ゴールデンウィークや夏休みの旅行を計画するのが楽しみな季節となりました。宿泊先としてホテルや旅館ではなく、「民泊」を検討されている方もいらっしゃるでしょう。前回にご紹介したとおり、過去の利用者によるレビュー評価やコメントは、その民泊施設の良し悪しの判断材料として有効です。

しかし、最近では一部の民泊施設において、殺人事件や盗撮といった犯罪行為が行われたことが社会問題となりました。問題となった民泊施設の共通点は、旅館業法の許可などを受けていない「違法営業」だったことです。

違法な「ヤミ民泊」では、運営者の身元が不明であることが多く、また、宿泊者名簿の記入・保管や本人確認の実施といった法令の規制もおよびません。そのため、適法な許可施設に比べ、利用者側の悪用も含めて犯罪などのリスクは相対的に高まるものと考えられます。

連載第3回では、読者の方々が利用しようとする民泊施設が、適法な(旅館業法などの許可を受けた)施設かどうかを見分けるための法律知識を解説します。

民泊の仲介サイト運営にも「旅行業」の登録が原則必要

日本において、旅行者のために交通サービスや宿泊サービスを手配するビジネスは「旅行業法」の規制対象になります。そして、宿泊サービスの一種である民泊をマッチングする民泊仲介サイトの運営者は、原則として旅行業法に規定される「旅行業」の登録を受けなければなりません。

  • 民泊の仲介サイトを運営するにも、「旅行業」や「住宅宿泊仲介業」への登録が必要になる

    民泊の仲介サイトを運営するにも、「旅行業」への登録が必要になる

「旅行業」または「住宅宿泊仲介業」の登録を受けた民泊仲介サイトの運営者は、旅館業法の許可などを受けていない違法民泊のマッチングをすることが法律により禁じられています。そのため、これらの登録業者が運営するサイトには適法民泊物件のみ掲載されますので、安心して利用できます。登録業者の一覧は、観光庁や都道府県のホームページで確認できます。

なお、今年(2018年)の6月15日に「住宅宿泊事業法」が施行された後は、「住宅宿泊仲介業」の登録を受けた民泊仲介サイトは、旅行業の登録なしで民泊のマッチングをすることができるようになります。

無登録の海外サイトには要注意

ところが、旅行業法に基づく行政の監督権限は、日本国内で営業する事業者にしかおよばないという問題があります。別の言い方をすると、海外の事業者が旅行業法で禁じられる違法民泊のマッチングをしても、行政にはその行為を止める権限がありません。

海外の民泊仲介サイトの運営者に対する規制強化のため、上述の住宅宿泊事業法では、新たに「外国住宅宿泊仲介業」の登録制度が設けられました。外国住宅宿泊仲介業の登録を受けた「外国住宅宿泊仲介業者」には、国内の住宅宿泊仲介業者と同等の規制がかけられます。

海外の民泊仲介サイトを利用する際には、その運営者が外国住宅宿泊仲介業の登録を受けているかどうかを確認しましょう。登録業者が運営する海外サイトであれば安心して利用できますが、無登録業者が運営する海外サイトには違法民泊が掲載されているリスクがありますので、注意が必要です。

これから夏にかけての旅行シーズン、宿泊サービスに係る仲介業者規制を正しく理解して、適法民泊を上手に活用していきましょう。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: 石井くるみ

早稲田大学政治経済学部卒業。代表行政書士・宅地建物取引士。日本橋くるみ行政書士事務所代表。不動産ビジネスに関する許認可とコンサルティングを専門とする。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。主な著書に「民泊のすべて」(大成出版社)、共著に「行政書士の業務展開」(成文堂)など。