「自分たちの頃は、厳しく育てられた。けれど、今はきちんと『褒めろ』と言われます。イマドキの若手は、やはり褒めて育てないといけないのでしょうか?」
最近の若手育成術研修時に、非常に多く聞きます。結論は「YES」。なぜなら、「有能感」を高めることにつながるからです。
有能館を高める注意点
有能感とは、「自分の力で周囲の環境や対象を変化させたい」という思いを持てている状態で、仕事で成果を出す上での土台となるものです。
これを高めてもらうには、「褒める」という行為が有効であるという心理学者の磯井真史先生が実施した実験結果からも分かっています。
ただし、ただ褒めればよいというものではなく、「褒め方」に注意する必要があります。
例えば、あなたが営業の仕事をしており、上司から月に200万円という売り上げ目標を与えられたとしましょう。
目標を達成すれば「よく頑張ったな」と褒めてくる。しかし、150万円しか達成できなかったら、「50万円も足りないじゃないか! なぜ達成できなかったんだ!」と徹底的に詰めてくるならどう感じますか?
上司は、ただのプレッシャーにしかならないのでは? 「褒める」とは、「相手を人として尊重する」ことで機能するものです。
本ケースでは、褒めても「結果」にのみ焦点を当てています。このアプローチは、(そんなつもりはなくとも)「あなたは、自分の課した数字を取るための存在であり、ひとりの人間としては尊重しない」というメッセージを相手に発信していることになってしまうのです。
これでは本来の目的にはつながりません。それどころか、「仕事=上司に怒られないようにするためのもの」という認識を作り出し、部下の成長どころか、「仕事はストレス源」という認識を作り出してしまいます。
では、以下のような上司だとしたらどうでしょう?
部下を成長させる褒め方
・目標を達成した時には、「よく頑張ったな」と褒めてくれる。
・達成できないと、「新規獲得の電話を頑張っていたね」「◎◎の商談の時、きちんと顧客の本音を引き出せていたね。あなたの長所である聴き上手が存分に発揮できていて良かったと思うよ」といったことをまずは伝えてくれる。その上で、「50万円足りなかったのはなぜだろう? どうすればよいのだろう?」と一緒に考えてくれる。
この上司は、「結果」に加えて、「プロセス(=頑張っていたこと)」「存在(=長所を発揮したこと)」のすべてに焦点を当てたアプローチを取っています。
この褒め方であれば、「あなたをひとりの人間として尊重しています」というメッセージになり、「もっと成長して自分の力で周囲の環境や対象を変化させたい」という気持ちを持つことにつながるのではないでしょうか。
結果だけに目を向けた褒め方は、「褒める」にはなりません。「結果」「プロセス」「存在」のすべてに目を向け、うまくいかなかったときでも、肯定的なメッセージを伝えることが、相手の「有能感」を高める上で大切になるのです。