人の成長を促す上で、振り返りはとても大切です。
振り返りは、その課題を「次に活かせる行動」に必ず着地させる必要があります。
しかし「特にうまくいかなかったこと」を振り返る際に、本人(部下や後輩)が打たれ弱いタイプだと、「すみません、すみません……」と謝罪だけになる場合はありませんか。
そんな時に役立つ「フィードフォワード」という手法を紹介しましょう。
フィードバックという振り返り方
一般的に、振り返りで行うのは「フィードバック」という手法でしょう。
これは「過去」に焦点を当てることが特徴です。
手順は、「●●の仕事がうまくいかない結果に終わった。うまくいかなかった理由を考えると■■に課題があった。これを××という形で軌道修正しよう」といった形になります。
このアプローチは効果的ですが失敗に焦点を当てます。その結果、特に自己肯定感が低い人の場合は本人が萎縮して、次の例のようになってしまう可能性があるのです。
上司:なぜ、アナタはミスをしたんだ?
部下:私の不注意です。
上司:なぜ、不注意だったんだ?
部下:私の気が緩んでいたからです。すみません。
つまり、「反省に着地」してしまう傾向が強いのです。
これでは「詰められた」という実感しか持てず、本人の成長につながらず、それどころかストレスを与えるだけで終わる可能性も考えられます。
フィードフォワードという振り返り方
これに対して、フィードフォワードは、過去ではなく、未来と解決策に焦点を当てます。 例えば、部下で新人のBさんが送った請求書にミスを見つけた営業部のAさんは、こんな振り返りをしていました。
Aさん:今回起きた「請求書の記載間違い」のような、数字の記載ミスをなくすためには、具体的に、どのような対策を取ればいいでしょうか。行動ベースで、どんどんアイデアを出してください。
部下Bさん:送る前に、確認チェックをするための「チェックシート」を作るとよいと思います。他のメンバーに最終チェックをしてもらってから送信するというのもあります。
こういった形で解決策のアイデアが幾つも出てきます。
このように、フィードフォワードは、「今後どうするか?」という点のみを掘り下げます。過去に触れません。自分のミスに触れられないので、本人(Bさん)が萎縮することなく、いろいろとアイデアが出てくるのです。
これであれば、振り返りの場が前向きなものにしやすく、本人にとっても建設的な時間になりやすいのではないでしょうか。
振り返りはどちらでも効果的
もちろん「フィードバック」と「フィードフォワード」の、どちらの方が優れているということはありません。両方とも効果的なものです。
ただ「打たれ弱い若手」への振り返りの際にお勧めなのは「フィードフォワード→フィードバック」という順番で行う方法です。
実はAさん、このアイデア出し(=フィードフォワード)をした後で、「なぜ、そのアイデアが有効だと思うのか?」と、過去に焦点を当てる(=フィードバック)形で掘り下げていました。
「相手が萎縮しているな」と感じる場合は、この流れで実践してみてはいかがでしょうか。