠ざかっていたが、その分、温泉がやたらと恋しい……。よし、行こう。温泉に行こう。そうだ、熱海に行こう!

ということで、今回は自転車と一緒にはるばる熱海まで遠征することに決定。思えば鎌倉〜箱根と徐々に西へ移動してきたが、ついに静岡県にまで踏み入れようとは当初は想像もつかなかったな〜。ホント、電動アシスト自転車があればどこまでも行けちゃう気がするから不思議。さっそく出発じゃい!

リゾート地・熱海を電動アシスト自転車でぐるり!

昔からリゾート地として大人気の街、熱海。静岡県の伊豆半島に位置し、富士山も近く、天然温泉が豊富な観光地である。そんな場所を車やバスではなく自転車で走るって、なんかロマンチック……。もちろん、今回も相棒はヤマハの電動自転車「PAS CITY-V」である。熱海は坂がめっちゃ多いので、電動アシスト機能がなければ秒速で心が折れてしまうだろう。

さっそく商店街でも巡ろうかな〜、と思ったら……

ヤバッ、人多すぎ。これは自転車じゃ無理だな。うん、やめよう。そもそもせっかく自転車で来てるのにいきなり駅前の商店街をブラブラするなんて、ちょっとお門違いなのかもね。

ということで移動〜! 下り坂は風が気持ちいい〜!

と思ったのもつかの間、すぐに上り坂に突入。長い……。電動アシスト自転車じゃなきゃ泣いていたかもしれん。電動アシスト自転車でもそこそこ大変だもん。

でもそのぶん、見晴らしのいい場所で素敵なすごく景色が見られるってワケですね。おっ、向こう側に相模湾が見える!

「來宮神社」で金運向上を願う

向かった先はこちらの「來宮神社」。熱海駅からは2kmくらいだけど、MAPアプリによると、道中は30mくらいの標高差を駆け上ってきたことになるらしい。ひぇ〜。

來宮神社は金運のパワースポットとして知られる超人気スポットで、徳川家の武臣が祈願をして出世したことから「出世のご利益」もあると言われているんだとか。そんなこと言われたら参らずにはいられないでしょ〜。

げっ! めっちゃ並んでる! ……いやいや、「げっ!」なんて言ったら罰が当たりそうだ。大人しく並び、しばらくすると賽銭箱の前に到着。「お金持ちにしてください」としつこく念じる。

來宮神社

住所:静岡県熱海市西山町43-1
開頭時間:9~17時
公式サイト:來宮神社

熱海の三大別荘「起雲閣」

無事に参拝も済ませ、再び相棒「PAS CITY-V」に乗り込む。

坂を一気に下り、今度は市街地へ。気分爽快〜。

1.5kmくらい走って新たな目的地「起雲閣」に到着! 熱海市の指定有形文化財に登録されている史跡で、大正8年に別荘として建築され、「熱海の三大別荘」のひとつに名を連ねた名邸がベースとなっているらしい。

門をくぐってみると……

うっ、美しい!

和館と洋館で構成されていて、屋内は日本、中国、ヨーロッパなどの装飾や様式が見事に融合。そして窓から見える庭園が……

綺麗すぎる……。ここが市街地だとは到底思えない、緑豊かな庭園が広がっている。そりゃあ「熱海の三大別荘」にカウントされるわ。日本屈指の別荘地でのベスト3はハンパじゃない!

起雲閣

住所:静岡県熱海市昭和町4-2
営業時間:9~17時、水曜定休、休館日12月26日~30日
入館料:一般:大人610円/中・高校生360円/小学生以下無料、市民・団体・障害者:大人 460円/高・中学生240円/小学生以下無料
公式サイト:起雲閣

なんで蹴られてる!?「貫一お宮の像」

続いて、せっかくなので海のほうへ移動。

おお、熱海っぽい! うんうん、やっぱり熱海といえばこういうイメージ。ちょっと海岸沿いを走ってみようかな。

……えっ? なんか女性が足蹴にされてるんだけど……。

ここも観光名所のひとつで、尾崎紅葉の小説『金色夜叉』にある名シーンを再現した「貫一お宮の像」という像らしい。

主人公・貫一とその許嫁だったお宮。結婚までカウントダウンだったというのに、ある日お宮は別の富豪のところに嫁いでしまい、それに貫一がキレてお宮を蹴り飛ばした……っていう話で、その舞台がこの熱海の海岸だったらしい。なるほどね〜。今度読んでみよう。下駄キックはやりすぎだと思うけど……。

貫一お宮の像

住所:静岡県熱海市東海岸町15−45

「和栗菓子kiito-生糸-」の絞りたてモンブランに舌鼓!

