「ウチの新人。きちんとメモを取らせているのに、すぐに忘れるんです。私はきちんと教えているのに、ともかく、仕事を覚えるスピードが遅いんですよ」
研修の場で、管理職や先輩から、このような相談が多くあります。ここで考えていただきたいのは、何をもって「きちんと教えている」と定義できるのか? という点です。
教育学で「学習者検証の法則」という概念があります。簡単にいえば、「相手が分かる・できるようになって、初めて、『教えた』という完了形になる」という考え方です。
この原則で考えると、「自分なりにきちんと教えたという自負」は主観的な自己評価で、教えたという完了形にはなりません。
相手の変化で判断する必要があるのです。では、どうすればよいのでしょう?
教えるための3STEP
お勧めは、「アウト・イン・アウトの法則」という次の3ステップに分けたアプローチです。
STEP1(アウト):はじめにやらせる・答えさせることで相手の現状を確認する
STEP2(イン):相手の現場に合わせた情報を提供する
STEP3(アウト):最後にやらせる・答えさせることで習熟度を確認する
一つひとつ順を追って見ていきましょう。まずはSTEP1から。
相手に最適な情報を伝えるには、まず相手の状況を確認する必要があります。そこで「①やらせる、もしくは答えさせる(=アウト)ことで、相手の現状の理解度・習熟度を確認する」ことから始めます。
留意点は、クローズドクエッション(「はい」か「いいえ」で答える質問)の答えで判断しないこと。なぜなら、「実は、あまりよく分かっていない(もしくは、やったことがない)けれど、とりあえず話の流れで『知っている・できる』といってしまう」ことが往々にしてあるからです。
もし「YES」の反応がきた場合は、「どういうものか具体的に説明してみて」「じゃあ、実際に少しやってみて」と、オープンクエッション(自由に答えさせる質問)で改めて問いなおし、実際の習熟具合を図ります。
その習熟具合に合わせて、STEP2の流れで、まったく知らなければ「ゼロから丁寧に」、経験者であれば「ざっくりと」といった形でアレンジをかけて伝えるのです。
熟練度を確認するのが大切
大切なのはその後のSTEP3です。
「相手のアウトプットによい変化が起きたか否かによって検証される」のですから到達度合いの確認が必要となります。つまり、最後に必ず「やらせる・答えさせる」ことで習熟度を確認する(アウト)」必要があるはずです。
ここの注意点は「大丈夫? 分かった?」「はい、分かりました」というような「相手のYES」を鵜呑みにしないことです。「分かったなら、具体的に説明してみて」「実際にやってみて」といったように「答えさせる・やらせる」ことでしか、変化は測れません。
この確認が必要になります。そして、もしも分かっていない・できていない部分があるとしたら、その部分を追加で指導してあげればよいわけです。
もちろん、きちんとメモをとらせることも大切です。しかし、それはあくまで手段にすぎないもの。「きちんと教えたと」いう「完了形」にするには、「相手ができる・分かるようになったか否か」という「結果」に焦点を当てる必要があるのです。