今、注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。
第6回の"テレビ屋"は、日本テレビで『世界の果てまでイッテQ!』『月曜から夜ふかし』『嵐にしやがれ』など、多くの人気バラエティ番組を手掛ける古立善之氏。入社後まもなく『電波少年』という"ドキュメントバラエティ"の先駆的な番組にいた経験から、担当するどの番組にも「ストーリーを大事にする」という意識が根底に流れているという――。
古立善之 |
――今回、古立さんを指名されたフジテレビの木月洋介さんから、古立さんの番組を「あれだけ特徴のある作り方をされているのに、しっかりゴールデンで戦っているというのが、すばらしいと思うし、尊敬に値します」とメッセージをいただきました。
答えづらいですね(笑)。『イッテQ』に関しては、幅広い世代の方に見てもらうことを意識して作っていますし、『月曜から夜ふかし』『満天☆青空レストラン』なども、それぞれ時間帯に合わせて作っているつもりです。
――逆に木月さんの番組の印象はいかがですか?
やっぱり箱の作り方がうまいなと思います。『ヨルタモリ』もそうでしたし、『クイズやさしいね』『痛快TVスカッとジャパン』もそうですけど、企画があって、その企画を見せるためのフィールドの作り方を、舞台演出のようにこだわっていますよね。
――早速『嵐にしやがれ』についてからお伺いしていきたいのですが、演出という立場での業務範囲はどのようなものですか?
企画を決めたり、ディレクターと個別に演出の打ち合わせをしたりという感じです。僕はどの番組でもそうなんですけど、ディレクターから上がってきたものを最終ジャッジするというよりは、全部のディレクターと場を設けて、一緒に考えていきます。
――企画の立案から最後の完成まで、どのような流れで進んでいくのですか?
例えば松本(潤)君とムロツヨシさんが「男と男のスマート対決」をやるときは、2人がどんな対決をしたら面白いだろうか、担当ディレクターがいろいろ案を出してきて、それをひとつひとつ想像し、細かい演出を決めます。最終的にVTRをチェックしてスタジオに出して、そのリアクションを撮り、全体の本編にしたときに、最後の調整をするという感じですね。
――この番組を担当されてから1年がたちましたが、手応えはいかがですか?
手応えは…まだそんなにないですね(笑)。やはり嵐はとてもパフォーマンス力が高くて、僕らが用意したことを完璧にやってくれてはいるんですが、果たしてそれが嵐に対して刺激になってるのかな?というところの手応えでいうと、我々作り手が、嵐の力を借りている面が大きいと感じているので、もう少し頑張らなきゃいけないなと思っています。
――嵐にとって刺激になっているか、という部分ですか。
僕の番組はストーリーを大事にするんです。例えば、『イッテQ』の「お祭り男」や「イモトワールドツアー」「温泉同好会」などは、根底にその人の人生があるんです。宮川大輔という芸人がお祭り男になり、ブレイクして、年を取っても頑張らなければいけないという大きなストーリーがあるし、イモトにしても無名の子が24時間マラソンもやって、キリマンジャロやマッキンリーにも登って、その中でいろいろ葛藤がある。温泉も女芸人のメンバーがいろいろ変わっていく…。
僕は、入社2年目でついた『電波少年』の時からそうなんですけど、人生をフリにして、番組で物語を伝えていくということが一番面白いなと思っているんです。そういう意味で、嵐のメンバーの人生の刺激になるようなことができたりしたら最高だなと思っています。おこがましいのですが、絶対にあると思うんですよ、ここから先に出てくる彼らの新たな魅力が。
――先日の放送では、二宮和也さんが大手町のど真ん中でドラム缶風呂に入っていましたし、なかなかアイドルに攻めてるなぁと思いましたが…。
いやいや、あんなの二宮さんなら朝飯前ですよ(笑)。そこが嵐のすごいところなんです。僕らテレビの制作者が浅い知恵で「嵐がパンストかぶったら面白くない?」って考えるんですけど、そんな浅いことじゃダメなんですよ、あの人たちと対等にやるには。
――信頼関係も必要になってきますよね。
はい、もちろん時間も必要です。知り合って1年くらいのよく分からない人に、全部をさらけ出してくれるなんてことはないですから。でも松本君は、もともとすごいクールでカッコいいっていうイメージがありましたが、実はおちゃめで、こっちも笑ってしまうような"お笑い要素"が、ものすごく出てきていますね。
――先ほど『イッテQ』の例を挙げられましたが、『青空レストラン』でも宮川大輔さんが地域の人たちとのふれあいで新しい一面を見せていますし、それこそ『月曜から夜ふかし』は街頭で出会った素人さんからどんどんストーリーができていきますよね。ある種完成されている嵐との番組は、古立さんにとってチャレンジという面が強いですか?
うん、やっぱり強いですね。簡単ではないですが、そういうことを目指してやっています。