再び市街地へ。ちょっと小腹がすいたのでなんか食べよう……と思っていたら、何やらひときわ賑っている店を発見。

「和栗菓子kiito -生糸-」というお店で、京都の行列店「和栗専門 紗織」と創業200年の熱海の老舗「古屋旅館」が共同でプロデュースしている店だという。ここの「絞りたてモンブラン」がめっちゃウマいと評判だそうだ。ほ〜ん、気になるやん。

ということで、食べ歩きに適した「モンブランソフト静岡茶」を注文。

くぅ〜、惜しげもなくモンブランを絞ってくれるじゃないの! 眼の前で作ってもらえるって、テンション上がるな〜。

実際に食べてみると、これが激ウマ! 和栗の濃厚な風味、まろやかな甘み、さらっとした舌触りなどすべてが絶妙。モンブランの下に隠れていた静岡茶のソフトクリームも苦味、渋み、旨味、風味のバランスがよくてめちゃ爽やか。静岡茶は地元の老舗お茶専門店「名取園」のものを使用しているらしい。こだわってるな〜。

和栗菓子kiito-生糸-

住所:静岡県熱海市銀座町8−9
営業時間:10~17時
公式サイト:和栗菓子kiito-生糸-

湯河原「王ちゃん」世界一のカツ丼の味は…

……さて、温泉に入る前に何か食事をしたいんだけど、ネット検索してみたところ、近くに「世界一のカツ丼」を出している店があるらしい。

いや、近いと言っても熱海ではなく、隣町の湯河原まで足を伸ばさないといけないんだけど……どうしよう。だいたい11kmくらいか。行けちゃうな、コレ。湯河原も温泉街として有名だし……ちょっと行ってみるか!

ということで、海沿いをひたすら東へ。

相変わらず容赦のない勾配が襲いかかってくるが、やっぱりそのぶん絶景が楽しめるし……

普段絶対に走らない場所を走るのは気分もめっちゃいい。

結構しっかりした長距離を走り、ようやく街が見えてきた!

温泉街っぽい坂道を駆け上がり……

ついに到着、「王ちゃん」! メインメニューはラーメンらしいので、いわゆる「町中華」的な店だと思えばよさそうだ。創業50年超で、地元では知らない人がいないほどの有名店だという。

大行列で外観が撮れなかったが、老舗感がスゴい。暖簾なんて擦り切れてしまってボロキレのようになっているので、気になる方はぜひ画像検索してみてほしい。それだけ多くの人がこの店の暖簾をくぐったということだろう。今日イチでテンションが上がる……!

1時間以上並び、ようやく入店。「カツ丼」を注文し、待つこと約20分。出てきたのがこれだ。

これが「世界一」と呼ばれるカツ丼……。うわっ、なんか香りがもうめちゃくちゃいいぞ。なんか香ばしさを感じて腹が鳴る! さっそくいただきましょう!

……ウマい。超〜ウマい……!! 肉は分厚くてジューシーなうえに弾力がすごい。脂身は甘く、タレの甘じょっぱい感じも最高だ。衣はしっとりしているが、部位によってはサクサク感も残っている。

確かにこれはウマい。ただ、味について「本当に世界一おいしい?」と聞かれれば、「わからない」と申し上げるしかない。しかし、「このお店のカツ丼は世界一?」と聞かれれば、「世界一です」と答えちゃうと思う。

というのも、店に入ってすぐ気付いたが、どうやら店主のオヤジさんはかなりご高齢で、もうほとんど声も出ないようなのだ。こちらの声は聞こえているようだが、オヤジさんはすべてジェスチャーで意思を伝えてくる。包丁さばきや麺の湯切りなどは熟練の手つきだが、動きはかなりゆっくりである。店内は広くなく、客席数もわずかだが、スピーディに料理が提供されないので回転は悪い。だが、それを苦々しく思う客など誰一人としていない。そう確信できる。

オヤジさんが喋れないぶん、客はその一挙手一投足を固唾を飲んで見守っている。その結果、満席の店内は常に静まり返っている。厳かな雰囲気のなか、ニコニコした表情で手を動かすオヤジさん。ようやく運ばれてきたカツ丼やラーメンを口にしたときに滲み出る喜びの気持ち。そのすべてがまるで一本の映画かのような一体感を奏でているのだ。

味だけじゃない。この店で、この雰囲気の中で、このオヤジさんが作るカツ丼を食べる。そのすべてのピースが揃った結果、いつしか「世界一のカツ丼」と呼ばれるようになっていたのだろう。なんか泣けてきた。

……ってか、めっちゃ語っちゃったな。なんかすっかり自転車で遊んでいたことを忘れてしまった気もするが、ホントすごい体験だった。別空間にワープしたかのような気分だが、最後に温泉に入って帰ろう。

王ちゃん

住所:静岡県熱海市泉39
営業時間:11~18時30分、水曜定休

日帰り温泉「みやかみの湯」の炭酸泉でスッキリ!

最後は「みやかみの湯」という温泉を日帰りで利用。もちろん中の様子は写せないが、最高の湯河原温泉を堪能できた。湯河原初の「炭酸泉」というのもあって、これが血流にいいらしい。長い1日だったが、疲れが吹き飛んだ気がする(まぁ移動はすべて電動アシスト自転車だったので、そんなに疲れてもないのだが)。

ということで、熱海〜湯河原の旅も超〜楽しかった! チャリ×観光地の相性はハンパじゃない。これからもどんどん楽しませてもらうぞ〜!

みやかみの湯

住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上42-15
営業時間:7〜21時(最終入館受付 20時30分)
公式サイト:みやかみの湯