注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の"テレビ屋"は、テレビ朝日のバラエティ番組『しくじり先生 俺みたいになるな!!』のチーフディレクター・北野貴章氏。出演するどの先生からも衝撃の"しくじり"体験が飛び出し、放送のたびにネットニュースを騒がせる、その取材力の秘密を聞いた――。


北野貴章
1986年3月2日生まれ、大阪府出身。京都大学卒業後、2010年にテレビ朝日に入社し、『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』『くりぃむクイズ ミラクル9』『ギリギリくりぃむ企画工場』などを担当。2013年に立ち上げた『しくじり先生 俺みたいになるな!!』でチーフDを務める。

●影響を受けたテレビ番組:『トリック』(テレビ朝日系、連続ドラマは2000年・2002年・2003年)

――今回、北野さんを指名されたNHK『LIFE!~人生に捧げるコント~』の西川毅さんが、「『しくじり先生』はついつい見ちゃいます。コントとしてもよくできている。メッセージ性もすごくあるので、NHKでやれば良かったのに」とおっしゃっていました。

うれしいです。『LIFE!』も『サラリーマンNEO』もめっちゃ好きなんですよ。ストーリーがあるものが作りたかったので、コントが表現できていると言われるのは、すごくうれしいですね。

――テレビ局に入社されたのはバラエティ志望ではなかったんですね。

もともと映画が作りたくて、テレビ局でも作れるんじゃないかと考えてテレビ朝日に入社しました。でも、なかなか演出ができるチャンスがなさそうだったので、なんでもできるバラエティに来て、映画やドラマ、コントのようなものができればと思って入りました。

――そして入社されてから、どのような番組を担当してきたんですか?

実際に入ってもやりたい番組が分からなくて(笑)。大学のときのインターンで『ナニコレ珍百景』を見学させてもらい、演出とプロデューサーをやっていた保坂広司さんがすごい好きだったので、「保坂さんの下がいいです」とお願いして、『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』に入りました。1年目は他に特番を14番組くらいやって、それがすごく良かったなと思いますね。

――いろいろなジャンルの番組を経験できたんですね。

そうですね。歌謡曲の番組もやりましたし、深夜のバラエティも、クイズ番組も。で、2年目の年末くらいに『くりぃむクイズ ミラクル9』を立ち上げるということになって、そこでADをやって、深夜の『ギリギリくりぃむ企画工場』という番組にディレクターとして入りました。

――入社当初から、とにかくたくさん企画を出していたと伺いました。

1年目はやりたい番組がなかったので、めちゃくちゃ企画書を出しました。でも、そもそもドラマ志望で入ってるので、コント番組の企画書を書いても、うちにはそれを作る土俵がなかったので、自分のやりたい番組の企画が通らないんです。そこで、1年目の終わりくらいのときに、勝手に機材を借りて、同期と一緒に番組を作ろうと思い立ったんです。その同期が「餃子の王将」のチケットを持って原宿でナンパして、女の子を誘えたらクリアっていう内容なんですが、当時たくさん特番をやっていたので、その編集の合間に、僕らの映像もこっそり編集してもらって、完成VTRを企画書と一緒に出しました。

それが初めて通った『モテスベ』という番組です。そこに、平成ノブシコブシの吉村崇さんに出てもらっていて、次も吉村さんで、コントからムチャをさせるという『未来ディレクター吉村』が2本目。その次に通ったのが『しくじり先生』ですね。

『しくじり先生 俺みたいになるな!!』
人生の"過去に大きな失敗を体験した"しくじり先生"たちが、「自分のような人間を増やすまい!」という熱意を持って、生徒たちにしくじった経験を教えていくバラエティ番組。担任役のオードリー・若林正恭、生徒役の平成ノブシコブシ・吉村崇がレギュラー出演している。

今夜19時放送の3時間SPでは、長江健次、IMALU、山咲トオルが先生として登場。また、現在開催中の「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」(~8月28日)では、360°の世界で授業を受けることができるVR体験ブースを展開している。

――3本目でもう『しくじり先生』ですか! トントン拍子ですね。

でも、レギュラーになるまで1年以上かかりました。面白いのになんでレギュラーになれへんのかなとずっと思ってました(笑)